瞑想をする女性の横姿と宇宙のダブルイメージ

マンドゥキャ・ウパニシャッドから学ぶ!自分の本質を知ることの重要性

「私って何なのだろう?」

これはヨガを行っている人に限らず、誰もが一度は考えたことがある疑問でしょう。

自分のアイデンティティを自身の性格に求めてみたり、身体、職業、国籍、ファッション、性別などのあらゆるもので見出そうと挑戦します。しかし、そのような基準で型にはめて自身を理解しようとしても、なかなかうまくいかないことが多いのではないでしょうか。

インドの古典教典の一つである『マンドゥキャ・ウパニシャッド』では、「自分とは?」との問いに対して明確に答えています。

ここでは自分自身を見つめ直す1つのヒントとしてご紹介します。

古代の知恵マンドゥキャ・ウパニシャッドとは

マンドゥキャ・ウパニシャッドは、ヴェーダンタ学派の教典であるウパニシャッドの1つです。ウパニシャッドには正式なもので108つあると言われ、それぞれのウパニシャッド教典の中で世界の真理について説かれています。マンドゥキャ・ウパニシャッドはウパニシャッドの中で最も短い教典として知られています。

本文はたった12のマントラから構成され、その12のマントラによってオームという聖音について説きます。とても短い教典ですが、この教典さえ理解できれば人は悟りを得ることができると考えられています。

マンドゥキャ・ウパニシャッドの名前の由来

木に登るカエル
マンドゥキャ・ウパニシャッドは、マンドゥキャという名前の聖者が書いた教典だと言われています。

ヨガを行っている人はマンドゥカという言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。マンドゥカにはカエルという意味があり、ヨガマットのメーカーの名前やマンドゥカ・アーサナ(カエルのポーズ)で馴染み深いと思います。

ヨガにとってカエルはとてもいい意味があります。

通常の私たちの意識と、スピリチュアルな意識の間には大きな壁があり、人はなかなか超えることができません。カエルはジャンプ力でそれを飛び越えて、私たちに叡智を授けてくれる存在だと考えられています。

マンドゥキャ・ウパニシャッドの説く自分のしくみ

教典によると、「私たち自身について知ろうとするときに、自分自身を4つの様相に分類することができる」と説かれます。

  1. 起きている状態の人
  2. 夢を見ている状態の人
  3. 深い睡眠状態の人
  4. 4つ目の状態の人

この4つを理解できれば、自分自身について知ることができると考えられます。

起きている状態の人

起きている状態とは、自分自身の身体や、感覚器官に意識が向いている状態です。

私たちが起きている時には、5つの感覚器官(目・耳・舌・皮膚・鼻)から得た情報で全てを判断します。つまり、起きている状態は意識が外向きの状態と言えます。

この状態で「自分を知る」とはどのようなものでしょうか?

例えば、鏡を見て自分の容姿を知ります。それは、目という視覚を司る感覚器官によって得た情報です。同じように、臭い、声、肌の柔らかさなど、全て感覚器官によって知ることができます。自分という対象に対しても、外から得た情報によって知ることになります。

自分自身の体臭1つをとっても、いったん衣服や空気に溶け込んだ香りをもう1度鼻から吸い込んで、初めて認識することができますね。足が速いという情報も、ストップウォッチの数字を見て、平均値を耳で聞いて初めて知ります。

こうやって得た情報をもとにして頭の中で考察し、「自分はこうである」とアイデンティティを築き上げます。

夢を見ている状態の人

夢を見ている状態とは何でしょうか?それは、起きている状態の時に得た情報の想起です。

ヨガ的な見解では、夢とは心が作り出すものです。心に意識が向いているもと言えます。よって、夢の状態は内側に意識が向いている状態です。

夢はすでに知っている記憶をもとに作られています。もしも「予知夢を見た」と感じる人がいても、それは私たちがすでに知っていたことを気が付かせてくれているだけなのかもしれません。

深い睡眠状態の人

深い睡眠状態とは、夢さえも見ない深い眠りの状態です。

この深い睡眠では、あらゆる心の働きが無くなってしまったような感覚になります。そのため、瞑想状態やサマディ(三昧)にとても近いのでは?と考える人も多いです。

深い睡眠は、現在は表面化されていない潜在意識がある状態です。

あらゆる思考は止まっていても、潜在的に残っているため、起きた瞬間にあらゆる心の働きが戻ってきます。

4つ目の状態

人の姿の形に集まった銀河の光
最後の状態をトゥリヤと呼びますが、それはそのまま「4番目」という意味です。

この状態は言葉では言い表せず、推論では理解できない状態のため、「4番目の状態」と呼ばれます。しかし、この4番目の状態こそが自分の真実です。この4つ目の状態の人は、他の3つの状態全てを含みます。そして、静かで、平和で、至福の状態です。

ヨガでは、この真の自分の状態を目指します。

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全てを含む自分の真実

4つの状態の人を貴金属に例えてみましょう。

  • 起きている状態:ブレスレット
  • 夢の状態:ネックレス
  • 深い睡眠:リング
  • 4つ目の状態:ゴールド

人が自分自身を認識するためには、その瞬間の状態に意識を向けていると考えられています。

例えば、今の状態がブレスレットなら、それを見た人は「これはブレスレットだ」と考えます。そして、誰もが「ブレスレットとネックレスは別物だ」と考えます。しかし、ブレスレットが古くなってネックレスに作り替えることもあれば、リングにすることもあります。つまり、「これはブレスレットだ」と考えるのは、その瞬間の様子にしか意識が向けられていないことです。これでは本質を知ることができません。

同じように人も常に状態を変えています。痩せている人が「自分はスタイルが良い」というアイデンティティを思い込んでいたら、妊娠と共に体重が増え、出産後も元の体重に戻らなかった自分を「これは本来の自分じゃない」と認められず、突然お洒落に服が着られなくなったり、たるんだ顔になってしまった自分が価値のない存在だと思ってしまうかもしれません。

人の身体も心も常に変化しているものです。五感で認識できるものは全て、その瞬間の状態でしかありません。

では本質とは何でしょうか?それは、ゴールドの様なものです。ある時はブレスレットになり、リングになり、ネックレスになり、同じネックレスでもデザインは変わるかもしれません。しかし、どのような状態であっても本質的にそれはゴールドです。

この本質的な自分自身のことを、ヨガの言葉ではアートマンと呼びます。普段は外面的な自分、内面的な自分、それらの活動が止まった眠った自分にしか意識を向けることができませんが、それは自分を判断するために、瞬間でしか見ていないからです。ヨガでは無常のものではなく、変わらない真実を大切にします。

本質探しこそがヨガ

人の頭のシルエットと宇宙のダブルイメージ
4つ目の状態、つまりアートマン(自己の根源)に意識が向いている状態を体験することはとても難しいことです。ヨガではアートマンを知るために瞑想を行います。

瞑想では、雑念や感情などのあらゆる心の働きを、順を追って弱めていくことで、その奥にある本質を探します。

全ての心の働きを止めた時に残るのは「無」ではありません。アートマンという自身の本質を知り、その本質は起きている時や夢を見ている時に認識している全てを含んでいることに気が付きます。

自分探しを外の世界に求めても、なかなか自分は見つけられません。外の世界から得られる情報は認識しやすく、微細な内側は見えがたいので、自分探しは簡単ではないかもしれません。しかし、いつまでも穏やかに変わらない本質を知ることで、表面的な状態に制限されない自分に幸せを感じることができます。

ヨガの時間には、自分自身に向き合う練習をしてみましょう。