体と心のつながり、自然とのつながり、人とのつながり……。つながりという言葉を聞いて連想するものは、たくさんあります。
ご存知のとおりヨガも“つなぐ”という意味をもつユジュ(Yuj)という言葉が語源です。では一体ヨガによって何とつながるのか。長年ヨガを学び、実践し、そして人にヨガやアーユルヴェーダの叡智を教え、伝えるという役割を担ってきたなかで、ようやくその本質が見えてきました。
それは言葉以上に深い感動をともなう体験です。つながりは知識ではなく体感をとおして見えてくるものだったのです。
この“つながり”について、今回から3回にわたってお届けしたいと思います。
知識ではなく実践の積み重ねの先に、つながりの体験がある
兼ねてから“つながり”について取り上げたいと考えていたのですが、その想いをさらに強くしてくれたのが、私のティーチャートレーニング(TT)のコースを受講くださった、ある生徒さんからの心のこもった手紙です。
彼女は、想像を超えてTTでの学びを全身で受け取ってくれました。クラスの空間、非言語の領域からも、ヨガやアーユルヴェーダの叡智をしっかりとキャッチしてくれたのが伝わってきます。
受け取る、というのは行動すること。そこから得た気づきというのは、ただ知識として身につけた学びとは大きく異なり、言葉以上の深さを受け手側にも感じさせるものです。
学びを受け取り、行動し、本当の自分に目醒めはじめた受講生の声
彼女はTTでの学びを実践し、着実に積み重ねてきたことで、宇宙の真理への気づきを深め、そして本来の感性がひらき、より輝きはじめました。そのことがよく伝わってくる手紙の一部を紹介します。
不調の根本原因は、サイクルとリズムであるということ。この深い教えの真の意味を知り、本来のリズムを取り戻すまで時間がかかりました。長年音楽を学んでいながら、自分の内なる声を無視し、宇宙の音楽を聞いていなかったのです。(TTを受講して)一番変わったことは、いまに耳を澄まし、よく聞くようになったことかもしれません。
ヨガは中道を教えてくれます。すべてにおいてバランスが取れていること、自分自身の内側のバランスが取れていること。外側の世界、自然、宇宙、神々とのバランスが取れていること。どこにも否定がなく、すべてにYESであること。バランスが崩れはじめたときに気づき、ケアをすること。時にあえて大きく崩して、戻る力を戻すこと。宇宙にも惑星にも私にも、遠心力と求心力が働いているのだ、と。
ヨガはダンスのようであり、まったくあたらしいダンスを踊りはじめた気分です。
遠心力と求心力が働く、宇宙の真理につながる
受講生の手紙にも記されていた遠心力と求心力。それは収縮と拡張を繰り返す万物の根本原理である波動の性質、すなわち宇宙の法則といえます。サンスクリット語では、この波動の性質のことをスパンダ(Spanda)といいます。
地球を例にとって考えてみると、地球には重力が働いており、これによって引力が生まれ、私たちは宇宙に放り出されることなく、地上で生活を送ることが可能になります。この引っ張る、引き止める力が求心力です。
一方、上に伸びようとする力、たとえば植物は重力によって地中奥深くへと根を張りますが、太陽に向かってぐんぐん成長をしていきます。この重力に対する力が遠心力です。
また意識を大別すると潜在意識があって顕在意識があります。この内、表層的な外側の意識である健在意識へフォーカスするのは遠心力によるもの。対してより深い、潜在意識にアクセスしようとする力は求心力といえるでしょう。
求心力と遠心力が万物に働き、その中で生命活動は繰り返されていることを知ることは、宇宙との“つながり”、つまり自分の本質との“つながり”を取り戻し、強化することになります。
そして相反するものが同時に存在することを正しく理解したうえで(受け入れたうえで)、そのどちらか一方に偏るのではなくその中心にいることが中道であり、ヨガの道です。つまり、求心力と遠心力に争うことなく、その中心に意識を、心を、体を繋ぎ止めておくということがヨガの道であり、調和のとれた自分とのつながりを取り戻す最初のステップなのです。
行動するということは、この真実をいつも心にとめ、どんなときでもこの視点に立てているのか、自分自身に絶えず耳を澄ませること。そうした視点を育むために、あらゆる習慣を見直し、自らをクリアにするべくヨガや瞑想、アーユルヴェーダなどを実践することです。
これを日常の中で着実に、確実に、淡々と積み重ねた先に言葉や知識を超えた圧倒的な理解と感動が広がっているのです。そこから、さらに深く深く、自分とつながることで、あらゆるものとのつながりが豊かに拡張していくのだと、日々実感しています。