禅語に見るヨガの心  VOL.8「心身一如(しんしんいちにょ)」

禅語に見るヨガの心:VOL.8「心身一如」(しんしんいちにょ)

「心身一如」(しんしんいちにょ)

「心身一如」は、「身心一如」とも書きます。その意味は、「心と体はひとつである」。シンプルで当たり前のようにも思えますが、現代に生きている私たちは、何かと心と体を分けて考えてしまいがちではないでしょうか。

  • 体調がすぐれないときは、まず薬を飲む
  • 心に悩みを抱えているけれど、仕事は忙しく体を酷使する

そんなふうに心と体を別ものとしてとらえていると、双方のバランスが崩れてしまい、不調のスパイラルに陥ってしまうことにもなりかねません。それでは、仏教では「心身一如」をどのように教えているのでしょうか。

禅にまつわるこんなお話

「心身一如」は、曹洞宗を開いた道元禅師が説いた言葉です。「正法眼蔵」の中で次のように教えています。

心身一如のむねは、仏法のつねに談ずるところなり。
しかるに、なんぞ、その身の生滅せんとき、
心ひとり身をはなれて、生滅せざらん。

禅宗では、厳しい修行を行うことで体で覚え込ませ、心に働きかけていきます。そうして心身を共に鍛えることで、悟りの道を目指します

禅の教えからわかること

仏教の教えでは、生も死も、身も心も一体であるというのが根本思想。そのため、「人が死んでも霊魂が生きて現世をさまよう」という考えは本来の仏教の教えとは異なるようです。

西洋医学では心と体は別ものであるという考えをもとに、病気であると見なされる「体」を治療することに焦点を当てますが、東洋医学では、「心身一如」=「心と体のつながり」を重視しています。

「怒りが肝を傷める」「恐れが腎を傷つける」と、というような考え方は、普段西洋医学に慣れていると、とても斬新で深い気づきがあります。

ヨガと禅

ロータスポーズで瞑想をする女性の腰から下
ヨガは心と体をつなげてくれる

東洋医学のルーツをたどると、ヨガとは切っても切り離せないアーユルヴェーダ(インド伝統医学)にたどりつきます。心と体は一体であるという「心身一如」の仏の教えは、日頃からヨガに親しんでいる方には、こういった繋がりからも実感できていることでしょう。

  • 背筋をピンと伸ばしていると、心もシャキッと前向きになる
  • 反対に体が縮こまって固まっていると、心も内向きで頑固になる
  • 心がそわそわする時は、目を閉じて丹田を意識して落ち着かせる

このようにヨガは、日頃バラバラに考えてしまいがちな心と体をひとつにするために大いに役立ってくれます。心と体の調和をはかり命を輝かせること。それは、私たちひとりひとりに与えられた使命なのかもしれません。