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疫病が流行ったり、争いが起こったりと、良くないニュースを連日目にしていると、無意識のうちに恐怖心が内側に蓄積してしまいます。
不安障害や恐怖症になると、特別な原因がなくても恐怖に襲われ、ずっと不安を抱き続けてしまい、このような状態が続くと、精神だけではなくて身体的にも健康を保てなくなってしまいます。
不安を感じやすい時に、ヨガに何ができるのかを具体的な実践方法を含めて考えてみましょう。
恐怖心は生物に必要な本能。だけど強くなりすぎると生きづらさにつながる
不安を感じたり恐怖を感じたりするのはとても不快なことですが、生物が生き抜いて子孫を残すためには必要なものでした。
例えば暗くて人通りの少ない道を歩く時には怖いと感じる人が多いです。
恐怖心があるからこそ周囲へ意識がいきわたり、不審な物音などに対していち早く反応することができますし、そもそも暗闇に行かないようにと気を付けることができます。
しかし、恐怖心が強くなりすぎると問題です。
例えば閉所に対する恐怖症が強いと、エレベーターなどに乗ることができなくなり、飛行機などの公共交通機関にも乗ることができない場合もあります。日常生活にも支障がありますし、体調を崩しても MRI 検査を受けられないこともあります。
特定の恐怖症でなくても、不安を煽るようなニュースを連日見て慢性的に不安でいると心身ともに良くない症状が現れます。
緊張状態が続くため疲れが取れない、睡眠の質が悪くなる、集中力がなくなるといった症状を感じたり、脈が速くなる、冷や汗がでたり身体が震える、呼吸が早く浅くなる、胃もたれを感じる、人によっては吐き気がします。
常に緊張状態であれば交感神経が働き続けているため、リラックスしたり身体を休めて回復したりすることが難しくなります。
体調を崩す原因にもつながるので、早めに気が付いてあげられると良いですね。
ヨガ哲学では不安はマーヤー(幻影)だと説く
ヨガの哲学では、不安や苦悩はマーヤー(幻影)と呼ばれる苦しみだと説きます。
暗闇を歩いているときには強い恐怖心があります。だから、道に1本のロープが落ちていても蛇だと思いこんでパニックになり真実が見えません。
では、私たちの苦しみを取り除くためにはどうするべきなのでしょうか?
暗闇で恐怖心を抱いてしまったときには、ランプを持っていれば、真実を見ることができます。
結果、目の前の物がロープだと気が付き、恐怖心は消え去ります。このランプ、光こそがヨガの教えです。
ヨガでは冷静に物事の真実を見ることを学びます。真実を知ることこそが人生の苦悩を取り去るための方法です。
ヨガのアーサナ(ポーズ)で恐怖心を弱める
ヨガで具体的にどのようなアプローチをしたらいいのでしょうか?
心と身体のエネルギーは繋がっているため、身体のエネルギーを整えることによって心も平穏を取り戻しやすくなります。
恐怖や不安の解消に効果が期待できるアーサナをご紹介します。
恐怖心の集まる第5チャクラ(ヴィシュダ)を整えるアーサナ
不安や恐怖は、喉元にあるヴィシュダ・チャクラが乱れているときに現れます。
喉は人間にとって急所でもあり、危険が迫っているときにはこの場所を守る必要があります。
ヨガ的な身体論で言うと、ヴィシュダ・チャクラはアムリタと呼ばれる生命の水がある場所です。
人の生命は、喉元からアムリタが腹部にポタポタと1滴ずつ落ちて、アムリタが燃えることによって生まれた生命力によって生命が維持されます。アムリタは人間として生まれた時に量が決まっているため、人は全てのアムリタを使い果たすと寿命を迎えます。
危険を感じると生命を守るために喉元のヴィシュダ・チャクラが乱れてしまいます。
ヴィシュダ・チャクラを整えるためには、喉を開くようなポーズが有効です。
例えば、ウシュトラ・アーサナ(ラクダのポーズ)やマツヤ・アーサナ(魚のポーズ)を行いながらゆっくりと呼吸を行えば、ヴィシュダ・チャクラのエネルギーの流れが整います。
ヨガのアーサナをする時間がない時には、椅子に背筋を伸ばした状態で座って天井を見て喉を開いた状態で深呼吸してみるのも良いでしょう。
閉じていた喉元のエネルギーが流れ始めることで、心が解放される感覚を得られると良いです。
また、スマートフォンなどで情報収集をする時間が多い人も姿勢に要注意!ずっと下向きの姿勢だと、ますます喉元が閉じています。
偏った見解に囚われないために胸を開いたポーズを
争いなどが起こっているときには、どうしても片方の立場で意見を聞くことが多かったり、様々な情報がある中で一度信じたものに執着してしまったりする事があります。
何が真実か分からない状況下では、いつでも物事を冷静に俯瞰することも大切です。
凝り固まった偏見を弱めるためには、胸を大きく開くポーズがおススメです。
また、しっかりと胸を開いて深い呼吸をすることで、体内のあらゆるエネルギーの流れが整って、心身ともにスッキリとした感覚を得られるはずです。
胸を開くポーズにはカポタ・アーサナ(鳩のポーズ)やプジャンガ・アーサナ(コブラのポーズ)など、様々なポーズ後屈のポーズがあてはまります。
また、日常から背中を丸めた猫背にならないようにも気を付けましょう。
ヨガのポーズの時間より、それ以外の時間の方がずっと長いです。せっかくヨガで胸を開いても、すぐに元に戻ってしまってはもったいないですね。
自己肯定の慈悲の心を忘れずに
安心感を得るためには自分自身を肯定してあげることがとても大切です。
ヨガ・スートラには慈悲喜捨という教えがあります。
人々が苦しむようなニュースを見ていると、何も手助けができない自分自身を責めてしまい、苦しんでいる人がいるのに平和なところで楽しむことに罪悪感を抱いてしまう人もいるでしょう。
自分自身は何も悪いことをしていないのに、自分自身を受け入れられなくなってしまうこともあります。慈悲喜捨は他人に対する愛の感情でもありますが、周囲に愛を向けるためには、自分自身を愛すことができていないといけません。
自分自身を認めて、受け入れてあげることによって安心感を得ることができます。
また、その愛を少しずつ自分の周囲の人や世界全体に広げていくことで一体感を感じ、穏やかさを手に入れることができます。
言葉で誘導する慈悲の瞑想もおススメです。
どんな時でも冷静さを失わないために
暗いニュースが続くと、ついつい自分も心が苦しくなってしまうかもしれません。しかし、そういった状況の時こそ冷静さを保つようにしましょう。
自分以外の人が苦しんでいるときに理解してあげる共感は美しい感情です。
しかし自身が当事者でない場合は、冷静に状況を俯瞰していないと的確な助けの手を差し伸べてあげることができません。
もちろん、自分自身も悩みがあるかもしれませんが、人はお互いに支えあって足りない部分を補填しあうことで、1人でいる時よりも大きな力を発揮することができます。
深い呼吸で心を落ち着かせるためにも、ヨガの時間を大切にしましょう。