ヨガの教典を読もう!スヴァディヤーヤ(読誦)の実践と読むべき教典

現代ではフィジカルでスタイリッシュなイメージの強いヨガも、起源をたどると何千年も前から続く古代インドの知恵が源流です。

現代を生きる私たちも、ヨガの古典教典を読むことによって当時から伝わる伝統的なヨガを知ることができます。

ヨガの経典を読むことは、スヴァディヤーヤ(読誦)と呼ばれ、ヨガの実践の1つでもあります。

スヴァディヤーヤで、もっと深いヨガを知りましょう。

繰り返し学ぶスヴァディヤーヤの実践で神と一体になれる

ヨガマットの上で読書するヨギーニ
スヴァディヤーヤ(読誦)の実践については、様々な教典の中で説かれています。

1番有名なものは『ヨガ・スートラ』です。八支則の中の5つあるニヤマ(内制)の1つとして説かれています。

スヴァディヤーヤは一般的に「聖典の学習」や「自己学習」を意味していると考えられています。

伝統的にヨガは、師から弟子へと直接口頭で伝えられるものでした。そのため、ヨガ派の経典はヨガ・スートラ以前の時代にはほとんど記されていません。

また、インドで最も有名な『バガヴァッド・ギーター』という教典も、発祥の段階では口頭で伝承されていました。伝承者は、インド国内を旅しながら口頭でギーターを人々に語り聞かせて教えを広めました。

このように、インドで現在教典と呼ばれているようなものは、本来書籍として神に書かれたものではなく、口頭で伝えられてきた教えを後から文字に起こしたものだと考えられています。そのため、教えを学ぶためには繰り返し勉強し、暗記することが重要でした。

スヴァディヤーヤは「教典を読むこと」と認識されることが多いので、一般的な読書のイメージが強いかもしれません。

しかし、ヨガの実践として行うためには、何度も何度も繰り返し読むことがとても大切です。

深い学びは神と一体になれる

ヨガ・スートラではスヴァディヤーヤの効果について説かれています。

スヴァディヤーヤによって個人の神との融合が叶う(ヨガ・スートラ2章44節)

神聖な知識に深く触れることは、その教典が説く神聖な魂と繋がることができます。

しかし、そのためには継続した学びが必要です。繰り返し教典に書かれた言葉を読み、それについて深く考えることによって、私たちの心の中は神聖な知恵で満たされます。

スヴァディヤーヤは、ヨガ・スートラの中でニヤマ(内制)だけではなくて、クリヤヨガの1つとしても説かれています。

クリヤヨガとは、ヨガを学ぶ人が日常的に実践するべき行いです。

ヨガ・スートラやバガヴァッド・ギーターは、それほど長い教典ではありません。どちらも、本文だけであれば数時間で読めてしまいます。

しかし、ヨガの偉大な教えをギュッと凝縮したエッセンスのような教典なので、1つずつの言葉が意味する教えがとても深いです。

何度も繰り返し読み、自分自身の実践によって実感していくことで、どんどん新しい発見があります。

クリヤヨガ(行動のヨガ)とは?ヨガ実践者が日常生活で行うべき実践

スヴァディヤーヤで学ぶべきおススメの教典

さて、ヨガについて深めるためにはどのような教典を読んだらいいのでしょうか?

現代のヨガに大きな影響を与えた教典をご紹介します。

ハードカバーのバガバッド・ギーター

バガヴァッド・ギーター(神の詩)

バガヴァッド・ギーターは、ヨガを学んでいる人の教典というだけではなく、ヒンドゥー教の教典としても知られており、ヨガの思想の土台を理解したい人、ヨガの考え方を人生に活かしたい人にとっては必読の教典です。

バガヴァッド・ギーターは、『マハーバーラタ』という巨大な叙事詩の一部分の抜粋です。

主人公のアルジュナというクル族の王子が、戦争で敵軍を目の前にして嘆く場面で始まります。敵軍には自身の親族や友人がいたので、戦って殺すことよりも自身の死の方が良いと考えます。

