背後から光を受けながら海辺で合掌する女性のシルエット

暗闇から光へ。~全てのヨガは純粋な輝きを目指すもの~

世の中には様々な種類のヨガがあります。中には一見全くの別物に見えるものもありますよね。

それでは、ヨガとは総称して何なのでしょうか。

あらゆる種類のヨガに共通した概念に、不浄から清浄さへ導くものということがあります。

ヨガで不浄を取り除くとはどういうことなのでしょうか。様々なヨガの側面から見直してみましょう。

ヨガとは輝く純粋さ「サットヴァ」に導くもの

闇の中で薄明かりを手元に受ける合掌の手
有名な祈りのマントラにアサト・マーというものがあります。

asato mā sadgamaya (虚実から真実に私を導きください)
tamasomā jyotir gamaya (暗闇から光に私を導いてください)
mrityormāamritam gamaya (死にゆくものから不滅のものに私を導きください)
Oṁ śhānti śhānti śhāntiḥ (平和あれ)

ヨガの哲学を勉強した人には聞き覚えのある言葉も含まれているかもしれません。

最初の「アサト」は「サット(真実)」と否定形の「ア」の組み合わせです。アサト(真実でないもの)からサッド(真実)にマー(私)を導いてくださいというシンプルな祈りです。
ヨガの概念で3つのグナというものがありますが、1つ目のサットヴァ(純質)な状態は、真実の状態であると知っていると、理解がしやすいですね。

2行目のタマソも3グナのタマスと同様の意味です。タマスは暗質、鈍質という意味です。暗闇は視界を遮り、真実を知ることのできない無知な状態です。

このマントラを唱えると、ヨガはタマスという暗闇から、サットヴァという光の状態へと自信を清めるものだということが分かります。

サットヴァな状態を目指す

ヨガでは、この世界に存在するあらゆる物質的なものをサットヴァ・ラジャス・タマスという3つの要素(グナ)の組み合わせだと考えています。

  • サットヴァ:純粋さ。汚れがなく光を通すので真実を知る正知の状態。
  • ラジャス:激しさ、アクティブな状態。怒り、悲しみ、痛みなどの激情を伴う。
  • タマス:濁って光を通さないため暗く無知な状態。睡眠、怠惰。

ヨガでは、必ず自分の純粋さ(サットヴァ性)を高めて、真実を知る力を高めます。

サットヴァ性の状態は光輝き、幸福を感じやすい状態です。

例えばアーサナの練習をしている時、身体のあらゆる部分に意識が行き届くように練習すると思います。

日常では無意識に動かしている身体にしっかりと意識を向けて、自分自身を知ることもサットヴァ性を高める行為です。

瞑想と睡眠の違いについて悩む人も多いようですが、それもサットヴァな状態とタマスな状態で理解することができます。

どちらも思考の働きが止まっていますが、睡眠は暗闇で何も見えなくなってしまっています。

それに対してサットヴァ性の瞑想は、思考が止まっている状態であっても意識がしっかりしています。

世界を作り出す3つのグナ:サットバ・ラジャス・タマスを知ろう

5つのコーシャ(鞘)で見るサットヴァへの道

安楽座で座り背後から光を受ける女性のシルエット
ヨガは粗雑な性質のものから順番に取り除き、最後に最も微細で見にくい真実を知るという特徴があります。

掃除をするときにも、いきなり細かい汚れから取り除くことはできませんね。まずは、大きなものから順番に取り除き、掃き掃除でチリやホコリを取り除き、最後に最も細かい汚れをふき取ります。

ヨガも同じです。

今まさに骨折をして治療をしなくてはいけない時に、「心の微細な雑念を止めるぞ」と瞑想をしてもなかなか成功できません。

目の前に高熱を出した子供がいる時に、呼吸法に集中することもできませんね。

粗大な不快感から順番に取り除いて、最後に心の働きという微細なものを制御します。

人にとって1番外側にあって粗大な層は食物鞘(アンナマヤコーシャ)と呼ばれる身体です。ヨガでアーサナを一生懸命練習するのも、身体を快適で安定した状態に導くためです。身体の不快が取り除かれて初めて内側の自分に向き合えます。

身体が快適になると、エネルギーを司る生気鞘(プラーナマヤコーシャ)を整えます。プラーナーヤーマ(調気法)などにより、自分の内側に流れるエネルギーを穏やかに整え、さらに深い自分に向き合います。

