自分の本質に訴えかけるマントラ“アーナンドーハム(Anandoham)”を唱えよう

自分の本質に訴えかけるマントラ“アーナンドーハム(Anandoham)”を唱えよう

ヨガでは、自分の心や体の調和を整えるために、「マントラ」と呼ばれる真言を唱えます。例えば、ヨガのクラスの最初や最後に唱えられる”オーム・シャンティ“も短いマントラです。

自分の心のコントロールはとても難しいのですが、音の力を借りることによって、深い深層心理に届けることができます。今回は、短いけれど心を穏やかに整えるのにとても効果的なマントラをご紹介します。

古代のマントラ“アーナンドーハム(Anandoham)”

アーナンドーハムは、古代インドから伝わる古いマントラです。日本語では「私は至福である」という意味になります。

ヨガで使われるようなマントラはサンスクリット語と呼ばれる古典的な言語が使われています。サンスクリット語は梵語とも呼ばれ、神・ブラフマンの言葉として知られています。

アーナンドーハムに限らず、全てのマントラは神の音であるため、非常にエネルギーの高い音の波動を持っていると考えられています。それぞれのマントラに効果がありますが、アーナンドーハムは自分自身の内側の幸福への気づきを得るためにとても効果の高いマントラです。

本当の幸せアーナンダは自分の内側にある

アーナンダは永遠と続く至福の状態を意味しますが、通常私たちがイメージするような楽しみや幸せ、快楽とは少し違います。

一般的な幸せのイメージはどのようなものでしょうか?

  • 愛する家族と幸せに暮らす
  • やりがいのある仕事をする
  • 好きなものに囲まれた快適な家で生活をする
  • 大好きな犬がいる生活
  • たまにの休日に大好きな旅行に行く

それぞれに理想の生き方があると思いますが、これらの幸福もヨガ的な思考では外的な幸せです。

例えば、自分の愛する家族との生活を楽しんでいる人が、ある日不慮の事故や自然災害で家族を失ってしまっては...深い悲しみで一生立ち直れなくなってしまうかもしれません。それは、家族という自分の外側に自分のアイデンティティを見出していたからです。

本当の幸せアーナンダは自分の内側にある
自分の外側に幸せの価値を見出す

無常のものはいつか終わりがくるものであり、ヨガでは、いつか失ってしまう楽しみは本当の幸せではないと考えます。

それでは、不変のものがこの世にあるのでしょうか?私たちにとって、変わらない唯一の真実は自分自身の本質です。

ヨガの目的はアーナンダに到達すること

ヨガの練習中に何をしているか考えてみましょう。

アーサナであっても、プラーナヤーマ、瞑想であっても同じです。ヨガでは、自分自身を観察して、自分の本質に意識を向けることを志しています。

アーサナの練習で考えてみましょう。

最初は先生のガイドや周りの生徒の様子といった外的な情報に意識が向きがち

  • 慣れてくると徐々に自分自身の身体に意識が向くようになる(筋肉や関節など)
  • アーサナを行っている時の呼吸を楽しめるようになる
  • 体に満ちているエネルギー(プラーナ)の流れを感じられるようになる
  • 自身の思考の働きを傍観できるようになる

こうして、自分の心の働きさえ客観的に見れるようになったとき、それを観察している存在が本来の自己の本質だと気付くことができます。

ヨガの目的はアーナンダに到達すること
心の働きを客観的に観察する

一度、自分の本質に気が付くと、自分の身体・思考・感情さえも客観視できるようになり、外面的な自分の状態が変化しても、それに支配されなくなります。それこそが、ヨガで手に入れることのできる永遠の平穏であり、至高の状態です。

アーナンダ(至福)は見つけるものではなく気づくもの

すでに述べた通り、ヨガは外側の環境を変えることが目的ではありません。もちろんヨガを実践すれば健康になり、ストレスが減って人間関係もスムーズになり、食事や家の状態にも意識が行きわたって丁寧な生活にシフトできる方も多くいます。

しかし、それらの効果は大きなヨガの恩恵の中では副産物にすぎません。

最終的に私たちが到達するべき状態は、何もなくても今この瞬間に、自分自身に心から満足して幸せを感じられることです。それは、言葉だけではなかなか難しいかもしれません。

しかし、ヨガで自分に向き合う練習を繰り返し行うことで実感ができます。瞑想で思考の働きが止まった時に、古代から多くの人が穏やかで不安のない心地よさを感じてきました。

たとえ瞑想でサマディ(三昧)に到達できなくても、マインドフルな瞑想を行っていれば自分の呼吸が最高に気持ちの良いものだと気が付くことができるかもしれません。

本当の幸せは外から与えられたものではありません。自分自身がすでに持っているものに意識を向けて気が付くだけで手に入ります。

アーナンダは全ての人のサンカルパ(抱負)でもある

アーナンダは全ての人のサンカルパ(抱負)でもある
アーナンダは全ての人のサンカルパ(抱負)でもある

ヨガを行う人はサンカルパと呼ばれる自身への誓い(抱負)を決めます。

人にはそれぞれの望みがあるので、それに合わせて様々なサンカルパの言葉が生まれます。しかし、サンカルパを決める時には「本当に自分が何を望んでいるのか?」を時間をかけて深く考えることが大切です。

最初に思いつく誓いは粗い誓いだと考えられます。

例)「仕事を頑張って成果を出すぞ!」

一つのサンカルパが思いついたら、それが叶ったらどうしたいかを突き詰めていきましょう。

「仕事の歓びを周りの人たちと共有したい」
「自分の仕事で社会の沢山の人を幸せにしたい」
「自分も楽しく仕事をして、他者も幸せな状態を作り出したい」
「みんなが幸せになりますように」

このような方法で突き詰めていくと、自分の願いの一番コアな部分が分かってきます。そして、誰もが漠然とした「幸せ・平和」というものを求めていることが分かります。

それが分かりにくいから、最初は姿かたちのある目標を設定するかもしれませんが、自己への理解が深まることで、条件がなくても幸せになれるような願いが持てるようになっていきます。

聖地リシケシの先生に聞いた「ヨガのサンカルパ(抱負)の見つけ方」

マントラ“アーナンドーハム”を唱えてみよう

それではさっそくマントラ“アーナンドーハム(Anandoham)”を唱えてみましょう。

アーナンドーハムは「アーナンダ」と「ハム」を続けて発音するときの読み方です。


(筆者のグルでもあり、インタビューでお世話になっているスニール先生のAnandohumの音声です)

Anandoham Anandoham
Anandam Brahmandam

【意味】
私は至高である。私は完全なるものである。

マントラをそのまま唱えても良いですが、こちらの音声ではメロディを付けています。インドではラーガと呼ばれるルールによってメロディを作り出していきますが、その音階やスピードによっても私たちに与える効果が全く違います。

このようにメロディをつけてマントラを唱えることは、自身の心理状態への効果をとても感じやすいため、とてもオススメです。

今回はアーナンドーハムという短いマントラを取り上げて、そのマントラの意味と効果についてご紹介しました。ヨガ、特にハタヨガでは音の効果をとても重要なものとして考えています。

音とヨガの関係。ハタヨガで重要視されるナーダヨガとは

ヨガの練習の最初や最後、または夜寝る前などにマントラを唱える習慣を身に着けると、心がとても穏やかになるのを実感しやすくなります。

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