ヨガを指導していたら必ず出会うのが腰痛持ちの方です。なかには、「身体を動かして腰痛を良くしたい」という気持ちを持ってヨガを取り入れている人もいるでしょう。
指導者はそれに応えようと指導するわけですが、もしこの時に腰痛に対する知識が乏しければ、腰痛は改善するどころか悪化することも考えられます。安全に指導しつつ参加者に満足してもらうためには腰痛の基礎知識を知っておく必要があります。
今回は腰痛の基礎知識として腰痛の種類とその中から特に腰椎椎間板ヘルニアの場合について詳しく紹介したいと思います。
ヨガ指導者は予防や改善をサポートする立場
腰痛の種類を紹介する前にまずお伝えしたいのがヨガ指導者は「治療」はできないということです。治療は医師、理学療法士、作業療法士、柔道整復師などの国家資格を持った医療従事者が行うものであって、ヨガ指導者はできません。
ヨガを参加者の腰痛治療のため」だと勘違いしてしまうと大変危険です。もし強い腰痛で悩んでいる人がいたら、医療機関を受診して国家資格をもった医療従事者に腰痛の治療をしてもらうことを促しましょう。
そして、ある程度痛みが落ち着き運動療法でリハビリしましょうとなった時に、私たちがまた関わっていきます。「参加者の腰痛予防・改善のお手伝い」だと思って丁寧に指導するのが一番です。
腰痛の主な原因7つを知る
腰痛にも種類があり、それぞれ症状や改善方法が変わってきます。このポイントを理解すれば、腰痛を訴える参加者に対して適した指導やアシストができます。
腰痛の主な原因
- 腰椎椎間板(ようついついかんばん)ヘルニア
椎間板から飛び出た髄核という組織が脊柱の神経を圧迫して症状が出る。 - 脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)
脊髄からの神経の通り道=脊柱管が圧迫されて狭くなった状態。 - 腰椎分離症(ようついぶんりしょう)
椎弓という腰椎の後方部分が分離した状態。スポーツ選手に多い。 - 腰椎すべり症
縦に積み上がっている腰椎が前方へ滑り出してしまった状態。 - 筋・筋膜性腰痛症
レントゲン、MRIでは異常は見られないが腰の筋肉にストレスが加わり腰に痛みが出る。 - 坐骨神経痛
脊柱から出ている坐骨神経がストレスを受けて痺れや痛みが出る。腰椎椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症により坐骨神経痛が出ることもある。 - 腰椎圧迫骨折
大きな外力や骨粗鬆症により脆くなった骨に少しの外力で腰椎が圧迫され骨折すること。
腰痛という大きな括りの中にもこれだけの種類があり、症状も違えば禁忌やアプローチの仕方も変わります。
実際に腰痛を訴える方が参加されたら
上で挙げた腰痛の種類には、前屈に注意する腰痛、後屈に注意する腰痛、回旋に注意する腰痛とそれぞれの注意点があります。参加者が何を原因とする腰痛なのか知ることで、より安全なレッスンを作り上げることができます。
ヨガ指導者は初めて参加される人に対して事前に既往歴の聞き取りをすると思いますが、その時に腰痛の診断名を必ず聞き、医師などの医療従事者から行ってはいけない動作や運動量の範囲などに対してどのようなアドバイスをもらっているのか、現段階でどのくらい腰痛の症状があるのか聞いてみましょう。
レッスンを始める前に参加者の状況を丁寧に聞くことで、自分のレッスンの強度に合っているのかを判断できます。もし強度が合ってないようなら他のレッスンをオススメし、必要であれば医療機関の受診を勧めます。
たとえばヘルニア患者なら、脊柱の屈曲に注意
「腰椎椎間板ヘルニア」の既往がある人が初めてレッスンに参加されるとします。腰椎椎間板ヘルニアの場合、脊柱を強く屈曲するようなアーサナはリスクがあります。
担当するレッスンの難易度が高いのであれば低難易度のレッスンをオススメし、自分のレッスンに参加してもらう場合は、前屈を伴うアーサナで声かけや修正をかけることで安全にレッスンを進めることができます。
もし前屈するだけで腰が痛む、痺れるといった症状が著明に出現しているような場合は、やはり医療機関でしっかりとリハビリしてもらうのが良いでしょう。
このように、ある程度腰痛の知識があれば参加者にとって無理のないヨガへの向き合い方を説明することが可能になります。
腰痛といっても原因はさまざま。参加前に聞き取りをしたうえで、自分のレッスンで問題ないのか、他のレッスンをオススメするのか、医療機関を受診してもらうのかを決めましょう。
そのためには腰痛の種類と注意点をちゃんと知る必要があります。これが安全なレッスンをする第一歩です。