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ヨガの練習をしているうちに「もっとヨガについて知りたい!学びたい!」と思った人の多くはヨガの哲学に出会います。
しかし、「そもそも哲学って何?難しそう…」と食わず嫌いをしてしまって学べていない。思い当たる方も多いと思います。
こんなふうに悩んで、なかなかヨガ哲学の初めの1歩が踏み出せない人はとても多いです。
今回は一見難しそうに見えるヨガ哲学について分かりやすく説明します。ヨガ哲学を勉強すると、きっとヨガが100倍楽しくなりますよ。
どうしてヨガ哲学を勉強するの?
ヨガのアーサナ(ポーズ)の練習をしているだけでも沢山の変化を感じることができますよね。
しかし、アーサナの練習で自分が変われたと感じるのは、ヨガのポーズができるようになったからだけではありません。多くの人は先生のイントロダクションを聞きながら、それに従ってポーズをすることで効果が深まるのを感じるのではないでしょうか?
このような、多くのヨガの先生がクラスで声かけてくれるイントロダクションは、伝統的なヨガの教えにのっとっています。
ヨガの練習の後には身体だけではなくて心もスッキリしますよね。心がスッキリすると、いつもはつい不機嫌そうに話してしまう家族にも、ご機嫌に話しかけることができるかもしれません。
自分自身に意識を向ける習慣が得られて、少しずつ食生活や睡眠などを見直す人も多いですし、人間関係が変わる人も沢山います。
どうしてヨガを練習したら自分が変わるのか?それを勉強するのがヨガ哲学です。
ヨガで人生が変わるしくみが分かるようになって、もっと変われるように練習をすれば、自分が心地いい場所を見つけることができます。ヨガ哲学はテストで良い点数を取るための学問ではありません。自分の人生について考えるための知恵です。
ヨガ哲学の1番のテーマは自分を知ること
ヨガの哲学ってスピリチュアルな言葉が出てきたり、宇宙について学んだり、なんだか壁を感じてしまう…と思うかもしれません。ヨガ哲学と言っても沢山の流派があり、様々な理論があり、確かに専門用語を覚えるのも大変です。
だけど基本はとてもシンプル。あらゆるヨガ哲学でもっとも大事なことは「本当の自分を知ること」です。
色々な用語を使って理論を勉強しますが、それは全て私たちが自分自身について深く理解するための考え方のアイディアです。自分自身を知ることができれば、わざわざ難しいヨガ用語を理解する必要はありません。
ヨガの先生がクラス中に言ってくれる言葉を思い出してみましょう。いつも、自分自身に意識を向けるように誘導してくれています。
自分自身の身体、呼吸、心の状態、感覚と、ヨガの練習中は一生懸命自分に向き合っています。では、日常生活ではどうでしょうか?仕事のことを考えていたり、周りの人の言動が気になったりして、自分の声に耳を傾ける時間はほとんどないと思います。
ヨガで見つける本当の自分とは?
ヨガ哲学用語で「本当の自分」のことを「プルシャ(真我)」または「アートマン(個の根源)」と呼びます。カタカナが出てくると一気に難しい感じがしますね。
この本当の自分を、すっごく分かりやすく言うと「魂」のようなものです。
日常で私たちが「これが自分」だと思っている身体や心について考えてみてください。身体も心も、実は四六時中変化し続けている無常なものです。
「私はこういう人間」「私の個性は~」と思っているものは、いつでも変わってしまう可能性があります。
例えば、「私は仕事人間だ」と思い込んでいても、翌日に運命的な出会いをしてしまったら恋をして、一気に仕事どころじゃなくなってしまうかもしれません。
ヨガ哲学では、常に変化しているものに一喜一憂することなく、普遍的な幸せを探します。だから、心さえも本当の自分ではないと説きます。
本当の自分とは、心さえも停止した時に感じることができる自分の内側の静けさです。
ヨガのクラスの最後のシャヴァアーサナ(屍のポーズ)で、ポカーンとした感覚を得たことはありますか?その時、思考も止まっているけれど、なんだか静かで心地良いと感じる人が多いです。
この静けさはいつでも自分自身の内側にありますが、思考が忙しいときや、意識が外の世界に向いていると感じることができません。
ヨガで瞑想をして雑念を止めるのも、内側の静けさを探すためです。本当の自分は、外の世界に惑わされることなく、いつでも幸せを感じられる存在です。
どうやったらわかりやすくヨガ哲学を勉強できる?
