砂浜に描かれたオームの文字と波

ネガティブな発言に注意!言葉が世界を作る~ヨガの力で心を浄化しよう~

「言霊」という考えは古代日本から信じられていました。

同じようにヨガの生まれた国インドでも言葉、もしくは音が世界を作り出していると考えます。

言葉が世界を作り出しているのであれば、自分の発している言葉にも注意が必要ですね。

古代インドでは言葉が世界を作り出していた

青い稲妻のような光とオームの文字
古代インドでは、音の波動が世界を生み出したと考えられています。

それらの音の中でも1番始まりの音はオームという聖音です。

オームという一音のブラフマン(聖音)を唱えながら私を念じ、肉体を捨てて逝く者、彼は最高の帰趨に達する。(バガヴァッド・ギーター8章13節)

教典『バガヴァッド・ギーター』の中でも、ブラフマン(宇宙の根本原理)はオームという聖音であることが示されています。

「オーム・タット・サット」真実を表す3つの言葉

音の波動には微細なものから粗雑なものまであります。

最も微細なものはプルシャ(真我)やアートマン(個我)という意識体です。感情や思考、自我意識などのチッタ(心)も認識できるものの中では微細なものです。

身体などの物質でできているものは最も粗雑な波動により構成されています。

音によって世界を操作する

インド古代のバラモン教では、音によって世界を操っていました。

現代のヒンドゥー教にも伝わる儀式(プージャ)ではマントラと呼ばれる真言を唱えます。

マントラには短い物から長いものまでさまざまなものがあります。

例えば、オームも1音のマントラです。英語で書くと OM や AUM となりますが、サンスクリット語のデーヴァナーガリー文字では ॐ と表記するので1音になります。

古代インドの人たちは、自然界のあらゆるエネルギーを神だと称えました。

太陽神、暴風雨神といったように、私たちに影響を与える自然は恐れるべきものでもあり、同時に崇拝の対象でもあります。

バラモン(司祭)たちは、マントラの音のエネルギーによってこれらの自然のエネルギーを操ります。雨を降らしたり、子宝を授かったり、病を治したりと、叶えたい願いによって使うマントラや儀式の作法が違います。

インドの人たちにとっては、音や言葉は世界を動かす力そのものです。

そのため、現在のインドでも軽率にネガティブな発言をすることは、はばかられます。

インドを訪れると、頻繁に「ノープロブレム(問題ないよ)」という言葉を耳にします。日本人の私たちにとっては大きな問題があっても、大丈夫!問題ない!と押し切られます。

彼らにとっては、自身が「ダメだ」という言葉を発した時点で、良くない結果が起こってしまうと信じているからです。

常にポジティブな発言をするのは、言った言葉が未来を作り出すのだと信じているからです。

万葉集に書かれた言霊の力

赤い人車の前に立つ神主の後ろ姿
日本でも「言霊(ことだま)」という言葉があります。

古代の日本人は言葉には霊が宿っており、発した言葉の持つ意味が現実になると信じられていました。

万葉集でも言霊について書かれた歌があります。

しきしまの大和の国は言霊のさきはふ国ぞまさきくありこそ。(柿本人麻呂作)

日本(大和)の国は言霊が幸をもたらしてくれる国です、どうかご無事でいてください。という意味の歌です。

この歌は海の旅に出る人に向けて読まれた歌です。私が「ご無事で」と発した言葉の言霊によって、相手が無事にいてくれることを祈っています。

神道の祈りでは、神主(かんぬし)が神前で祝詞(のりと)を声に出して唱えます。神様に向けた感謝や祈りは言霊に込めて届けることが習わしです。

インドのバラモンたちが行っている儀式と、何となく類似している気がしませんか。

自分の使っている言葉に気を付ける

口から言葉を発する女性の横顔
言葉に現実を生み出す力があるのなら、私たちが日常的に使っている言葉にも気を付けた方が良さそうですね。

友達や家族が何か新しい挑戦をしたい時に「こんなこと無理に決まっている」と悪い結果を想像して言葉を発してしまっていませんか?

