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ヨガは”自分自身と向き合うためのもの”ですが、実際の私たちの人生の中で幸福を感じるために、最も大きく影響するものは周囲との関係性ではないでしょうか。
人は、他者と喜びを共有することによって、より大きな幸福を感じることができます。
そして、こういった幸福を感じるためには、自分だけの利益を追求するのではなくて、周囲への愛がとても大切になります。
教典『バガヴァッド・ギーター』の中ではいくつかのヨガについて説かれていますが、その中でもバクティ・ヨガは信愛が幸福に繋がることを教えてくれます。
バクティ・ヨガの目的と大きな効果
バクティ・ヨガとは、神や師などに対しての信愛の心によって自分自身を高めるヨガです。
教典バガヴァッド・ギーターはバクティ・ヨガの教典とも呼ばれるくらい、全体を通してバクティ(クリシュナ神への信愛)について説いています。
バクティ・ヨガを行う目的と効果には大きく2つあります。
- 自我意識(エゴ)を弱める
- ポジティブな愛の感情を育てる
自我意識を弱めることで得られる幸福感
ヨガの目的の1つに、自我意識(エゴ)を弱めるというものがあります。
自我意識は「私」という概念そのものです。そして、自分と他者を別物だと区別することで、「私」という意識がどんどん大きくなります。
この「私」という感覚が強くなるほどに、苦しみを生み出す原因が生まれてしまいます。
人は、「私」と「他者」が別物であるから、自分と他者を比較しようとします。その結果、「相対的に見て自分が上か下であるか」でしか幸せを図ることができなくなってしまいます。
例えば、同じようにバレンタインに綺麗な女性からチョコレートを貰ったとしても、同僚の1人の男性にだけ何倍もする高級チョコレートをあげていると知ってしまったら、自分がチョコレートを貰った事実が変わらなくても一気に幸福が消えてしまいます。
他者と比べて「自分の方が沢山与えられている、優れている、愛されている」と思いたい。このような比較によって自分の幸福を決定するのは危険なことです。
自分と他者を常に比較し続けて自分の方が上位にいたいと願うのは、常に勝ち負けに囚われてしまっています。
また、「私と他者が違うのであれば、自分のところに富を独占したい」と願う心が生まれます。
例えば3人兄弟であれば、妹や弟に親の愛情が向いてしまうことに不快感を覚えてしまいます。
本来、家族であればお互いの幸福を一緒に喜べるのが理想的ですが、現実にはそうはいきません。
兄弟が親に褒められているところを見ると、嫉妬し、「親の注意が自分に向くように」と兄弟を貶めるような行動を選んでしまうかもしれません。
できるだけ親の愛情を独占したいというのは、子供が生き残るための本能です。
しかし、いつまでも「自分が独占したい」という気持ちを持ち続けていると、それが争いの原因になってしまいますね。
このように、自我意識は大きな苦しみの原因です。
バクティ・ヨガで、自分以外の誰かに心を捧げることによって、少しずつ自我意識を弱めていくことができます。
愛の感情を育てて幸福感を高める
「愛」とは、人が抱く感情の中でもっとも幸福なものです。
自我意識を弱めた先には、他者との一体感や愛が生まれます。
同じように食事を準備しても、自分1人で食べるのと、誰かと共有するのでは幸福感が違いますね。自分が作った料理を、家族や友達が美味しいと言いながら食べてくれると、何倍も嬉しく感じることができます。
人は愛を感じること、誰かと喜びをシェアすることで自分は幸福なのだと自覚することができます。
バクティ・ヨガを高めるためにおススメのアーサナ
バクティ・ヨガは、「自分」という壁を捨てて周囲と一体感を生むことで達成できます。
自分と外の間の壁が高い人ほど、どれだけ素晴らしい先生に出会っても「信用するのは怖い」と疑心感が生まれ、親愛の感情を感じることができません。