ヨガ哲学は、沢山の用語を覚えようとすることで、一気に挫折する方が多いです…。どうやって勉強をして、自身のヨガに活かすか考えてみましょう。
1つだけを一生懸命深める方法
オススメなのは、1つだけ決めて、それを自分の練習に取り入れてみる方法です。その中でもオススメなのがヨガの八支則の中にあるヤマ・ニヤマです。この中で、ピンとくるものを1つだけ選んで、実践してみましょう。
このヤマ・ニヤマ、合計10個の教えがありますが、1つずつがとっても難しい教えです。
例えば、1番最初に習う「アヒムサ(非暴力)」。暴力を振るわないことはとても当たり前の教えに聞こえますが、「何が暴力だっけ?」と真剣に考えると、あれもこれも暴力に思えてきてしまいます。
実は、こうやって一生懸命に考えることが最も大切。自分自身の考え方を知って、それについて客観的に見てみることで、本当の自分について少しずつ学べます。
アヒムサについて深く考察した過去のコラムがあるので参照にしてみてください。他の教えを勉強するにも、同じように考えると、自分自身の哲学が深まります。
広く全体像を理解する方法
まずは全体像を理解したいという方も多いと思います。
そういった場合に、分厚いヨガ哲学の本を買うと、だいたい最後まで読み進められなくて挫折してしまいます。ヨガ雑誌の哲学特集などは、イラストなども添えてざっくりと全体像を教えてくれるのでオススメです。
この連載でもざっくりとヨガ哲学の全体像を紹介した記事があります。
もう少し深く知りたい方には私の Kindle 書籍もオススメです。
人によって文字を読んで理解しやすい人もいれば、先生から聞いた方が理解できるという人もいます。1度、ヨガ哲学の講座を受講してみることもオススメです。先生から話を聞くことで、その後で本を読むにも理解しやすくなります。
ヨガ哲学の古典教典を読んでみたい!
もっと伝統的な深いヨガを知りたい!と思う方には、ヨガの古典教典に挑戦してみるのもオススメです。
もちろん少し(いや、すっごく)難しい…と思うこともあると思いますが、分からないことがあれば、この連載コラムで単語を検索してもらうと多くのヨガ用語を説明した記事が出てくるので、ぜひ参考にしながら挑戦してください。
現代のヨガ哲学で最もポピュラーな古典教典は2つです。
- バガヴァッド・ギーター
- ヨガ・スートラ
バガヴァッド・ギーターはクリシュナという神様が正しい生き方や本当の幸せを得るための方法(ヨガ)について説いてくれています。一方でヨガ・スートラは、心のコントロールの方法について書かれた古代のハウツー本です。
この2つのほかに、現代的なヨガの教典ハタヨガ・プラディーピカもオススメです。ハタヨガは、アーサナ(ポーズ)やプラーナヤーマ(呼吸法)といった身体を使ったヨガの方法を効果について説明してくれるので、より身近に感じやすいです。
もっと気軽に哲学を始めよう
“哲学=難しい”、と考える方は本当に多いです。しかし、哲学は特別なものではありません。哲学とは物事の本質について深く考えることです。
私たちは誰もが「私の人生これでいいのかな」「なんで私は感情をコントロールできないのだろう」と考える瞬間がありますよね。それは、すでに哲学をしている状態です。
しかし、自分自身で答えを見つけることは、とっても難しいことです。だから、どのように考えたら本質を知ることができるのか、物事の見方のヒントを学ぶのがヨガ哲学です。そこには難しい言葉は必要ありません。
ヨガ哲学の用語を1つ覚えたら、必ず自分自身の経験に当てはめてみましょう。そうすることで、ヨガの哲学がもっと身近なものに感じられると思います。