ヨガを指導する際に注意しておきたいのが、参加者の既往歴です。たとえば、同じ腰の痛みでも病名によって症状や注意すべき点が変わるため、それぞれの症状を把握しておくと安全に指導することができます。
前回、腰痛の種類について詳しくご紹介しておりますので、こちらの記事もご参照ください。
その中でも今回は、腰椎椎間板(ようついついかんばん)ヘルニアを取り上げて解説します。
腰椎椎間板ヘルニアの病態
腰椎に限らず、脊骨(せっこつ)と脊骨の間には、椎間板という背骨と背骨を繋ぐクッション材のような組織があります。椎間板自体は水分が豊富で中心部は髄核(ずいかく)というゲル状の組織があります。
地球には重力があり、立ち姿勢、座り姿勢だと脊柱は上から下に力を受けている状態にあります。その力を椎間板という組織がショックアブソーバーのような役割で脊柱に加わる衝撃を吸収しているのです。
その椎間板もストレスを受け続けるとトラブルが生じます。そのトラブルの1つが椎間板ヘルニアです。特に、腰椎ではヘルニアを発症しやすいです。
腰椎椎間板ヘルニアの主な原因2つ
腰椎椎間板ヘルニアを引き起こす原因は、主に2つあります。
- 加齢に伴い椎間板の水分量が減り、椎間板に亀裂が入りやすくなり、そこから髄核が椎間板から飛び出る
- 座り姿勢、中腰の時間が長かったり、重たい物を持つ作業などの動作が積み重なることで椎間板に亀裂が入り髄核が椎間板から飛び出る
飛び出た髄核は脊柱を通っている神経に触れることで炎症が起き、腰椎椎間板ヘルニアの症状が出てきます。長時間の運転をするドライバーや、中腰の姿勢になったり重たい物を持ったりする機会が多い仕事の人は、腰椎椎間板ヘルニアになりやすいと言われています。
症状は
- 前屈したら腰が痛む
- 長時間の坐位姿勢がつらい
- お尻や下半身のしびれや脱力感がある
といったように、主に腰から下半身にかけて痛みやしびれの症状が出ます。
ヨガ指導者の方に知って欲しいことは、腰椎椎間板ヘルニアがある方にアーサナの修正を強めに行うのは症状の悪化・再発のリスクがあるということです。特に、前屈系のアーサナを強引にアシストしてしまうのは症状の悪化・再発の可能性がありますので注意が必要です。
腰椎椎間板ヘルニアをお持ちの方が注意すべきアーサナ
腰椎椎間板ヘルニアは個人差はありますが、前屈すると痛みが出やすい疾患です。前屈系のアーサナは、特に慎重に指導します。
- 長座前屈のポーズ
- 開脚前屈のポーズ
- 立位前屈のポーズ etc
このような前屈系のアーサナは、骨盤から倒すイメージがあればいいのですが、腰椎椎間板ヘルニアを発症している場合、おそらく骨盤から動かずに腰椎メインで前屈している可能性が高いです。
これでは椎間板が圧迫されてしまい、腰椎椎間板ヘルニアの症状が出てくる危険があります。なおかつ、背中を押すようなアシストをしてしまうと、痛みが出るリスクが非常に高くなるのでやめておきましょう。
腰椎椎間板ヘルニアがある方への安全なアシスト・指導方法
参加者の症状をよく理解しつつ、もしアシストするのであれば、
- 座布団やバスタオルなどの上に座ってもらいお尻の位置を少し高くしてから前屈をする
- 背中ではなく骨盤から押す
このようなアシストをオススメします。1のアシストでお尻の位置を高くすることで股関節にゆとりができ、骨盤から前屈を行いやすくなります。2は背中を押すことのリスクがありますが、骨盤から押してアシストすることで安全な修正をかけれます。
また、腰痛椎間板ヘルニアの患者は、坐骨神経を傷めている場合があります。坐骨神経は、膝を伸ばした状態で股関節を曲げるポジションで、特に伸張され、しびれや痛みの症状が出てきます。
そのため、長座前屈のポーズでは注意が必要です。膝を伸ばした状態で行うと、坐骨神経が伸張される可能性があるため、膝を少し曲げて前屈をするようにアドバイスしましょう。
このポジションだと、坐骨神経は伸張されずに腓腹筋やハムストリングスといった筋肉が伸張されますので、安全で効果的にアーサナを行うことが可能になります。腰痛がない方に対しても、安全に長座前屈のポーズを行える修正方法なので、覚えておくのがオススメです。
今回は、腰椎椎間板ヘルニアについて解説しました。知識を深めて安全に指導を行えるようにしましょう。