ダーラナ(集中)の質を上げて人生をもっと豊かに生きる

ダーラナ(集中)の質を上げて人生をもっと豊かに生きる

ヨガ・スートラの瞑想状態であるサンヤマの入り口はダーラナ(集中)です。私たちの心は次から次に意識が飛び回っていているので、一つのことに集中することはとても難しいと感じる方も多いことでしょう。

瞑想をしていても、雑念が湧いてきてしまい一つの対象に集中しようとすることを辛いと感じてしまいがちです。特に現代的なライフスタイルは一つのことに集中しにくい時代になっています。

深い集中状態であるダーラナに入るためにはどうしたらいいのでしょうか?

集中できない心は悪ではないが、ヨガにとっては障害

集中できない心は悪ではないが、ヨガにとっては障害
集中することの難しさ

始めに、私たちの心はどうして集中することができないのか考えてみましょう。

瞑想をしたいのに雑念が多すぎて苦痛だと感じる方、勉強をし始めた途端に掃除がしたくなったり気が散ってしまう方は、自分は集中する能力が欠如してしまっているとネガティブに感じてしまうかもしれません。しかし、集中力のなさは決して欠陥ではないことを理解してください

人間、もしくは動物の本能について考えてみましょう。分かりやすい例えだと、サバンナの動物が水辺で水を飲むことに集中していると、周りに敵がいることに気が付くことができず、生命の危険の原因となってしまいます。

自然界では、長時間何かに没頭したり、盲目になることはとても危険なことであり、動物は一定時間以上集中しないこと、もしくは常に周りに意識を観察するなどマルチタスク型の思考が可能になっています。

集中力が必要な人とマルチタスクの必要な人

どれくらい集中力が必要かは人によって違います。

例えば手術をする外科医であれば、高い集中力を保つことが必要とされます。一方で、沢山の子どもを一度に預かる保育士であれば、ピアノを弾きながらでも数十人の子どもに目を配るというマルチタスクを行わなくてはいけません。

子育てをする女性はマルチタスクが得意な傾向があり、料理や掃除をしていても子どもの異変に気が付くことができます。

スマートフォン・リモートワークで集中力が奪われる

生きるために必要でマルチタスク型の思考の癖がついている場合もありますが、問題なのは本人が望んでいないのに集中力を奪われてしまう生活習慣です。

現代で最も問題であるのは、スマートフォンです。

本当に便利なものですが、仕事中も勉強中も、いつでもメッセージやSNSの通知が来たらついつい見たくなってしまいますね。その度にスマートフォンを開いてしまうことはマルチタスク型の思考の癖を日々育ててしまいます。

また、昨年からリモートワークを行う人も増えていると思いますが、家族がいたり、やりかけの家事を思い出してしまったり、生活に関わるものが視界に入ってくるだけで集中力が奪われていると感じている方も多いのではないでしょうか。

大切な連絡を待っている時以外は、できるだけスマートフォンの通知が来ない設定にするか、目のつかない場所に置いておいた方がいいかもしれません。

集中することの効果

常にマルチタスク型の思考の癖がついていると、頭の中は散らかった部屋のような状態になっています。

自分の部屋が散らかっていると様々な障害があります。書類を書こうとしたら印鑑が見つからない、家計簿をつけようとしたらレシートが見つからないと、余計な探し物ばかりに時間と労力を取られて、効率が悪く必要以上に時間を取られてしまいます。

同じように頭の中が沢山の思考で散らかっている状態では、一つのことをするのにも沢山の雑念で思考が鈍っているので全く頭が働かない状態になってしまいます。

仕事をする時に自を分の部屋よりもカフェなどの方がはかどると感じる方は多いと思いますが、それは生活に関わるものが身の回りにないことで、仕事という一点に集中できるからです。家にいると、コーヒーを淹れたら洗い物、ついでに乾いた食器を片付けてと、どんどん余計な仕事をしたくなってしまいます。

集中することの効果
ひとつのことに集中できる環境

私たちがヨガのダーラナ(集中)で行っていることは、これらの雑念を取り除くことです。マルチタスクは沢山のことをこなせて一件作業量が多く見えますが、それぞれのタスクへの集中力が低いため、結果的に生産性が低く、時間がたっても予定の仕事が終わらせられません。

