記事の項目
古典的なハタヨガでは、チャクラという身体の中にある7つのエネルギーポイントを活性化させることによって、人間が本来持っている潜在能力を発揮させます。
各チャクラにはそれぞれのエネルギーの特徴があり、人の心の働きにも関係してきます。
ハタヨガの古典教典『ゴーラクシャ・シャタカ』では各チャクラへの瞑想について説かれています。自身の本来の能力を発揮するためのチャクラについてみていきましょう。
7つのチャクラはエネルギーの集まるポイント
チャクラは「車輪」や「円盤」の意味があります。
ヨガの理論では、体の背骨上に7つのチャクラと呼ばれるポイントがあり、エネルギーが流れることによってチャクラが回転しながら活力を生み出しているとされます。
チャクラはスピリチュアルなエネルギー的なものなので、目で見ることはできません。しかし、各チャクラが位置する場所に意識を向け、チャクラのマントラを唱えることによって感じることができます。
7つのチャクラにはそれぞれの役割があり、その部分に意識を向けてエネルギーを活性化することによって、自身の持っている潜在的なエネルギーを充分に発揮することができます。
古典教典に書かれたチャクラ瞑想
ハタヨガの実践的な教典としてポピュラーなものはハタヨガ・プラディーピカとゲランダ・サンヒターですが、この2つの教典の中ではチャクラに対する記述がとても少ないです。
チャクラへ瞑想については、ハタヨガの開祖と呼ばれるゴーラクシャが書いたとされる『ゴーラクシャ・シャタカ』の中でより詳細に書かれています。
『ゴーラクシャ・シャタカ』は11世紀ごろに書かれたとても古い教典ですが、現代でも実践されているチャクラ瞑想はすでにこの時代からあったことが分かります。
それぞれのチャクラについてみていきましょう。
最も根底にあるアーダーラ・チャクラへの瞑想
1番目のチャクラは、胴体の根底部分にあるアーダーラ・チャクラです。
チャクラについて学んでいる人はムーラダーラ・チャクラという言葉で馴染みが深いかもしれません。ムーラは「根」を意味し、アーダーラは「支える」という意味です。
『ゴーラクシャ・シャタカ』の中ではアーダーラ・チャクラという名前で呼ばれています。
アーダーラは1番目のチャクラであり、熟した黄金色である。鼻先に視線を集めて瞑想することで、罪悪から解放される。(ゴーラクシャ・シャタカ78節)
『ゴーラクシャ・シャタカ』によると、アーダーラ・チャクラは骨盤底筋に位置し、黄金色をしているとされます。
この根底のチャクラに対して瞑想することによって、ヨガ実践者は罪の意識から解放されます。罪とは、すでに行ってしまった過去の行為です。
人は過去の行為の積み重ねで人生を作り上げていきますが、過去への執着は今からの人生を変えるヨガの実践では障害になってしまいます。過去への執着を手放すことは、ヨガにとってとても大切なことです。
生命の源であるスヴァディシュターナ・チャクラへの瞑想
2番目のチャクラはスヴァディシュターナ・チャクラです。
『ゴーラクシャ・シャタカ』によるとスヴァという言葉はプラーナ(気・生命エネルギー)を意味します。そして、このチャクラは生命力の源であると考えられています。
スヴァディシュターナ・チャクラは生殖器に位置すると言われ、次の生命を宿すための場所であり、命の根源だとされます。
エネルギー循環の源であるマニプーラ・チャクラへの瞑想
3番目のチャクラはマニプーラ・チャクラであり、おへその下に位置します。
マニプーラ・チャクラのある場所をカンダと呼びますが、その場所は体内に72,000あるというナーディ(プラーナの通り道)の出発点です。つまり、身体や心を動かすためにエネルギーは、全てこの位置から流れており、生命活動のためのとても大切なチャクラです。
3番目は昇る太陽のようなマニプーラというチャクラ。鼻先に視線を集中して瞑想することで、世界を揺るがすことができる。(ゴーラクシャ・シャタカ80節)
このマニプーラ・チャクラの位置には体内の火があると考えられています。アーユルヴェーダでも消化の火が宿る場所として知られています。