次に向き合うのは自分の思考である心鞘(マノマヤコーシャ)です。制御しにくい心も、プラーナ(生命エネルギー)を整えることで少しずつ鎮まります。

思考が弱まると、さらに深くにある知性に気が付きます。それは知性鞘(ヴィジニャーナマヤコーシャ)と呼ばれます。

真実を知ることができる知性が身につくと、その先には自分の輝く本質に気が付くことができ至福鞘(アーナンダマヤコーシャ)という最も深い層に到達します。

5つのコーシャを理解し、自分のより深い内面へと意識を向ける

身体の不純性を取るヨガと、心の不純性を取るヨガ

ヨガで取り除くべき不純性について考えてみましょう。

ヨガ・スートラでは、ヨガで取り除くべき5つのクレーシャ(煩悩)について説いています。

  1. 無知(アヴィディヤー):無知は、他の全てのクレーシャの原因。私たちの苦しみの全ては、間違った妄念によって作り出されている。
  2. 自我意識(アスミター):プルシャとプラクリティを同一だと勘違いすること。
  3. 愛着(ラーガ):渇望を呼ぶ快楽・愛着。
  4. 嫌悪(ドゥベーシャ):苦痛の記憶に対する反発の感情。
  5. 死への恐怖(アビニヴェーシャ):生に対する執着。

この5つ煩悩の中で最も重要なものは無知です。

無知はタマス(暗質)な状態であり、真実が見えなくなってしまった状態です。

クレーシャ(煩悩)は苦悩を招く要因です。

私たちの人生で直面する苦しみは、真実が見えない無知が原因だとヨガは教えます。そして、冷静に真実を見極めて、思い込みの生み出す苦しみを生み出さないのがヨガです。

5つのクレーシャは精神的なタマス(暗質)の状態です。

心の中の不純性を弱めてサットヴァ性の光が増すことで、自然と苦しみが生まれにくくなります。

直接的に身体の不純性を取り除くシャット・カルマ(6つの浄化法)

物質的な身体で考えると、体内にアーマ(未消化物)と呼ばれる毒素が溜まることが、あらゆる病気の要因になってしまうと考えられます。

ハタヨガやアーユルヴェーダでは、アーマを作り出さないこと、取り除くことで身体の状態の純粋さを高めます。

ハタヨガでは6つの浄化作法(シャット・カルマ)によって、身体の中のアーマを取り除きます。

  • ダウティ:口腔・食道・胃の洗浄。3メートルほどの細長い布を飲んで、ゆっくりと取り出す。
  • バスティ:管を使って肛門から水を吸い上げ、排泄器官を浄化する。(浣腸)
  • ネーティ:柔らかい布のヒモを鼻から入れて、口から出す。または方鼻から水を入れて反対から出す。
  • トラータカ:視線を動かさずに1点を見つめる。
  • ナウリ:腹部を引っ込ませ、腹直筋を左右に動かす。
  • カパーラバーティ:かじ屋のふいごのように素早く息を吸って吐く。

教典をパッと理解〜ハタヨガ・プラディーピカ編〜

これらの作法は、体内の不純性を取り除くことで感覚器官をクリヤにして真実を知ることに効果的です。

例えば、鼻水が溜まっている状態では香りが分かりません。

ネーティで鼻孔を洗浄することで敏感に感覚を働かせることができます。

すでに体内で生まれてしまったアーマを取り除くだけではなく、胃腸の働きを向上して新しいアーマを生み出しにくくすることができます。

ヨガでは、身体を清浄にすることもとても大切だと考えます。

ヨガの時間だけでなく、朝起きたら1番に白湯を飲み、消化しやすい食事を選ぶなど、日常からアーマを生み出さない生活を心がけることが大切です。

汚れを取り除くことで明るい人生が訪れる

室内の窓辺で安楽座で座り笑顔で目を閉じる女性
ヨガとは不純性を取り除くことと聞くと、しっくりくる方も多いのではないでしょうか。

特に意識していなくても、ヨガのクラスの後には身体がスッキリとして、視界も急に赤くなると感じる人が多いと思います。

ヨガでは、今までため込んだ不純物を取り除いて、新しい自分に出会うことができます。

自分の心と体の不純性を弱めることに意識すると、ヨガ的な状態を体験しやすくなります。

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