助言を求めるアルジュナに向かって、クリシュナ神は自身に与えられた義務を遂行することの大切さを説きます。そしてアルジュナは戦う決心を固めます。

このクリシュナの説いた教えを聞いていたサンジャヤが、アルジュナとクリシュナ神の間で話された内容を後に回想しながら話すのがバガヴァッド・ギーターの場面です。

クリシュナ神は、人にはそれぞれの役割があり、その役割を遂行することが大切だと説きます。

バガヴァッド・ギーターの中には、カルマ・ヨガ(行為のヨガ)、ギャーナ・ヨガ(知識のヨガ)、バクティ・ヨガ(信愛のヨガ)、ラージャ・ヨガ(瞑想のヨガ)など、複数のヨガについて説かれ、誰もが自分に必要な道を見つけられるようになっています。

人生に役に立つ、ギーターの言葉7選

ヨガ・スートラ

ヨガ派の教典として最も有名なヨガ・スートラは、現代のヨガにも受け継がれている八支則(アシュタンガヨガ)というヨガの体系を確立しました。

現代多くのヨガスタジオで実践されているアーサナ(ポーズを行う練習)は、八支則の中の3番目の練習です。

ヨガ・スートラでは「ヨガとは心の作用を止滅すること」だと定義しています。

そのため、ヨガの実践も心のコントロールに重きをおいて、「私たちの心とは何なのか」「自分の心や感情を克服するためにはどうするべきなのか」を、とても論理的に説いています。

ヨガを身体的な健康だけではなくて、もっと精神的な練習として深めたい人には必須の教典です!

10分でわかる!わかりやすいヨガ・スートラ

ハタヨガの教典(ハタヨガ・プラディーピカなど)

もっと実践的なヨガについて知りたい人は、ハタヨガ系の教典を読んでみるのがお勧めです。

ハタヨガは現在行われている体を使ったヨガの源泉となるヨガです。自分自身が練習しているヨガについて、もっと深く知りたい人、具体的なヨガの練習方法と効果を知りたい人に最適です。

ハタヨガの教典には有名なものが複数あります。古いものだと、ハタヨガの開祖と言われるゴーラクシャ・ナータの書いた『ゴーラクシャ・シャタカ』。身体の内側でエネルギーをコントロールしているチャクラに向けた瞑想なども説かれています。

現在でもポピュラーな実践書には、『ハタヨガ・プラディーピカ』や『ゲーランダ・サンヒター』があります。これらの教典ではアーサナ(ポーズ)・プラーナーヤーマ(調気法)・ムドラー(印)・ラージャヨガ(瞑想)という実践を推奨します。

教典をパッと理解〜ハタヨガ・プラディーピカ編〜

音を通して学ぶマントラ

マントラ(真言)を継続して唱えることもスヴァディヤーヤの実践の1つだと考えられています。

ヨガのマントラはサンスクリット語という神の言葉で、音それ自体に強いエネルギーがあります。

マントラを唱えることによって、音の持っている清浄な波動が身体や心を包み込みます。その音と心を繋いでいくことによって、自分の心の中も不浄さが消え、純粋さで満たされます。

マントラを繰り返し唱えることをジャパと呼びます。

自分の心がマントラの音で満たされるまで、ジャパを行うことで大きな効果を感じることができます。

「オーム・シャンティ」マントラを3回唱えるのはなぜ?

スヴァディヤーヤの実践で古代のヨガの聖者たちを感じられる

老人の手とその後ろにぼんやりと映る老人の顔
ヨガの教典は、ただの理論書ではありません。実際にヨガを実践して、体験して、それを記してくれた過去の聖者の言葉です。

様々なヨガの教典がありますが、じっくりと繰り返して読んでいると、その教えをくれた古代のグル(師)の人柄が伝わってきます。

例えば、バガヴァッド・ギーターであれば、世界をとても大きな視野で見渡し、立場や信仰に囚われないで全ての人に幸せに生きて欲しいというクリシュナの愛が込められています。

それに対して、ヨガ・スートラを編纂したパタンジャリは曖昧さを避けた律儀な性格でしょう。論理的に心の仕組みを説明して、教典に従って実践すれば必ず誰でも恩恵を受けられるように明快なヨガのシステムを説いてくれています。

教えを残してくれた聖者の想いを直接的に感じることができるのもスヴァディヤーヤの実践の楽しみです。