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日常の会話の中で「生理的にムリ!」なんて言葉を使ってしまうことはありませんか?
私たちが好き嫌いを決めている時、どうして自分がその対象に対して好意や嫌悪感を抱くのか考えてみましょう。
自分が好きなもの、嫌いなもの、その概念が強すぎると人生の可能性を狭めてしまっているかもしれません。
嫌いの感情は記憶の貯蔵庫サンスカーラによって作られる
好き嫌いをヨガ・スートラに出てくる言葉でラーガとドヴェーシャと呼びます。
- ラーガ:渇望を呼ぶ快楽。愛着。
- ドヴェーシャ:苦痛の記憶に対する反発の感情。
この2つはどちらも苦悩を生むクレーシャ(煩悩)だと考えられています。
実は好きの感情も苦しみを生む
好きという感情はポジティブなものに思われますが、強くなりすぎると危険です。
「これがあるから幸せ~」という思いは、次第に「これがないと幸せじゃない」に代わってしまいます。
例えば、朝ヨガの気持ちよさを一度味わって、やみつきになって毎朝欠かさず練習するようになるとします。それ自体はとても良いことですね。
しかしヨガで生活が変わったからと、ヨガに依存することも危険です。時には家族が熱を出して看病をしていて、練習ができない時もあります。その時に「あなたのせいでヨガが出来なかった」とネガティブになってしまってはいけませんね。
世の中の依存症はラーガによって起こります。1度経験して快感を感じると、もっともっと望むようになります。それが大きくなりすぎると、アルコール依存症、買い物依存症、スマートフォン依存症、ダイエット依存症など様々な依存に繋がります。
今までは安くても可愛いバッグがあれば嬉しかったのに、気が付いたら高級ブランドのバッグがないと不安に感じてしまうようになれば、常にお金を稼ぎ続けなくてはいけなくて大変です。
「これが好き」は楽しみの感情ですが「これじゃないとダメ」に変わらないように気をつけましょう。
嫌いも過去の記憶による思い込み
何かを見た時に不快感を抱いてしまうのはなぜでしょうか?
ヨガ・スートラによると嫌悪感は過去の苦痛の記憶に対する反発だと書かれています。
例えば同じ犬を見ても可愛いと思う人もいれば、怖いと思う人もいます。犬を見て怖いと思う人は、とても小さい時に自分よりも大きな犬が急に現れたり、吠えられたりして怖いという印象が残ってしまったのかもしれません。
嫌いと思うきっかけになった経験を覚えている場合もあれば、何が原因か分からない場合もあります。
例えば、多くの人は死ぬことを怖いと感じます。特に小さい時の方が死に対しての恐怖が大きいですよね。
人はまだ死んだことがないのに、自然に死を恐れるのはどうしてでしょうか?インドでは、それは前世の記憶が残っているからだと考えます。死ぬ時の痛みや別れの悲しさなどが記憶として残っているから、潜在的にそれを恐れてしまいます。
このように、私たちが嫌いという感情を抱くのは様々な過去の原因がありますが、全ての原因を見つけることができるわけではありません。前世の記憶が...と言われたら、前世が読めるスピリチュアルな聖者を探さないと自分では分からないですね。
しかし、大切なのは今からの未来なので、過去については必至で原因探しをしなくても大丈夫です。
好き嫌いを弱めると楽に生きられる
自分の人生がどうして苦しいのかについて考えてみましょう。
- 太っているのに痩せないのがつらい
- 会社の上司が嫌いなのに毎日会わないといけないのがつらい
- お金が無くて欲しいものが買えないのがつらい
- 自由がないのがつらい
- 子供が反抗的でつらい
これらは自分自身の好き嫌いによって作られています。
例えば、太っていることが苦しみになるのはどうしてでしょうか?
もちろん、あまりに太りすぎて病気になってしまっているのならば問題です。生活習慣を見直した方がいいでしょう。しかし、日本人女性の多くは海外に比べて華奢である方がいいと信じている傾向が強く、必要以上に痩せたいと望みがちです。
人にはそれぞれにちょうどいいバランスがあります。ある人にとっては少しぽっちゃりしている方が健康だし、ある人はダイエットなんて気を付けなくても自然と痩せています。しかし、世の中の多くの人が同じように痩せている方が良いと感じるのは、子供の時から社会の価値観を目にして耳にしてきたからです。
実際には日本にいて、ぽっちゃりでも幸せな人もいるし、沢山の異性から愛される人も沢山います。しかし、「太りたくない」という思いが強い人ほど、自分の脂肪が許せないだけではなく、他人の体型に対しても意識が向いてしまいます。自然と痩せている人がいれば羨ましいと思うし、努力で痩せた人に会えば負けた気がし、太っていても気にしていない人がいれば嫌悪感を抱きます。
自分が太らないために様々な努力や我慢をしていたのに、他者が太っていることを気にせずに好きなものを食べていれば、それを悪だと勝手に思ってしまいます。
痩せた方が人生楽しいだろうなと思えば努力して痩せることも自由です。しかし、それよりも好きなものを食べたいと思ったら、多少友達よりもぽっちゃりしていても食事を楽しむのも自由です。
わざわざ「これは良い」「これは悪い」とジャッジすることなく、1番心地いいと感じられる自分のバランスを見つけましょう。太ることに対する嫌悪感を手放すだけで、自分自身に対しても自由を許すことができますし、他者と衝突することも減ってきます。
自身の考えを変えることで、今まで似た考えを持っていた人と価値観が合わなくなってしまうこともあります。
しかし、怖がる必要はありません。自身の心が自由になったことで、新しく似た考え方の人が周りに集まってきます。もしくは、周りの人も気が付くと変わっていることもあります。
子供が反抗的など、自分ではどうにもできなさそうなことも、自分の好き嫌いに関係している場合があります。それは「子供はこうあるべきだ」「この子の将来の安定のためには」と、自分が考える理想を抱き、自分の好きの型に子供を当てはめてしまうからです。
当然、親として必要なしつけもあります。しかし、バランスを失うと良くないですね。
子育てや人間関係は自分の思った通りにいかないことも多々あります。しかし、相手にとっては私も思った通りにいかない存在であることを認識しましょう。
人間関係のあり方は人それぞれです。自分の中の理想や一般的なかたちと違っても、良い悪いとジャッジしないようにしましょう。
ヨガによってサンスカーラを弱めることができる
抱いてしまった嫌悪感を消すには、サンスカーラを弱める必要があります。サンスカーラとは、過去の経験によって蓄えてきた潜在的な印象です。
すでに意識が向いてしまったものに「私の内側の消えろ!」と努力してみても、消えません。それではますます意識が向いてしまいます。
ヨガでは、サンスカーラを消すためには真の知恵が必要と説きます。
真実の知恵から生じるサンスカーラは、他のサンスカーラを除去する。
(ヨガ・スートラ1章50節)
真実の知恵とは、自分の深い内側(本当の自分)への意識を意味しています。
ヨガを実践して、自分の内側との対話を続けましょう。自然と、自分の中で凝り固まっていた好き嫌いの概念が弱まっていきます。
自身の内側に意識を向けると、穏やかな幸せを感じることができます。そういった本当の幸せを知ることができれば、物質的なこだわりがどうでも良いものになってきます。
「こうでなくてはいけない」というこだわりが弱まれば、条件に左右されない自由が訪れてきます。