ヨーロッパ諸国では2020年の夏以降、感染予防対策のためフィットネスクラブやヨガスタジオ等における屋内スポーツが禁止され、オランダのヨガ業界は現在完全オンライン化しています。
そこで今回は、コロナ禍におけるオランダのヨガスタジオの創意工夫の様子や、ヨギーたちの今をお届けします。
オランダのデジタル環境は世界トップクラス
私がオランダで生活をしていて感じるのは、あらゆる場面におけるデジタル化が普及していて、シンプルで効率的な社会の仕組みがあるということです。
2020年国連の経済社会局(UNDESA)が国連加盟193カ国を対象に実施した「世界電子政府※1ランキング結果」でもオランダがトップ10入りをしているように、行政における手続きはほぼオンライン上で済ませることが可能ですし、ロックダウンで、学校が閉鎖した後もすぐに、在宅学習の環境が整備されるなど、デジタル環境が実生活に非常に普及している印象があります。
このように、元々デジタル環境が普及しているオランダだからこそ、老若男女問わずロックダウンにより加速したデジタル化にも順応することができ、ヨガスタジオも迅速にオンラインへ移行できていたように感じます。
また、多国籍の人たちが共存しているオランダでは、ヨガスタジオのホームページやクラスが英語、ドイツ語、フランス語、スペイン語等の幅広い言語に対応していることが多く、言語の壁による情報の格差も生まれにくい仕組みになっていると感じます。
ロックダウンの規制ルールに合わせて、その都度ヨガスタジオのルールやクラスの実施形態が変わりますので、コロナ禍におけるホームページの言語対応環境は特にオランダでは大切です。
画面越しでも取り残されないヨガクラス
オンラインヨガクラスにおいては、画面越しだと、人との距離を感じ、対面クラスの満足度は越えられないというような声も多々あるかと思いますが、「人との距離感というのは、物理的にしか測れないか」と言うと、そうでもない気がします。
オランダのヨガインストラクターは、「夫がリモートワークでずっと家にいて、子どもも家で1日中遊び回るから本当にストレスが溜まる。みんなはどう?」など、クラスの冒頭に一言、プライベートのことを話す人が多くいます。
インストラクターとして前に立てど、飾らない人間らしさを出すところが何ともオランダらしいと感じますし、クラスが例えオンラインであっても、「先生と生徒」、「自分と他人」というような区別がなく、物理的な人との距離も超えた、心のつながりを感じることができる気がしています。
ちなみにオランダでは、地位や年齢関係なくお互いを下の名前で呼び合うことがほとんどです。中には「もっと目上の人を敬うべき」という人もいるようですが、あらゆる場面で「対等さ」を大切にするのはオランダらしいと思います。
このようなオランダらしい人付き合いのスタンスがオンラインのヨガクラスにも表れており、満足度を高めているのかもしれません。
スタジオ同士でオンラインクラスの差別化
オランダでロックダウンとなってから、動画配信のプラットフォームをヨガスタジオ独自で作り、サブスクリプション※2制でオンラインクラスを提供する形態が広まっています。
サービス内容は様々で、
- 全てのコンテンツが有料会員制ではなく、一部非会員でも無料視聴可能
- 高画質動画のクラスは有料、無料クラスはIGTVで配信される
- テレビのチャンネルを選ぶように、ヨガ流派ごとにサブスクリプションできる
など、スタジオ側もそれぞれ創意工夫してサービスを運営しています。
ヨギーたちが自分のライフスタイルや予算に合わせてスタジオを選ぶことができます。
YouTube等の無料動画配信サイトでは、膨大な数のヨガ動画が無料で視聴可能ですが、スタジオ独自のプラットフォームがあることで、慣れ親しんだスタジオの好きな先生、お気に入りのクラスがロックダウン中も楽しめますし、これまでと変わらない習慣を自宅でも継続できるので大変助かります。
ステイホームの息抜きにアウトドアヨガ
オランダではロックダウン以前からヨガに限らず、太極拳やピラティス、ボクササイズやブートキャンプトレーニングなど、屋外でインストラクターの指導下にスポーツをする人たちをよく見かけていましたが、ロックダウン規制で屋内スポーツが禁止されてからは、ソーシャルディスタンスを保つことができる、屋外でのアウトドアヨガがより普及しました。
雨の日の対応やプロップスの持ち運びなど、スタジオ側が配慮しなければいけないことは多々ありますが、ヨギーたちの間では「ロックダウンだからこそ、家以外の場で、仲間たちとヨガを楽しみたい」という気持ちが高まっていることは確かで、その需要は高く、スタジオ側も試行錯誤しながらサービスを繰り広げています。
多くのスタジオは町中にあるため、アウトドアヨガを楽しめるスペースが限られていますが、例えば住宅街にあるような小規模な芝であっても、一日中ステイホームをする息苦しさから解放される至福の時間であることには間違いありません。
また、日本だと「オンラインクラス=家の中で受講」というイメージを持ちやすいかもしれませんが、あまり人目を気にしないオランダ人は、オンラインクラス受講の際に、家の近くの公園でマットを広げる人もいれば、家の庭の太陽のもとでクラスを受講する人もいます。
オランダでは、未だヨガスタジオにおける対面レッスンが、いつ通常通りに再開されるのか目処が立たない状況です。
ですが、先が見えない不安やストレスを抱えやすい今だからこそ、ヨガを生活に取り入れる人たちが増えています。
元の生活に戻ってからも、オンラインクラスをあえて選ぶヨギーも増えていきそうな気もしますし、コロナ禍を経て、ヨギーのライフスタイルがさらに多様化していきそうです。
それでは、次回の記事もお楽しみに!最後まで読んでいただき、ありがとうございました。