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カルマとは行為を意味します。
仏教やヨガなど、インド発祥の多くの哲学では世界はカルマによって作られていると信じられています。
ほとんどの人は自分自身の経験からも学ぶことができます。良いことをしたら良い結果が得られて、ズルをしたり人を苦しめたりするような悪い行いは悪い結果が返ってきます。
このカルマとは物質だけでなく、思考によっても生み出されます。
考え方を変えるだけでも人生は変わるし、逆に悪い方向に行ってしまう場合もあります。
心が世界を作るしくみ
頑張っているのに結果が得られない…なんて思っている人がいれば、もしかしたら心が原因かもしれません。
一般的に、心が原因で未来が変わるのは、心によって行動も変わってしまうからです。
アメリカの心理学者であるウィリアム・ジェイムズの名言と言われる有名です。
心が変われば行動が変わる。
行動が変われば習慣が変わる。
習慣が変われば人格が変わる。
人格が変われば運命が変わる。
まずは心を変えること。それが行動を起こすための第1歩ですね。
「早起きは三文の徳」と教わったとしても、その知識に対して賛同する心がなければ知識で終わってしまいます。やってみたいと感情が動いて、初めて行動が生まれます。
1度の行動では1回分の発見しか得ることができません。それでも貴重な経験になるかもしれませんが、やはり人生を変えるためには習慣化することが大切です。
繰り返し途切れなく行う実践をヨガではアビヤーサと呼びます。続けることによって、堅固な土台が初めて出来上がります。
習慣というものは、その人のパーソナリティーそのものです。
「早起きをする」というルールだけを決めて、それが習慣化するまで実践することができれば、それだけで大きな変化があります。
朝の最も思考が活発な時間を有意義に過ごすことができれば、今よりも仕事ができるようになるかもしれません。夜、お酒を飲みながらの馴れ合いの人間関係は途絶えてしまうでしょう。しかしその分の時間を有効に使うことができます。規則正しい生活は、健康にも良い効果があります。
このように、毎日の生活の習慣が変わってくれば、それが人生を作り上げていきます。きっと、人生が180度変わるような変化も起こすことができます。
人生が変わるきっかけは何でしょうか?
いつも大きな変化は、心が動かされることで生まれます。
思っただけでも世界を変えてしまう心のカルマ
さて、もう少し哲学的にみてみましょう。
ヨガ哲学では、思考そのものが人生を変えると考えます。
3つの性質によって作られる世界
ヨガ哲学では、世界をプルシャ(真我)とプラクリティ(物質の根本原理)の2つに分けます。
プルシャは生命の根源ですが、それは魂のようなもので姿かたりがなく、どのような性質や個性も持ち合わせません。私たちの本質である魂には色もかたちもありません。
では、人間として生きている私たちが認識している自分自身や世界が何なのかというと、プラクリティと呼ばれる物質の根本原理が変化して作られたものです。
このプラクリティは、3つの性質を含んだ元素のようなものです。
- サットヴァ(純正):純粋で明るく、軽く、光を通しやすい性質。幸福を感じやすい。
- ラジャス(激質):激しさ、動きに関わる性質。怒りや欲望。
- タマス(鈍質):濁った、暗い、重たい性質。怠慢さや睡眠。無知。
この3つの性質の組み合わせによって全ての世界が作られています。
例えばキャンドルについて考えると、ロウでできたキャンドルそのものはタマス。しかし、キャンドルが燃えているときの炎はラジャス。炎によって生まれた光はサットヴァです。
人間の心や感情も3つの性質で状態が決まります。
例えば、赤ちゃんを見て幸せに感じているときは純粋な愛というサットヴァ性が優勢になっています。
その時急に義理の両親が来て、赤ちゃんを好き勝手に扱っていたら何をされるか分からなくて怒りの感情が生まれてきてしまいます。それはラジャス性です。
やっと義理の両親が帰ってくれて、夫が帰ってくるまでに手料理を作らなくちゃいけないのに、疲労でグッタリしてしまったらタマス性が上がっています。
このように、人の感情も3つの性質全てを含んでいて、その中のどれが優勢になるかによって性格が変わります。
人よりもラジャスが優勢になりやすい人は、貪欲な野心家や、怒りっぽい人。怠慢な人はタマス性が優勢になりやすい人。サットヴァ性が優勢な人は、いつも朗らかで明るい性格の人です。
心の性質と物質の性質は繋がっている
では、どうして心のカルマが人生を変えてしまうのでしょうか?
世界を作る3つの性質は、心も体も、周りの物質世界も全てを作る原料です。
そのため、心の状態が極端にどれかの性質に偏っていれば、物質世界もその影響を受けますし、その反対も考えられます。周りの状態によって心の状態も影響を受けます。
例えば、美しい場所、自然の中にいるときには心が軽やかで幸せな気持ちになります。
心のカルマ(行為)、つまり思考が変わることによって1番最初に影響を受けるのは自分自身の身体です。体は常に心と一緒に存在しているので、真っ先に結果が現れます。
例えば、恐怖心という強いラジャス性の心の働きが現れたら、身体にどのような影響がありますか?
『バガヴァッド・ギーター』の第1章で主人公のアルジュナは、恐れる気持ちが強くなり過ぎたことで口が乾き、身体が震えて、鳥肌が立つといった状態になりました。人によっては、発疹が出たり、便秘になることもあります。
恐怖心を抱き続けるという心のカルマを長い期間生み出し続けたら、深刻な病気に繋がってしまうこともあります。
タマスが上がるとどうなるのでしょうか?
分かりやすいことで考えると、部屋が汚くなったり、仕事が停滞して成果をあげられなくなったりします。
どんよりとした空気を感じて、周りの人もあまり居心地がよくないですね。そうすると同じような人が集まって、いっそうタマス性が上がる生活に変化し、飲酒などに依存することも起こり得ます。
いつも心の中で「めんどくさい」「やりたくないけど仕方ないから」と嫌々仕事を行っていると、何となく不満な状態から抜け出しにくくなります。
「嫌だと思っても、ちゃんと行動はしている」と思っても、身体的なカルマに勝ってしまうくらい心のカルマはパワフルです。
ヨガでは心をコントロールすることで人生を変える
カルマ(行為)とは、種まきです。
その種が良いものであれば美味しい果実がなり、腐った種であれば美味しい果実を得ることができません。途中で根から腐ってしまうかもしれません。
ヨガを行うと、未来の花を咲かせる種、心をサットヴァ性に近づけることができます。
サットヴァ性の心のカルマによって得られる結果はサットヴァ性であり、つまり幸福と結びつきやすいものです。
例えば、アヒムサ(非暴力)というヨガの実践について考えてみましょう。
インド独立の父と呼ばれるマハトマ・ガンディによると、アヒムサとは、「実際に身体的な暴力を行うかよりも、行動するときに暴力性の思考があるか」が重要だと説きます。
自分の心をコントロールするのは大変です。だからこそ、ヨガの実践によって心に余裕を作って、自分が快適でいられる心の状態を築き上げます。
心が変われば、必ず人生は変わります。