そんな方がバクティ・ヨガを実現するためには、アナーハタ・チャクラを整えることが有効です。
アナーハタ・チャクラという胸に位置するチャクラは、慈愛のチャクラとも呼ばれています。
このチャクラのバランスが崩れると、他人への束縛、情緒的な関係への執着が強くなってしまいます。
人間関係に関するしがらみには主にこのチャクラが影響を与えています。
アナーハタ・チャクラを整えることで、受け入れる心が高まります。
胸の位置のチャクラを活性化させるためには、胸を開くアーサナが有効です。
例えば、カポタ・アーサナ(ハタのポーズ)やウシュトラ・アーサナ(ラクダのポーズ)を深い呼吸と共に行うと、胸が開くのと同時に心が開いていくのを実感することができます。
今まで自分の凝り固まった思考に意識が集中して、内側でモヤモヤが滞っていたとしても、アナーハタ・チャクラを開いて外の世界を受け入れることで、新しく入ってくる呼吸やエネルギーの流れを感じることができます。
自分の内側の小さな世界から、世界全体へ意識が移ることで、心もとても自由で軽やかに感じることができます。
24時間抱くバクティ(信愛)で心を浄化する
ヨガのクラスの中では心がスッキリしているのに、日常に戻ると苦しくなる、という方も多いと思います。
バクティにはスマラナという実践があります。
スマラナとは、24時間バクティを抱き続けることです。
「そんなこと無理!」と思ってしまいますが、日常でも自然に同じようなことが起こる場合があります。
例えば、小さな子供をもつお母さんであれば、仕事中でも保育園に預けた子供のことが気になっているでしょうし、夜寝ている時でも、少しの物音で心配して目が覚めてしまうことがあります。
起きている時も、寝ている時も、頭の片隅で常に子供のことを抱いている。これと同じように、自分が信愛する存在を常に思っていることがスマラナです。
スマラナを実践するのに効果的なのは音楽です。
バクティ・ヨガでは、キルタンという神様の名前を唱える歌を歌う実践があります。
音楽のメロディーは心の中に留まりやすいです。みなさんも、大好きな歌を何度もリピートして聞いていると、頭の中でその歌が止まらなくなってしまうことがありますよね。
朝起きた時にもその歌が頭の中を流れていると、寝ている時さえ音楽が奏でられていたのかと思ってしまうでしょう。
「ハレ・ラーマ、ハレ・クリシュナ」と神様の名前をキルタンで歌っていると、その純粋な名前が心の中に常に留まるようになります。
ヨガの教えを与えてくれるクリシュナが心の中にとどまっている時、エゴによる自分本位な思考は生まれにくくなります。
インドの古典音楽学校グルクルでは、毎年クリシュナ神の誕生日に24時間バーンスリー(横笛)を奏でます。
インドの古典音楽は神聖な存在への捧げものです。自分のエゴを手放すために、音楽はとても効果が高いものです。
バクティ・ヨガによって幸福感を育てよう
伝統的なバクティ・ヨガは宗教的な側面も強く、日本人の私たちにとっては理解が難しいと感じることがあるかもしれません。
そんな人であっても、神社に行くと神聖なエネルギーを感じて心が洗われた感覚になるという経験はあると思います。
何となく心がモヤモヤした時に神社に行くと、心がスッキリする。それが神社にいる神様なのか、大自然のエネルギーなのか分からなくても、自分自身をその空間に委ねることで、幸福感を感じることができます。
太陽、山、海といった、自然のエネルギーと一体感を感じる人もいるでしょう。
自分が身を預けられる存在を見つけたら、その「愛おしい」と感じる感覚を、もっと自分の人生に取り入れる方法を見つけてみましょう。
世界中で古代の人々は太陽や火、月や雨など、自然の力に名前を付けて偶像化することで、祈りの対象にしました。
特定の神様の名前出なくても、自分が一体感を感じやすい対象に対してバクティ・ヨガを始めてみてはいかがでしょうか。
人生の中で幸福を感じられる時間が増えていることに気が付けるかもしれません。