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東洋医学には、顔の表情、皮膚の色つや、動作、舌などを診て病を診断する、望診という診断方法があります。
特に顔には身体からのさまざまなメッセージが現れています。
いつも同じ場所にニキビができる、疲れが溜まると目が充血するなどの症状が現れる方も多いのではないでしょうか。これらの症状は、内臓の状態と深い関係があります。
顔は身体のミニチュアモデル。顔に現れる症状から、自分の体内に起こっていることを理解し、日々の養生で不調を予防しましょう。
目が病変を表す
東洋医学では、五臓六腑からの気は上に上って目に集まり、気が合体することで眼が形成されると考えられています。
細かく見ると、『腎』の気は瞳孔へ、『肝』の気は黒眼へ、『心』の気は目の内側と外側へ、『肺』の気は白眼へ、『脾』の気はまぶたへ流れるとされています。
この考えが書かれている「黄帝内経」は紀元前200年頃から220年頃に編集されたとされていて、医師達は目の異なる部位の形や色の変化から、対応する臓器の病変を診察したそうです。
色で見える体の状態
「黄帝内経 素問の刺熱篇」には、色の表す臓器や体の関係性も記されています。
- 『青』は『肝』の色
- 『赤』は『心』の色
- 『白』は『肺』の色
- 『黄』は『脾』の色
- 『黒』は『腎』の色
- 『肝』は『筋』
- 『心』は『脈』
- 『肺』は『皮』
- 『脾』は『肉』
- 『腎』は『骨』
例えば、もし色が『青』で『筋』が病んでいれば、不調の原因は『肝』にあります。
五臓と顔の関係
また、五臓は、顔の部位にも関係があります。
『肝』の熱病では、左の頬がまず赤くなり、『心』の熱病では額が赤くなり、『脾』の熱病では、鼻がまず赤くなり、『肺』の熱病では右の頬、『腎』の熱病では顎が赤くなる。
熱病の初期では、五臓対応の部位にのみ色の変化が現れ、この段階で治療をすると、汗が出て、治癒するとされています。
顔の色の変化の違いを読みとることで、未病を治すことができます。
病気になる前に治療をする未病治、これが東洋医学の中で大切にされていることです。
また、顔の色の変化から体の不調を読み取る事ができます。
- 『青』は、冷えと痛みを現し、青紫だと瘀血、血液の流れが悪いことを示します。
- 『赤』は、熱がある状態です。さらに、痛みがある場合は、悪い血が滞っています。
- 『黄』は、消化の働きが弱っていることを現します。また、熱をもった余分な水分である湿熱や、冷えを伴った余分な水分、寒湿が溜まっている現れでもあります。
- 『白』は、陽の力が少ないことによる冷え、気や血の不足を表します。
- 『黒』は、『腎』の力の弱まり、冷え、血流が悪い、水分代謝が悪いことを現すサインになります。
五色がそれぞれ、顔面の決まった部位に現れ、浮いているような軽い色の変化であれば病は初期で、色が沈んでいると、長期に渡っていることを表します。
また、つやがあれば回復力があることを現しています。
五臓の不調タイプ診断
顔の色や部位による変化での診断と共に、次の質問をチェックして、『肝』、『心』、『脾』、『肺』、『腎』のどの五臓に不調が起こりやすいかを確認してみましょう。
『肝』タイプ
- 貧血やめまいを起こす
- イライラして怒りっぽい
- ストレスが原因でよく体調を崩す
- 顔に青筋が立っている
- 目が疲れやすい
- 足がつりやすい
- 首・肩がよくこる
- 酸っぱいものが好き
- 月経前の痛みや月経痛がある
『心』タイプ
- 動悸や息切れがする
- 興奮しやすい
- 物忘れがひどい
- 不安感がある
- 寝つきが悪く眠りが浅い
- 暑がり
- シミやくすみが気になる
- 血行が悪く手足が冷える
- 舌に黒い斑点がある
『脾』タイプ
- 外食が多く、暴飲暴食になりがち
- よく胃が痛くなる
- よく下痢または便秘になる
- 手足がだるい
- 水太りしている
- 顔のたるみが気になる
- 皮膚の色が黄色っぽい
- 甘いものが好き
- 口角が荒れやすい
『肺』タイプ
- アレルギーがある
- 花粉症
- 咳や痰が出やすい
- 疲れやすい
- 肌のトラブルが多い
- 色白
- 髪の艶がない
- しわが気になる
『腎』タイプ
- 足腰がだるくて冷える
- 手足や顔がほてる
- 手足や顔がむくむ
- トイレが近い
- 肌の色が黒ずんでいる
- 病気になると治りにくい
- 老けてみられる
- 虫歯が多い
- 骨が弱い
- 抜け毛や白髪が多い
『肝』タイプに当てはまる項目が最も多かった方
血液を貯蔵する力、気の巡りをスムーズにする力がアンバランスになりやすく、自律神経が乱れやすくなっています。
気を発散させること、肝血を養う事が大切です。
気を発散させる食材:そば 菜の花 えんどう豆 ジャスミン
肝血を養う食材:にんじん ほうれん草 落花生
『心』タイプに当てはまる項目が最も多かった方
血液を巡らせる力が弱まり、精神的に不安定になりやすくなっています。
瘀血を取り除き、血液の巡りを改善することが大切です。
瘀血を取り除く食材:米 小麦 くわい 豚ハツ
精神を安定させる食材:にんじん ほうれん草 落花生
『脾』タイプに当てはまる項目が最も多かった方
食べ物の消化吸収し、全身に栄養を送る働きが弱くなっています。
『脾』の働きを高め、食べたものをエネルギーに換える力を取り戻しましょう。
脾の働きを高める食材(特に水太りしている方):大麦 はと麦 とうもろこし
胃の痛みを和らげる食材:芋類 椎茸 キャベツ
『肺』タイプに当てはまる項目が最も多かった方
呼吸によって、全身の気を巡らせ、そして血液、水分を全身に行き渡らせる力が弱まっています。
『肺』は乾燥を嫌うので、肺を潤す食材を摂りましょう。
肺を潤す食材:白胡麻 松の実 豆乳
肺の働きを高める食材:山芋
『腎』タイプに当てはまる項目が最も多かった方
健康の源となる「精」が弱っています。
「精」を補充して『腎』を元気にしましょう。
腎を元気にする食材(特に足腰の冷え、むくみが気になる方):くるみ にら 鶏肉
(特に老け、骨や髪の脆さが気になる方):黒胡麻 黒豆 卵
顔に現れるメッセージと質問項目から、不調が起きやすい臓を知り、弱い臓を強くする食生活で心と体の健康を維持しましょう!
参考資料
- 現代語訳 黄帝内経素問 南京中医学院編 石田秀実監訳/東洋学術出版社
- 実用 中医薬薬膳学 辰巳洋 著/東洋学術出版社