2018年、カリフォルニアのアシュラムで、アクセシブル※1ヨガ創設者 Jivana 先生のヨガワークショップを受けました。
その Jivana 先生が、アメリカ版ヨガジャーナルの表紙を飾っているのを見て、嬉しくなりました。
先生は、”Anyone can do yoga.”(誰でもヨガができる)と仰います。
車椅子であっても、寝たきりであっても、ヨガができるというのです。椅子に座ったまま、あるいは寝た姿勢で、また壁を使いながら、誰でもヨガができる方法を指導してくれました。
- ※1 アクセシブル:近寄りやすい、利用しやすい
アクセシブルヨガのはじまり
男性である Jivana 先生は、クラスの初日に「自分には夫がいて、二人の子供が居る」と口を開き、自分がアクセシブルヨガを広めるに至るまでの経緯をありのまま話してくれました。
1990年代初期には、親しい周りの友人がエイズで次々と亡くなってしまい、Jivana先生は、怒り、怖れ、悲しみに打ちのめされました。その時に救ってくれたのが、日本人女性のオノデラ カズコさんです。
Jivana 先生がマッサージを受けにオノデラさんの所を訪ねた折、スワミ・サッチダーナンダの写真が飾られていました。彼は、Jivana 先生の祖母のヨガティーチャーでもあったのです。
オノデラさんはヨガだけでなく、料理、ガーデニングも教えてくれ、人生のメンター(恩師)となり、そこから Jivana 先生のヨガへの探究が始まりました。
ヨガ指導者の資格を取得後、エイズ患者にヨガを教え、それ以降は、身体に障がいのある人々にヨガを伝えています。
”Anyone can do yoga.”をモットーにアクセシブルヨガを広め、ヨガ学会の開催、ヨガ講師養成、本の執筆など幅広く活躍しています。
そこには、「どのような身体的状況や社会的背景があろうとも、全ての人が平等にヨガの教えに繋がっていけるように」という思いが込められています。
呼吸ができるならヨガができる
先生は、”If you can breathe, you can do yoga.(あなたが呼吸ができるのなら、ヨガができる) by Krishnamacharya” という言葉を白板に書き示し、こう仰いました。
「私たちはみんなユニークで違っている。他の人たちと同じである必要はない。ヨガも自分ができる範囲の中でしたらいい。自分ができることだけをするんだよ。そして、身体が柔らかくなることがヨガの目的ではない。身体能力が高い人が上級ヨギではない。『身体能力=ヨガのレベル』では決してない。」と。
障がいのある方への教える際に大切なこと
また、先生は、身体に障がいのある生徒さんにヨガを教える時に大切なことも教えてくれました。
- まず、生徒さんとよくコミュニケーションを取ること。
- ヨガ講師が持っている知識と生徒さん自身の知識を融合させて、ヨガクラスを組み立てること。
- その際に、生徒さんに、決して無理をさせたり、こちらから何かを要求したり、批判したりしないこと。
- 色々やってみて、上手くいかないものがあれば、その方法は採用しない。
大切なのは、生徒さんに自信を持たせて、力づけてあげることです。
生徒さんが変わる必要があるなどと、教える側は思わない。ありのままの自分を誰かに受け入れてもらうことは、心の癒しとなります。
自分に合ったヨガが必ずある
「ヨガに興味があるけど‥‥‥私は身体が固いから、ヨガができません」という言葉を聞くことがありますが、身体が硬くても、ヨガはできます。
自分の身体に合ったヨガのやり方があるのです。
例えば、木のポーズは立ち姿勢が代表的だと思いますが、椅子に座ったり、壁を使ったり、寝た姿勢でも、木のポーズはできます。
アクセシブルヨガとは、どんな人でもヨガにアクセスできるようにと工夫されているのです。
「ヨガとは、精神修行です。みんながアクセスできなければ、それはヨガではない。」と Jivana 先生は仰っています。
私はこのヨガジャーナルの表紙が大変好きです。中年の男性がただ座って笑っているだけの写真。若くて体の細い女性がすごいヨガポーズをしているのでもなく、ありのままの姿がヨガ雑誌の表紙になっています。
「Yoga is for all. (ヨガはみんなのためのもの)」というメッセージを感じます。
ヨガは、性別、人種、年齢、身体の状態、アイデンティティ、その全てを越えたところにあり、みんなの心をひとつにしてくれるものです。