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ハタヨガは、アーサナ(体位)やプラーナーヤーマ(調気法)といった身体を使うヨガの源流です。
ヨガの練習に行き詰った時や、迷いがある時には、古代の聖者が示してくれた道筋を知ると事もおすすめです。
今回はハタヨガの古典教典の1つである『ハタヨガ・プラディーピカ』の中から厳選した名言をご紹介します。
ハタヨガは人生の光
異説が入り乱れる闇のなかに迷うてラージャ・ヨガ(王のヨガ)を知らない人々のために、慈悲ふかいスヴァートマーラーマ道士はハタヨガの灯明(プラディーピカ)をかかげる。(ハタヨガ・プラディーピカ1章3節)
ヨガとは何なのか?
古代の聖者は、ヨガは道を照らすランプなのだと教えてくれます。
未来が分からない私たちの人生は、暗闇を歩いているようなものであり、道に迷ってしまったり、つまずいて怪我をしてしまったり、見えない恐怖心に怯えてしまいます。
例えば、道に細長い縄が落ちていたら「蛇がいる!」と勘違いしてしまったり、もの音がしたら「誰かにつけられているのでは?」と怖くなったり、視界が暗いというのはそれだけで人生を不安定なものにします。
ヨガという光を手に入れることで、自分自身の生きる道を知ることができます。
全ての悩む人にヨガの教えを
ハタヨガは人生の苦熱に悩む全ての人にとって寄りたのむ庵室であり、ヨガの道にはげむ人たち全てにとっては世界を捧げる亀にひとしい。
(ハタヨガ・プラディーピカ1章10節)
人生でつまずいたり、悩みがあったりする時に、ヨガがきっと助けてくれます。
ヨガとは人生のあらゆる苦しみから人々を解放してくれる安らぎの場所です。
ちょっと生活に疲れ、もう頑張るのが辛いなと感じるときには、大変な日常から自分を切り離してくれる時間と場所が必要です。
ヨガという憩いの場所で癒されて、今の自分に必要な答えを見つけましょう。
また亀はヴィシュヌ神の化身でもあり、インド神話で世界創造の時に登場しマンダラ山を海底から支えます。つまり亀は私たちの人生を支えてくれる土台でもあり、ヨガも人生の土台となる部分を確立してくれるものなのですね。
老若男女、誰にでもヨガは開かれている
若きも、老いたるも、高齢者も、病人も、虚弱者も、すべてのヨガ行を怠らずに実習することによってシッディ(成満)に達することができる。
(ハタヨガ・プラディーピカ1章64節)
「私は身体が固いから」「私には持病があるから」「私はもう歳だから」とヨガを始めることを躊躇してしまう人がいます。だけど本当は、そんな人こそヨガが必要なのかもしれません。
またその一方で、エネルギッシュで感情のコントロールができない若い人は、ヨガなんて退屈と思うかもしれませんが、抑えきれないほどの強い感情にもヨガは効果的。
ヨガは差別なく、誰のことも受け入れてくれます。
ヨガを練習していれば変われる。それを信じて進むことで、それぞれにとって必要な変化が与えられます。
ヨガは見た目ではない
ヨギーの衣装をつけることはヨガ成満の原因ではない。ヨガの実習だけが成満の原因である。このことは真実であって疑う余地はない。
(ハタヨガ・プラディーピカ1章66節)
SNS を見ると、華奢で綺麗な女性がヨガをしている写真が沢山出てきます。まるでバレリーナのようなしなやかで柔軟なポーズや、アクロバティックで力強いアームバランスもかっこいいかもしれません。
見た目が美しいと上級者に見えることもありますが、大切なのはカタチではありません。
お洒落なヨガウェアを身に着けて、意識の高いオーガニックな食事を食べることも素敵ですが、目に見えるものだけに意識が向くと他者と比較をして苦しみを生み出しやすいものです。
「自分はこんなに難しいポーズできない。」「スタイルも良くない。」「服装もただのTシャツだし。」と悩む必要はありません。
それよりも自分の内側に向き合ってヨガをするともっと楽しくなれます。カタチに囚われない内面的なヨガに向き合いましょう。
ゆっくりと焦らずに練習しよう
ライオンや象や虎のごとき猛獣でも、徐々に馴らすことができるように、気も修練を続けていけば、終いにはコントロールすることができるようになる。さもなくて、にわかに抑制しようとすると、かえって修行者を害することになる。
(ハタヨガ・プラディーピカ2章15節)
ヨガでは自分の心や体をコントロールしようとしますが、それはとても難しいものです。
短期間に効果を得ようと思うと、ポーズの練習で無理をして怪我をしたり、心も強引にブロックを解こうとして余計に制御ができなくなってしまうことがあります。
ヨガでは焦らなくて大丈夫です。練習のプロセスを楽しめば、必ず成果はやってきます。
ヨガの教えで暴れ馬の話があります。ある王様が美しい4頭の馬を手に入れましたが、どんな調教師に預けても全く制御できない暴れ馬でした。
あきらめかけた時に1人の青年がやってきて、1年自分に馬を預けて欲しいと言いました。
1年後現れた青年は、見事に4頭の馬を整列させていました。青年が馬を調教できたのは、ゆっくりと馬と友達になるところから始めたからです。一緒に食事をして、同じ場所で寝て、馬の家族になることで信用を得ることができました。
この4頭の馬は私たちの心や感覚器官を表します。
急いで調教しようとすると怪我をします。じっくりと自分に向き合って、友達になると、自然と自分をコントロールできるようになります。
心と体は繋がっている
気が動くと心も動く。気が動かなければ心も動かなくなる。ヨギーは不動心に達しなければならない。だから、気の動きを制止すべきである。
(ハタヨガ・プラディーピカ2章2節)
プラーナーヤーマ(調気法)のとても有名な言葉です。
「なんで身体を動かすヨガを練習すると、心も軽やかになるのだろう?」と疑問に持つ人は多いですよね。
ヨガでは、心も身体もどちらもプラーナ(生命エネルギー・気)の働きだと考えます。
私たちの内側で、身体のプラーナが清浄になれば、同時に心のプラーナも整います。
逆に、心のプラーナが乱れることで身体のプラーナも乱れてしまい、様々な不調や病気の原因となってしまいます。
心をコントロールするのは難しいため、動かしやすい身体や呼吸を整えることで、心も一緒に整えるのがハタヨガのコンセプトです。
世界と一体になる感覚
ジーヴァ・アートマン(個人的真我)とパラマ・アートマン(宇宙的真我)の両者が均一となり、さらに合一した状態、従ってすべての想念が消え去った状態が三昧と呼ばれる。
(ハタヨガ・プラディーピカ4章7節)
ハタヨガ的な宇宙観が表されている1節です。
ヨガを実践するとどうなるのか?悟りとは何なのか?
三昧(サマディ)はエゴ(自我意識)が消えた状態です。その時、私たちは自分と他者、内と外を差別しません。自分が世界と一体になった感覚を得た時、それが悟りです。
思考は常に自分と他人を比較しようとします。思考を休めて、感じるものに意識を向けましょう。
自分と自然が一体となった感覚を得た時、とても幸せが満ちてくるのではないでしょうか。
古典を読むと見えてくるヨガ
いかがでしたでしょうか。古典教典と言うと難しいイメージがありますが、現代のヨガを練習している私たちにも取り入れられそうな教えが沢山ありますね。
ヨガを練習していて迷いが出た時には、ハタヨガの教典を読んでみるのもおススメです。
ハタヨガ・プラディーピカが学べる講座があります
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