皆さんは、ヨガやアーサナの練習をどれくらいしているでしょうか。「継続は力なり」という言葉がありますが、ヨガも続けることで得られるものが、たくさんあります。
今回はヨガを続けることで得られるものの1つを、身体の仕組みとともに、お伝えしていきます。
促通と運動学習
私たちの身体の動きは、脳からの指令が神経を通って、筋肉に伝わることで動作につながります。
そして、この「脳→神経→筋肉」の刺激の伝達スピードは、その指令を出す頻度によって変わってきます。
刺激の伝達スピードを早くしたり、1度に刺激される筋繊維の数を増やしたりすることで、筋肉量が変わらなくても、動きの感覚に変化が出てきます。
これを神経の促通法と言い、さらに比較的永続する変化に導く物、それに関連するものを運動学習と言います。
例えば、1kg の錘を持ちます。その後 10kg の錘を持ちます。そして再度 1kg も錘を持ちます。すると、最初に持った 1kg より軽く感じます。
これが神経の促通で、10kg の錘を持つ際に、刺激された筋繊維の興奮が残っているために起こる感覚の変化です。
運動学習については、自転車がわかりやすいかもしれません。
初めはハンドルを握って前に進むだけで精一杯だったのが、繰り返すうちに、別のことを考えながらでも運転できるようになります。
このように、繰り返すうちに、コツを掴んで慣れてきて、初めよりも力を抜いても同じ動作をできるようになる、という経験は、多くの人が持っていると思います。
難しいアーサナも継続で身体が覚えてくる
これをヨガに当てはめてみましょう。
初めは、難しいアーサナに対し、「そんなポーズできない、ヨガは体が柔らかい人がするもの」と考えていた人もいるかも知れません。
実際やってみても、お手本のようには身体が動かず、息も苦しい。しかし、そんな時にそこでやめてしまうと、そこからの上達はありません。
始めは苦しいと思っても、何度も繰り返していくうちにコツを掴めるようになってきます。
すると、初めにポーズを取るために注いでいた意識よりもずっと少ない意識でポーズを取れるようになります。
そして、今の自分の心の状態や、また別の細かな部分に意識を向けることができます。
この細かな部分に意識を向けることが、ポーズ、アーサナを取る目的であり、特徴であると思うのです。
継続して意識を向ける場所を増やそう
ヨガのアーサナには、ひとつひとつにたくさんのポイントがあり、それらを全て意識しながらキープし続けることは、簡単ではありません。
しかし、初めはお尻を高く上げることだけに意識を向けていたダウンドックも、練習を繰り返していくにつれ、腕を体幹から伸ばす意識や、背中の伸びにも意識を向けられるようになってきます。
できると思っているポーズも、日によって感じ方が変わるかも知れません。
大切なのは、そのポーズの見た目ではなく、意識が向いている方向の違いや、感覚の違いに気付くことです。
様々な情報や刺激が外からどんどん入って来る中、自分の内側に意識を向けることは、 意図しなければ難しくなってきています。
ヨガを通して、自分の内側に意識を向ける時間を少しでも作っていくことで、自分自身の心の余裕に繋げていけるといいですね。
参考資料
- アン・スワンソン著、プレシ南日子、小川浩一 他訳『サイエンス・オブ・ヨガ』株式会社西東社、2019年
- 中村尚人著『体感して学ぶ ヨガの生理学』株式会社BABジャパン、2017年