ヨガの呼吸いつ吸っていつ吐く?
ヨガの呼吸は「プラーナ(呼吸・生命のエネルギー)・ヤーマ(意識して循環させる)」エネルギーを循環させるためにも、ヨガで呼吸を止めないでほしいというお話を以前しました。
それを踏まえたうえで、実際にはいつ吸っていつ吐くのでしょうか。
ヨガのポーズ、アーサナによって、吸いながらとるものや、吐きながらとるものがあります。その違いについて考えてみたことはあるでしょうか?
例えばキャット&カウは初心者でも取り組みやすく、多くのクラスで実践されていると思いますが、ネコとウシのどちらで息を吸って、どちらで息を吐いているでしょうか。
吸いたくなるポーズ、吐きたくなるポーズ
「息を吸いながらカウポーズ、息を吐きながらキャットポーズ」というリードを聞いたり、実際リードされている方が一般的ではないでしょうか?これには肺の構造が大きく関連しています。
肺は胸郭に包まれた1対の臓器で、肺自体に筋肉はなく、胸郭の動きにより2次的に空気が出たり入ったりする構造になっています。
このため、カウポーズでは胸郭が拡張し、自然と息を吸いたくなる。キャットポーズはその逆で、胸郭が収縮するため自然と息を吐きたくなるのです。
この原理が他のポーズでも同様に当てはまります。
例えば、ウールドゥヴァハスターサナやアップドック、ウシュトラーサナなど、両手を上げたり、胸を開くポーズでは、胸郭が拡張され、息を吸いたくなります。
反対に、ウッターナーサナやパスチモッターナーサナ、パールシュヴォッターナーサナ、アルダマッツェーンドラーサナ等、前屈したり、ひねったりするポーズでは、胸郭が収縮され、息を吐きたくなります。
このように、吸いたくなる動作で息を吸い、吐きたくなる動作で息を吐くというように、動作と呼吸を連携させることで、心地よさが生まれます。
太陽礼拝で得られる爽快感は、こういった点からも納得できますよね。
ヨガに正解はない
今回紹介した呼吸のタイミングは、“肺の構造上自然とそうなりやすい”というだけのもので、ヨガをおこなう上で必ずそうしなければならないというものではありません。
ヨガに100%の正解はありません。呼吸を続け、意識してエネルギーを循環させられていれば、いつ吸っていつ吐いても、それはまた一つのバリエーションになります。
例えばカウポーズのまま数呼吸行うことで、胸郭が収縮している分、吸った空気で背中側の広がりを感じられるかもしれません。
また、太陽礼拝をいつもの呼吸と逆にして行ってみることで、いつもと違う感じ方や、また新たな発見があるかもしれません。
バリエーションを楽しむ
ヨガを始めたてのころは、「吸う」「吐く」どっちかわからなくなったり、またリードをするときにどっちでリードするべきかわからなくなることもあるかと思います。
絶対ではないのですが、肺の構造、呼吸の仕組みを理解し、呼吸しやすいと感じる人が多い方をリードすることで、心地いいクラスを作っていくことができるかもしれません。
呼吸の仕方を変えるだけでも、バリエーションを楽しめるヨガ。心地いいまま動作に合わせて呼吸するもよし、あえて呼吸を逆にしたり、数呼吸キープすることで感じられる変化に意識を向けてみるもよし。
是非ヨガとご自身の呼吸を味わいながら楽しんでみてください。
参考資料
- アン・スワンソン著、プレシ南日子、小川浩一 他訳『サイエンス・オブ・ヨガ』株式会社西東社、2019年
- 中村尚人著『体感して学ぶ ヨガの生理学』株式会社BABジャパン、2017年