ヨガでは、常に今自分が何をするべきかを明確にしています。アーサナのクラスでも呼吸に意識を向けるのか、身体の感覚に意識を向けるのか、自分の感覚に意識を向けるのか、先生のガイドに合わせて1つに集中しています。

ダーラナ(集中)では、今この瞬間に考えるべきでない雑念に意識を捕らわれないようにします。それは、心の中の片付けをしていると言い表せるかもしれません。部屋の中が綺麗なら仕事がはかどるように、心の中に雑念がなければ今必要なことに全力を捧げることができます。

ダーラナ(集中)は幸福を呼ぶ

ダーラナは仕事の効率を上げてくれるだけでなく、私たちの人生の幸福度を大きく高めてくれます。人は、今この瞬間に意識を向けられるほどに幸福感を感じやすくなります。

意識が今に向いている人は、たった一杯の紅茶を丁寧に入れて香りを楽しみながら飲むだけでも幸せを感じることができます。大好きな紅茶を飲む瞬間、5分であっても穏やかな時間が流れ、自分の心は幸せな香りに結びついています。

しかし、効率を考えすぎて、紅茶を淹れながらも仕事のことを考えたり、スマートフォンを見たり、未来の収入の心配をしていたら、どれだけ好きな紅茶を飲んでいても味を感じることができませんよね。

心に余裕が持てないと、常に何かに圧迫されているような感覚を抱く方が多いです。それは、頭の中が散らかってしまっていることで、何か分からない根拠のない未来を恐れているからです。

しっかりと今に意識を集中させることで、日常の中にも幸せが沢山あることに気が付けます。5分の休憩でも、完全に仕事を忘れることができれば、新しい気持ちで残りの仕事に向かうことができて、かえって仕事の効率もよくなります。

集中(ダーラナ)を高めるためのヨガ的なアプローチ

集中(ダーラナ)を高めるためのヨガ的なアプローチ
ダーラナを高めるヨガ的アプローチ

心が散漫で集中できない人のために、ヨガではいくつかのアプローチを行います。

アパリグラハ(無所有)が集中を生む

アパリグラハ(所有しないこと)は、雑念を消し去ることにとても有効です。ものを持つことは、様々な煩悩を生む原因となってしまいます。

例えば、クローゼットの中に沢山の洋服があれば、毎日何を着るのかに悩み、収納方法や手入れに思考が働いてしまいます。ブラウスがあるのに、それに合うボトムやバッグがないと、次から次に欲しくなってしまいますね。

クローゼットの中が、少数の本当に気に入った洋服だけならば、毎日考えなくても快適に気に入った洋服を着ることができます。

そのために、一度集中して自分が本当に求めているものを考えることができれば、上手にものを減らすことができます。意外と、物は少ない方が快適だと気が付くことができます。

アパリグラハ(無所有)を学んで心の自由を手に入れる

呼吸によって集中力を高める

慣れないうちは、一つのことに集中しようとしても雑念が湧いて集中ができません。そのようなときには、深い呼吸をすることも効果的です。

プラーナヤマの結果、心の光明を隠していた煩悩が消滅する。(ヨーガ・スートラ2章52節)

集中できない時に、ほんの数分でもいいので、できるだけゆっくりと吸って、できるだけゆっくりと吐く呼吸をしてみてください。忙しく働いていた雑念が弱まることを感じることができます。

心と呼吸は繋がっているので、呼吸をコントロールすることで思考の働きもコントロールしやすくなります。

「気が動くと心が動く」ハタヨガ経典に書かれた呼吸の大切さ

今この瞬間に意識して生きましょう

ダーラナ(集中)は瞑想のテクニックでもありますが、日常生活でとても必要なスキルでもあります。

ダーラナの質を上げるのに最も効果的な方法は、毎日瞑想の時間を取り入れることですが、瞑想が苦手という方は、アパリグラハやプラーナヤーマなど、間接的な実践の積み重ねでも大きな効果を感じることができます。

思考の癖を治すことはとても難しいことですが、少しづつ楽しみながらヨガの実践をすることで、今に集中できる心を育てましょう。

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