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ヨガ哲学の観点から「平和」の意味を考えていこう。平和は静かという意味としても使うが、ヨガ哲学と考えると、より深い「静か」が浮かび上がってくる。
ユネスコでは、平和憲章前文で、こう伝える。
戦争は人の心の中で生まれるものであるから、人の心の中に平和のとりでを築かなければならない。
相手の風習と生活の無知が、疑いや不信を生み、戦争へ。心の平和には、教育、客観的な真理、自由による知性、精神的なつながりが必要だと強調。
なるほど。確かに、人の心がすべてのもと。そうなると、平和は個人次第ということになる。
平和を読み解くStep
Step1
平和の源は心の中の幸福感
テレビや新聞で取り上げられる「平和」の大半は世界の平和について。最近は特に世界情勢は気になるところだ。しかし、世界の平和は何によって成り立っているのだろうか?「平和」を個人レベルから考えてみよう。
個人の精神的な平和が基本
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平和な個人の集合が平和な家庭、平和な国家を生み出す
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平和にはいろいろなレベルがある
1:精神面、2:肉体的な健康面、3:人間関係(家庭、地域、環境、学校など)
4:経済に相応する精神面、5:社会面(地域、国家、国家間、世界など)
6:自然環境(気候変動などの影響)
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自分だけが平和であっても続かない
Step2
そもそも人の本来の姿は
平和な存在
私達はどうして本来の平和な在り方から遠ざかってしまったのだろう。そして、世界の平和の乱れていったのはどうしてなのか。じっくり考える必要がありそうだ。
平和はトリグナのうち、サットヴァが高い意識状態
世界の平和はサットヴァな個人が集まって実現できる。だから、世界が平和であるためには、個人が真の意味での幸福を得ることが必要。個人の純粋性を取り戻すこと。そして、個々人が内面に満ち足りた心の開発する必要がある。
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なぜなら人は心が満ち足りている時、自然と創造的になれる
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平和の乱れは個人の精神的なところから始まる
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個人の欲望不満が周囲に不調和をもたらす
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平和なサットヴァ状態が乱れ、ラジャスやタマスに傾く
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世の中はラジャスとタマスへ二極化
Column
平和から見たトリグナ
トリグナとは三つの根本原理(エネルギー)。人も万物も、サットヴァ(純質=照明、創造性など)、ラジャス(激質=衝撃、活動性)、タマス(暗質=抑制、陰覆など)によって構成されている。人間存在にもこの三つのグナの要素が含まれる。サットヴァな人…なすべきこととそうでないことを知る。欲望や執着から離れ、自然法に反することが少ない。
ラジャスな人…なるべきこととそうでないことを不適切に理解する。激情的で貪欲で他者へ害をなす。
タマスな人…すべてのものごとを反対に考える。狡猾、怠惰、悲観的。その結果、サットヴァ的な人は内面がより幸福で、平和をクリエイトするような行為をなす。ラジャス的な人は自己の欲求を満たし、利己的な満足を得るためだけの行為に終始し、周囲の平和を脅かす。平和のためにはまず、自分の中の真我を確立し、精神と肉体をサットヴァで満たす必要がある(バガヴァッドギーター)
Step 3
個人の満ち足りた意識を
開発することが平和への近道
ヨガの八支足を実践すると、個人の心の充足感を取り戻せる。さらには、充足感を維持できる精神的な強さと考え方をヨガで磨き、養うことだ。
肉体面を整え、健康な生命を維持
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肉体が整うと精神面に調和と余裕が生まれる
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個人の心身が整うと人間関係の平和を保てる
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視野が広がり、あらゆるものとの一体感を感じられる
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瞑想の実践でサットヴァを増やし、自分の中の平和を確立
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自然体のままで世界に平和をもたらす存在になれる
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ヨガのシステムは世界に平和をもたらすことも可能!
平和は,心が常に幸福で創造的な時に実現できる。インドのモディ首相は国連で「ヨガは平和な社会を作るための最適な手段」と語った。ヨガによる平和な心は、世界平和のツールなのだ。
Text:Yogini編集部
出典:『Yogini』Vol.47
教えてくれた人
ヴェーダプラカーシャ・トウドウ先生
「ヴェーダセンター」代表。ヨガ瞑想家、ヨガ&哲学講師、アーユルヴェーダ講師。インド政府公認プロフェッショナルヨーガ・インストラクター(AYUSH省QCI認定)。ヴェーダ詠唱家。