握りあう2つの手

元看護師が伝える!“手当て”のちから-手を当てることで意識が変わる-

手当ての意味

病気や怪我を治療することを“手当て”ということがありますが、“手を当てる”ことにはどんな意味があるのでしょうか。

一説によると痛覚は触覚により軽減できるそうで、痛い場所に手を当てたり、さすったりするのは、効果的で理にかなっているのだとか。

例えば、子どもが痛いと言ったらその場所をまずは触ってあげる。そうすることで痛みが軽減する。これが“手当て”の効果と意味なのかなと私は感じています。

手の持つちから

差し出された両掌
それではもっと詳しく手のちからに目を向けていきましょう。

私たちの身体には、運動神経と感覚神経が存在し、それにより身体を動かしたり、感じたりすることができています。その感度や精度は体の部位によって変わってきます。

2点識別覚実験というものがあります。お箸のように先の細いものを2点、身体に当てた時に、それが2点と感じられる最短距離を計測したもので、背部は40−50mm、手のひらで15−20mm、指先で3−6mm、口唇で2−3mmとなるそうです。

例えば指先を紙で切ると、ものすごく痛いですが、同じ傷が背中にできても、おそらく指先ほど気にならないことは、想像していただきやすいかと思います。運動神経も似たような分布で、感覚が繊細な部分ほど細かい動きが可能になります。

このように、手は感覚も敏感で、動きも細かく、且つ唇より多方面に動かしやすくなっています。

手の持つちからを全身へ

タダアーサナの女性
この手の持つちからをうまく使うことで、全身に影響を与えることができます。

例えばヨガで使うなら、タダーサナ。まずはいつも通りタダーサナの姿勢とって、その感覚を感じます。その後、両手で足の甲を押さえてみましょう。手の熱を足に伝えるようなイメージで足の甲を押さえたりさすったりしてから、もう一度タダーサナの姿勢をとってみましょう。

どうでしょう。先程よりも両足がマットに根付いている感覚が味わえたのではないでしょうか。

このように、触ったりさすったりすることで、そこに意識が向けやすくなります。

伸ばしたい場所や、力を入れたい場所を触ってからポーズにはいることで、普段とは違った感覚を味わうことができるはずです。

ヨガにも生活にも手のちからを

安楽座のアシストをするヨガインストラクター
手軽に活用できる手の持つちから。痛いところに手を当てる等、無意識のうちにしている方も多いと思います。

自分にも、そして人にも“手を当てる”ことで感じられる温かさや、生まれる意識の違いを、ヨガにも生活の中にも取り入れてみてください。

参考資料

  1. 中村尚人著『体感して学ぶ ヨガの生理学』株式会社BABジャパン、2017年
  2. 坂井健雄・河原克雅著『カラー図解 人体の正常構造と機能』日本医事新報社、2012年