健康の維持・向上、心の安定、美容など、さまざまな目的でヨガをされている方が多いかと思いますが、海外ではすでに医療の補助や代替ケアとしても注目されています。
文献検索サイトに「Yoga」と入力してみると、2021年末までに6,600件をも超える報告がされていて、科学的な視点からもヨガの効果が確認されつつあります。
今回は「子どもたちのケア」とヨガの関連について、ボルチモア(メリーランド州)で行われたアフリカ系アメリカ人高校生の夏季健康支援プログラムの事例について紹介します。
1.研究の背景と方法
都市環境下に暮らすアフリカ系アメリカ人の若者は、身体的に不活発・低栄養・慢性的ストレスなどの健康問題にさらされています。
特に夏季においては、健康的な食べ物や安全に運動をする場が減ってしまい、状況がより悪化する傾向にあると言われています。
官民提携体制がこれまでにつくられ、Mission Thrive Summer(夏休みのミッション活動)という統合的健康のための取り組みがなされてきました。
ボルチモア(メリーランド州)の都市型農業とその近隣の低所得コミュニティの学校で、以下の活動を含む支援プログラムが実施されました。
- 農業
- 栄養指導、食育
- 料理
- 身体的運動
- ヨガ
- マインドフルネス
- 仕事
また、結果の測定としては以下の方法がとられました。
- ミックス法(量的アプローチと質的アプローチの両方を用いてデータ収集と分析)により支援プログラムを評価しました。
- 量的アプローチでは様々な指標を用いて活動実施前後の得点を比較しました。
- 質的アプローチでは本人とその保護者へのインタビューを行いました。
合計で36人の9・10年生(日本の中学3年生~高校1年生頃)のアフリカ系アメリカ人が支援プログラムに参加しました(2013年に17人、2014年に26人、両年に7人)。
2.実施されたヨガクラス
ヨガは週に2回、1時間のクラスが行われました。
アーサナ・呼吸法・瞑想を含み、ストレス軽減と自己の気持ちを落ち着かせることを主に実施しました。
支援プログラム中には運動的な活動としてヨガの他にもフィットネス、スポーツ、ゲーム、ダンスなども行われました。また、農業体験、栄養や料理などの指導も行われています。
3.研究の結果
参加者のうち、88%が支援プログラムを完了しました。
量的アプローチの評価
加速度計による活動量評価の結果、参加期間中の1日当たりの活動量は、7,158歩カウント、544カロリー消費であったことが分かりました。
参加者の多くは身体的活動量の増加と、食習慣の改善において顕著な変化を報告しており、統計的にもスコアが改善していることが確認されました。
一方、今回の調査では、ストレス状態やマインドフルネスに関する指標については、統計的に優位なスコアの変化は見られませんでした。
質的アプローチの評価
新たな知識やスキルを身に着けることにより、自己効力感が高まり、健康的行動変容、楽しんでプログラムに参加していることが報告されました。
健康的行動変容がもたらされることがプログラム中とその後のフォローアップにおいても示されています。
4.プログラムの効果として寄せられた声
本研究の参加者の多くは様々な活動を通じて、運動的活動の増加や栄養の改善といった統計的にもスコアの改善が認められた健康的行動の変容とともに、精神的な発達も促されたことが参加者本人やその保護者のインタビューから個別に報告されています。
新たな知識やスキルを身に着けることによって、地域の一員としての責任感が芽生えるなど、将来の仕事やリーダーシップへと向かう基盤づくりにつながりました。
また、ヨガを含む様々な身体的活動は体と心の関連性を実感でき、新しい自己の気づきが促され、変化を感じ取ることへとつながったようです。また、注意力や配慮・怒りや衝動のコントロールができるようになったことについても実感されています。
「ヨガが好きです、継続してヨガを実施しています」という参加者からの声もいくつかあり、その中にヨガの効果として、不安に思わないことにつながり、イライラが軽減され自己の落ち着きを感じることができるようになったとのコメントがありました。
ちょうど大人に向かう年齢の子どもたちにとって、ヨガは体だけでなく心の発達にも役立つのかもしれません。