すべてのエネルギーの源であるマニプーラ・チャクラに向けて瞑想をすることによって、世界を揺るがすほどの大きな力を得ることができると考えられます。
アナーハタ・チャクラへの瞑想で普遍的な存在と一体になる
4つ目のチャクラは胸の位置にあるアナーハタ・チャクラです。(『ゴーラクシャ・シャタカ』ではアナーハタ・チャクラという名前はでてきませんが、「心臓に位置するチャクラ」と表現されており、一般的に心臓の位置にあると言われるアナーハタ・チャクラと同意だと考えられています。)
胸の位置にあるチャクラは、プラーナーヤーマ(調気法)の実践によって活性化することができます。
プラーナーヤーマの実践によって、ナーディ(プラーナの通る道)の中の不純性を取り除くことができます。体内の不純性が取り除くことによって、プラーナの流れを阻害していたものがなくなり、私たちの本来持っている潜在的な能力を発揮することができます。
不純物で霞んで見えなくなってしまっていた世界の本質にも気が付くことができます。
そして、チャクラを呼び覚ました状態で意識を集中して瞑想することによって普遍的な世界の原理であるブラフマンと1つになることができると説かれます。
生命力の源アムリタの源泉、ヴィシュダ・チャクラへの瞑想
5つ目のチャクラはヴィシュダ・チャクラで、喉元にあります。
命のエッセンスであるアムリタは、このヴィシュダ・チャクラの位置から落ちていき、マニプーラ・チャクラの位置の炎で燃え、生命の活力となります。
私たち人間の寿命はこのアムリタの残量で決まります。
アムリタは喉元から下に落ち、お腹の位置で燃やされますが、このアムリタがなくなった時に人は寿命を終えます。そのため、ハタヨガではシルシアーサナ(頭倒立)など逆転のポーズを行うことによって、アムリタが下に落ちるのを物理的に阻止し、永遠の命を手にしようとします。
この5つ目のチャクラへの瞑想によっても、アナーハタ・チャクラと同様にブラフマンと一体になることができます。
眉間に光り輝くアージニャー・チャクラへの瞑想
輝く真珠のような神聖な場所が眉間の中心にある。鼻先に視線を集中してその位置に瞑想することで、人は完全に祝福された存在になる。(ゴーラクシャ・シャタカで84節)
6つ目のチャクラの位置は、シヴァ神の第3の目の位置としても知られています。
このチャクラが活性化することによって、人は真実を見て知ることができます。それは、目に見える物質的な世界とは違う、霊的な宇宙の真実です。それを知ることによって、物質世界での苦しみから解放され、本当の至福とは何かを知ることができます。
真の叡智を得たヨガ実践者は祝福された存在であり、もう苦しめられることはありません。
アージニャーとサハスラーラ2つのチャクラへの瞑想
アージニャー・チャクラよりさらに上の、頭頂にサハスラーラと呼ばれる7つ目のチャクラがあります。
サハスラーラ・チャクラはシヴァ神の座として知られます。その場所は、純粋な空間のように光輝いています。
その位置は、人の本質であるアートマン(この根源)そのものです。真の自己であるアートマンを理解することによって、人は完全に苦しみから解放されることができます。
あらゆるヨガでは、真の叡智を得ることを目的としています。真の知とは、自身の本質であるアートマンを知ることです。
チャクラを意識して深いヨガを感じてみましょう
今回はとても古い『ゴーラクシャ・シャタカ』と呼ばれる教典の中で説かれたチャクラの瞑想についてご説明しました。
チャクラは目に見えるものではありません。実際に瞑想などのヨガを実践することで初めて感じることができるものであり、教典や先生によって位置や色などの違いがあります。
実際にチャクラを感じた先生から学ぶことでしか理解することは難しいのですが、チャクラを知ることができると自分の内側のエネルギーについて深く知ることができます。
アーサナなどでもチャクラを刺激することができますし、プラーナーヤーマの実践で不純性を取り除くことでも感じやすくなります。ぜひ、チャクラを意識して深いヨガを体験してみてください。