これまで「腰痛」を疾患別に分類し、その中の腰痛椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)について解説してきました。今回は、高齢者に頻発する「脊椎圧迫骨折」について解説したいと思います。
脊椎圧迫骨折の病態と症状
脊椎圧迫骨折とは、脊柱を構成する椎骨に外力が加わることで生じる骨折のことをいいます。若い方であれば交通事故のような大きな外力が椎骨に加わらないと脊椎圧迫骨折は起きませんが、高齢者には頻発する骨折です。
主な原因は、加齢とともに骨が脆くなってしまうことです。骨が脆くなると、少しの力でも骨が変形して潰れてしまいます。特に骨粗鬆症とは密接な関係があり、骨密度が低いと脊柱圧迫骨折のリスクが高くなるといわれています。
女性はホルモンの関係で閉経後から骨密度が下がりやすく、「閉経後骨粗鬆症」になる可能性があります。骨粗鬆症になると転倒したり、重たい物を持ったりした時に、脊椎圧迫骨折が生じる危険性が高まります。
これがひどい場合だと、くしゃみやせきのような小さな衝撃でも骨折します。また、骨折をするような出来事がなく本人はただの腰痛だと思っていて放っておいたところ、しばらくして病院に行って診てもらったら骨折していたというケースもあります。このことから「いつのまにか骨折」とも呼ばれています。
好発部位は、第12胸椎と第1腰腰椎です。ここは脊柱を屈曲した時に一番圧迫される場所だからです。症状は、急性期の場合、立ち上がりや寝返りといった日常生活を行うだけで背中や腰に激しい痛みが出ます。
慢性期になると、潰れた骨折部位が固まり、激しい痛みは落ち着きます。しかし、椎体が潰れていまっているので背中が丸まり身長が低くなってしまいます。
ヨガで注意すべきアーサナと効果的なアーサナ
脊椎圧迫骨折の既往がある方にヨガを指導する時の注意点は、できるだけ脊柱の関節可動域の限度まで動かさないことです。
脊柱は、屈曲、伸展、回旋の各運動方向に動くのですが、それぞれの運動方向の限界まで動かさないようにしましょう。関節可動域限度まで動かすと、骨に負担がかかり骨折する可能性があるからです。
特に難易度の高いアーサナは、リスクがありますので注意しましょう。脊柱圧迫骨折の方には、難易度の低いベーシッククラスの参加がおすすめです。
また、ベーシックなアーサナでも無理なポーズの修正は良くありません。無理矢理ポーズを修正すると骨にストレスが加わり危険です。無理な修正は行わずに、相手の反応や身体の動きを丁寧に観察しながら適切な修正を行いましょう。
脊椎圧迫骨折の治療中は無理をしない
脊椎圧迫骨折の治療中に効果的なアーサナは特にありません。というのも脊椎圧迫骨折のリハビリは最初、硬性コルセットで患部を固定して安静にします。
これは、患部にストレスを加えないために必要な期間です。しかし、一定期間十分に身体を動かすことができないため、柔軟性、筋力、持久力が落ちてしまいます。
ここで効果的なのがヨガを取り入れることです。症状が落ち着いたら柔軟性、筋力、持久力を向上するために運動療法が行われるのですが、ヨガはこれらを改善するには非常に適しています。
安静時期や固定時期があると背筋が弱くなるので、伸展系のアーサナが効果的といえます。しかし、伸展系のアーサナをしなくても「良い姿勢」を意識すれば自然に背筋は使われるので、脊柱を無理に伸展しなくても良いと思います。
これを踏まえて、まずは簡単なリラックス系のクラスやベーシッククラスに参加するといいでしょう。
今回は、脊椎圧迫骨折について解説しました。脊椎圧迫骨折の知識を深め、安全なレッスンを心がけていきましょう。