「恐怖」を分析して克服しよう
逆転のポーズに取り組む時に、初めは誰しもが感じる「恐怖」。「恐怖」が足かせになって、逆転のポーズが苦手になってしまう人も多い。今回は、その「恐怖」を客観的に分析し、解決策を探ることで、逆転のポーズとの向き合い方のヒントを得よう!
不確定な要素がヨガも人生もおもしろくする
逆転のポーズでの恐怖は、結果に対する恐怖であり、「コントロールできること」と「不確定なこと」のバランスが決め手となる。
不確定な要素が多い時、人は恐れを抱く。サンスクリットで「リラ」という言葉があり、直訳すると「スポーツ、遊び」という意味。スポーツは〝確率〞がかかわっていて、試合が終わるまで結果は確定しない。
ヨガの概念によると、私達の人生は「リラ」。先の見えない人生に不安を感じてしまいがちだが、だからこそ楽しいとも言える。ゲームに夢中になる子ども達は、どんなに優れたゲームでも、攻略した途端に飽きてしまう。
同様に、もし私達が自分のすべてを制御できて、動き出す前に結果がわかっていたら、その人生はつまらないはずだ。「不確定な要素」があるからこそ、新しい出合いがあり、コントロールできないことは決して悪いことではない。
逆転のポーズは他と比べてその「不確定な要素」の多いポーズと言える。倒れるかもしれないという不安や、恐怖がこのポーズへの憧れとなり、挑戦する時のワクワク感や達成した時の喜びに変換される。この喜び、つまり生きている感覚を味わうために、私達はヨガをしていると言えるだろう。
逆転のポーズ克服へ! 意識したい二つのこと
とはいえ、やっぱり逆転のポーズを克服したい! という人は多いはず。そんな人に意識してほしいポイントが二つある。一つ目は「今に集中すること」。
そもそも何に対して恐れているのだろうか? それは「不確定な要素」。つまり「起こる可能性があること」であり、「現実に起きていること」に恐れているわけではない。ただ、これは未来に集中することが悪いと言っているわけではない。
何か悪いことが起こるかもしれないということに集中してしまうと、その恐怖感がどんどん大きくなる。それが、今の自分の力を弱めてしまうため、「今に集中」することが大切なのだ。
倒れてしまうのは「恐怖」のせいではなく、〝今〞行っている行動がおろそかになった結果。ポーズをしている今の筋肉や骨格、そして呼吸を丁寧に観察していれば、成功の確率は必ず上がります。
その「成功の確率を上げること」が二つ目のポイントだ。私達がマットの上で行うポーズの練習は安全な場所で行う、実生活、人生に還元するための訓練だ。だからこそ、ポーズへの取り組み方が大切。
倒立できないからといって、一か八かで足を蹴り上げても失敗することは目に見えている。正しい指導の下、練習していれば、倒れても多少の痛みを伴うだけだが、人生においてはそうはいかない。
一生を台なしにする失敗を免れるためにも、思い通りにならない時にどうすればいいか、マットの上の練習から考え、答えを出すのを諦めてはいけない。逆転のポーズが持つ「リラ」を味わい、たくさん苦労して、ポーズから多くのことを学ぼう。
教えてくれた人=ジョーダン・ブルーム
ヨガ指導歴16年。ラグビーをしていた時のケガがきっかけでヨガを始め、アヌサラヨガを学ぶ。現在は欧州を中心に、クラスやワークショップ、ティーチャートレーニングで指導する。多彩な人生経験とユーモアにあふれた、楽しく熱心な指導に定評がある。