記事の項目
ヨガはインドで生まれたものですが、インドではヨガの成功を助けてくれる神様がいます。
インド3大神の1人であるシヴァ神は、ヨガや瞑想の神様として知られて、シヴァ神自身も熱心な瞑想の修業を行っています。
今回はヨガの神様であるシヴァ神をご紹介して、その特徴から学べる人生を変えるヒントを説きます。
ヨガの神様シヴァ神とは
シヴァ神は破壊を司る神として有名なので、何やら怖い神様だとイメージされることが多いです。
しかし本来のシヴァという言葉は、“慈悲深い”“吉祥な”という意味を持っており、世界を破壊するだけではなく、病気を治したり、ヨガの修行者を成功に導く慈悲深い側面があります。
シヴァ神は自分に向けて瞑想を実践する人を心から愛し、それらの人を助けると信じられています。
そのためシヴァ神を信仰する人々にとって、シヴァ神は「創造・破壊・再生」の3つをすべて司っていると考えられています。
また、シヴァ神は象の姿の神様ガネーシャの父親です。ガネーシャ神も知恵の神様として、人が幸せに生きるための知恵を授けてくれます。
古代から崇拝されたシヴァ神
シヴァ神はインドでも特に古くから信仰された神様です。
インドには顔の青い神様とペールオレンジの神様がいますが、シヴァ神やクリシュナ神など顔の青い神様はアーリア人侵略前の土着の神様だと言われています。
北西部より来たアーリア人は土着のインド人よりも色が白くペールオレンジで描かれます。土着の神様は黒い肌をしていますが、黒は不吉な色なので絵画では青く描かれます。
シヴァ神の姿を確認できる最も古いものは紀元前2400年ごろのインダス文明の遺跡で見つかったモチーフです。その姿はパドマアーサナ(蓮華座)を組んで瞑想をしているように見えます。
インダス文字は現在でも解明されていないため、その時シヴァ神がどのような名前で呼ばれていたのかは分かりません。
インドで最も古い文献であるリグヴェーダの中では、ルドラ(暴風雨神)と呼ばれていました。嵐は全てを破壊するものなので、その後シヴァ神も恐ろしい破壊の神として認識されています。
しかし、暴風雨は全てを破壊するだけではありません。嵐が去った後の土地は水で満たされて、そこには新しい芽吹きが現れます。そのためシヴァ神は破壊と創造の両方の力があります。
ヨガの神様としてのシヴァ神
シヴァ神は、他のインドの神様と比べてとてもみすぼらしい格好をしています。
シヴァ神を書いた多くの絵画では、ヒマラヤで瞑想をする姿が描かれています。服装はヒョウの毛皮を腰に巻き、沢山のルドラシュカのマーラ(数珠)を首や腕に身に着け、コブラを首に巻き、三又の槍と太鼓を持ち、もつれた長い髪が特徴です。
シヴァ神は別名マハーヨーギー(偉大なヨガ修行者)と呼ばれます。
ヨガ聖典にも書かれたシヴァ神
シヴァ神はハタヨガやタントラを行う人にとって偉大な神様として崇められています。
それはハタヨガ教典の中にも記されています。
ハタヨガの道術を太初に示しもうた祖神シヴァに帰命したてまつる。(ハタヨガ・プラディーピカ1章1節)
伝説によると、ヨガの教えを最初に説いたのはシヴァ神です。
シヴァ神は自身の妻であるシャクティ女神(パールバティ女神の別名)にヨガの知恵を与え、シャクティ女神が人間の聖者にその知恵を説きました。
こうやって与えられたヨガの知恵が師から弟子へと代々伝えられて今でも私たちに受け継がれています。
ヨガでは、教えに従って実践することによって誰でもシヴァ神と同じ状態、つまり物質世界の苦から解放された状態に到達できます。
さて、信心深いものを愛し、すべての生類にそれ自身の解脱を与える、われイーシュヴァラは、ヨーガの教えを解き明かそう。(シヴァ・サンヒター1章2節)
イーシュヴァラはヨガ・スートラにも出てくる「神」という意味の言葉ですが、ここではシヴァ神を意味しています。
シヴァ神は自身のことを信じてひたむきにヨガを実践する人々を愛します。そして、ヨガの実践を行う人には必ず解脱が訪れると説いています。
シヴァ神を表したヨガのポーズ
シヴァ神を表したヨガのポーズの代表的なものはナタラージャ・アーサナ(舞踏神のポーズ)です。ナタラージャはシヴァ神の別名の1つです。
ある時、シヴァ神のことが嫌いな仙人たちがシヴァ神を殺そうと色々画策しました。
仙人たちは獰猛なトラを送りましたが、シヴァ神はトラの皮を剥いで自分の腰に巻いてしまいました。
次に仙人たちは毒蛇を送りましたが、シヴァ神は自分の首に巻いて首飾りにしました。
最後に悪魔を送りましたが、シヴァ神は悪魔を踏んで踊りを始めました。その踊りが素晴らしく魅了され、仙人たちはシヴァ神を絶対的な神だと信仰することにしました。
シヴァ神の踊りはこの宇宙のリズムそのものだと考えられています。シヴァ神が躍る時に世界は滅び、そして再生すると考えられています。
ハタヨガで説かれるシヴァとシャクティのエネルギー
現代の多くのヨガの元になっている古典的なハタヨガでは、シヴァ(男性的エネルギー)とシャクティ(女性的エネルギー)の融合を目指します。
シャクティは人の胴体の底辺部にあるムーラダーラ・チャクラの位置に眠っている潜在能力でクンダリーと同意です。シヴァは頭頂のサハスラーラ・チャクラの意志に座しています。
シャクティは身体の中央を通るスシュムナー気道というエネルギーの通り道を通って頭頂に向かいますが、気道が汚れたり詰まっていたりするとエネルギーが通ることができません。
だからヨガでは、アーサナやプラーナヤーマによって体内の不純性をなくして、エネルギーをコントロールします。
破壊によって自身の人生を切り開くタパス
シヴァ神は破壊の神様なのでとても怖い神様だとイメージする人も多いです。しかし、この世界には創造と破壊の両方が必ず必要です。
もしも自分の人生を変えたいと思っている人がいたら、それができない原因を解消しなくてはいけません。
今までの人生で作り上げた習慣や考え方のクセを変えることはとても難しいことです。しかし、嵐の後の荒野には必ず新しい芽吹きが生まれるように、古い自分を手放すことで新しい1歩が踏み出せます。
ヨガでは変化の障害となる心の中の執着などを手放すために様々な実践を行います。シヴァ神を信仰している人たちは、タパスという苦行を行うことが多いです。
タパスの実践では、自身にとってチャレンジングなことを継続して行いながら、自分への誓いを果たします。
例えば、毎週末の断食であったり、毎日早朝の瞑想など、様々な方法があります。
「早起きをして瞑想をするぞ」と決めても、2日目、3日目になると、早起きが辛くて様々な言い訳が頭の中に生まれます。
「今日だけは深く眠れなかったから明日から」
「昨日は忙しくて疲れたから」
「今日は生理で調子が良くない」
こうやって生まれた心の中の障害に自分の意志の強さで打ち勝っていくことで、自分の心が生み出す幻想に惑わされなくなります。こうやってヨガでは心の中の不純性を取り除いていきます。
¥
シヴァ神自身もとても厳格な苦行者であり、ヒマラヤ山脈の中で禁欲して瞑想を行う姿で知られています。そして、ヨガをひたむきに実践する人には、ヨガの成功を授けます。
私たちの毎日のヨガの練習もシヴァ神が見守っていてくれるかもしれませんね。