「一挨一拶」(いちあいいっさつ)
日常的によく使われる「挨拶」の元になっている言葉です。挨拶とは、「おはよう」や「こんにちは」など、人と会った時に交わす言葉のことを指しますが、もともとの禅語にはもう少し違った意味合いがあります。
- 「挨」は「押す」。積極的に突き進むこと
- 「拶」は「迫る」。相手に切り込んでいくこと
禅にまつわるこんなお話
中国の仏教書「碧巌録」には、こう記してあります。
これは、禅問答をすることによって相手の悟りの深さをはかることを意味しています。相手に言葉を投げかけ、それに対してどんな言葉が返ってくるか。その言葉から、相手の力量を読み取るのです。
問答からわかること
禅語の「一挨一拶」には、真剣勝負のような厳しさを感じます。まるで一対一で剣を持たずに、心と心の試合をするような。
一方で、私たちが日常的に使う「挨拶」はどうでしょう。一般的な挨拶にも、もともとは心と心を通わせる禅語の精神が宿っていたはずです。ですが、今では相手の心に深く「押し」「迫る」ようなものではなくなり、コミュニケーションをとる最初の手段という意味合いが大きいですね。そればかりか、挨拶そのものがおろそかになっているような気さえします。
ヨガと禅
仕事や学校、家庭などでも、日常の挨拶を適当にしていると相手の心に入り込むきっかけを失ったままで、その場をやり過ごすことになってしまいます。「きちんと挨拶を」「元気に挨拶を」そうはいっても、いつでも元気にはきはき挨拶するのは苦手と思っている方も多いかもしれません。
心も体も、いつも同じく元気だとは限らない。だからこそ、人と会う時にはしっかり挨拶をして自分も心の窓を開き、相手の心を推し量ることが大事なのではないでしょうか。心と体をいつも元気でバランス良く保つのが難しいのであれば、ヨガプラクティスが役に立つことでしょう。
挨拶の時には日本人はお辞儀をしますが、国によって握手、抱擁、接吻など、いろんなスタイルがありますね。ヨガのレッスンでは始めと終わりに合掌で挨拶をします。合掌をすることで、すっと神聖な気持ちになり、心が自然とヨガに向かうことでしょう。日本でも合掌は神様や仏様にお祈りする時にするものなので、繋がりを感じます。
何ごとも挨拶に始まり、挨拶に終わる。ヨガレッスンでの合掌のような気持ちで、普段の生活の中でも気持ちよく挨拶ができたらいいですね。