相手が失敗して苦しむのを避けるために悪気なく言った言葉であっても、その言葉のエネルギーが悪い結果を呼んでしまうかもしれません。

インドのヴェーダンタ哲学の先生から聞いた話です。

「私は、生徒が頻繁に遅刻をしてきても、彼のことを“悪い生徒”だとは絶対に呼ばない。もし私が彼を“悪い子”と呼んでしまったら、彼は自分のことを悪いのだと認識して、彼の未来を変えてしまうかもしれない。

私が知らないだけで、実は道中に困った人を助けていたり、病気で朝起きられないのかもしれない。だから絶対に相手のことを“良い悪い”と評価して安易には口に出さないようにしている。」

私たちも他者から迷惑をかけられた時には、つい「この人は悪い人」と言ってしまっているかもしれません。

例えば子供が親の言うことを聞かなかったときに、深く考えもせずに「悪い子」と言ってしまっていることもあるでしょう。母親は心の中では自分の子供を悪い子だと思いたくはないはずです。

しかし、子供は発せられた言葉の通りに受け取って、ますます母親の言うことを聞かない悪い子になってしまうかもしれません。

疲労やストレスが溜まっている時に自身の言動をコントロールするのは難しい時もあります。

だからこそ、ヨガの時間など、日常から離れられる時間を作って自分を客観視することはとても大切です。

言葉は真実(サティヤ)を作り出す

インド哲学では、言葉にはサティヤ(真実)を生み出す力があると信じられています。

ところが、世の中には明らかな嘘をつく人もいて、その人たちの言葉は必ず真実になるわけではありませんよね。それはどういうことなのでしょうか?

『ヨガ・スートラ』によると、サティヤ(正直)の実践を貫くことによって、その人の発する言葉が真実になるようになると説かれています。

サティヤが確立すると、(彼の言葉は)現実となる。(ヨガ・スートラ2章36節)

サティヤが確立して心の中にさえ嘘が無くなった人には、その人の発した言葉を真実にしようとする力が働くそうです。引き寄せの法則にも似ていますね。

本来はきっと言葉には真実を導く力があるのでしょう。しかし、常日頃から嘘をつき続けている人が発した言葉は、最初からその人も嘘であるという疑いのエネルギーをまとってしまっているのかもしれません。

引き寄せの法則は上手くいかないよ!と思っている人は、自分自身の心の中に不真実が充満していないか見直してみましょう

心が軽くなる本当の正直さ『サティヤ』

ヨガの力で心を浄化する

草原に座り胸の前で手を合わせて目を閉じる女性
インドでは全てのものは音の波動だと考えます。つまり、私たちの心の働きも音のエネルギーの影響を受けています。

例えば、潮騒のような自然の穏やかな音は心を穏やかにしてくれます。扉を乱暴に閉めたり、金属を落としたりしたような激しい音は心を緊張させます。

純粋な音の波動によって意識を崇高な状態に導く者には、マントラ・ヨガナーダ・ヨガがあります。

ヨガで使われるマントラは、サンスクリット語という神々が使用する言語によって書かれています。

シャンティ・マントラのように平和を願うマントラは、世界全体の平和を祈るのと同時に、唱えた人の心の状態も平穏にしてくれます。

ナーダ・ヨガ(音のヨガ)は、伝統的には自分の体内から生まれるナーダ音に意識を集中させることで深いサマーディに到達するハタヨガのテクニックです。しかし自身の内側の音を聴くことは容易ではありません。

インドでは古典音楽の実践をナーダ・ヨガとして行い、寺院などで歌うことがあります。音楽は人の心を強く惹きつけるので、とても効果が高いです。

このように、自分が発する言葉や音にはとても大きな影響力があります。

会話の全てをコントロールすることは難しいのですが、少しずつ<b?自分の発する言葉に意識を向けられるようになると良いですね。