2022年も折り返しを過ぎ、季節は夏から秋へ、日ごとにその主役の座を交代しつつあります。日中はまだ冷房や日傘が必要でも、朝晩吹く風がもう真夏の空気とは違っていたり、いつの間にかセミの鳴き声が変わっていたり、徐々に夕暮れの訪れが早まっていたり…。夏の終わりや秋の気配を、皆さんはどのように感じながらお過ごしですか?
自律神経はわたしたちのライフライン
こうした季節の変わり目は、調子を崩しやすいと言われますが、裏を返せば “自律神経のバランス” を乱しやすい時期ということです。気温や湿度などの変化に応じて、呼吸、代謝、体温、血流、内臓といった身体機能を一日中コントロールし続けてくれている自律神経は、いわばわたしたちの “ライフライン”。
こころとカラダが健やかに機能していられるのは、自律神経が健やかに作用してくれるおかげです。
息を吸ったり吐いたり、食物から栄養を吸収して、不要なものを排出したり、体温を一定に保ったり、血流をめぐらせることで、すべての内臓器官を稼働させてくれたり…。それが起きていることが当たり前で普段は気づかないかもしれませんが、そのすべてを可能にしているのが自律神経です。
まさに24時間365日、無言で働き続けてくれている縁の下の力持ち。そう考えると、とても愛おしい存在に思えてきませんか?
マインドフルネスで、自律神経の乱れに気付く
眠りが浅くなったり、食欲や気分にムラが出たり、胃腸の調子が悪くなったり、イライラが続いたり、疲労や倦怠感が抜けなかったり…。
自律神経のバランスが乱れてしまうと、こころやカラダに様々なサインが出るものですが、その “SOS” がまだ囁き声程度のうちに耳を傾け、適切なケアをする習慣を持てれば、大きな不調を未然に防くことができるようになります。ヨガは、そういった養生にとても役立つツールの一つです。
自律神経と仲良くなることは、自分のこころとカラダ、要は肉体という形を持って “今ここ” を生きている自分自身と仲良くなること。
自分が今どんな状態でいるか、こころはどうか、カラダはどうか…。マットの上でのヨガは、その囁き声に耳を澄ませる貴重な時間。それがどんな声であったとしても、まずは「あー、そうなんだな」。善し悪しの判断をせず、そのままに寄り添うことは、マインドフルネスそのものです。
呼吸を整えること=自律神経を整えること。
呼吸と自律神経は密接につながっているため、呼吸に気づきを向ければ、自分が今どんな状態でいるかが分かります。
呼吸が滑らかなのか、途切れがちなのか。呼吸が遅いのか、速いのか。深いのか、浅いのか。息を吸いやすいのか、息を吐きやすいのか…。あるがままの呼吸を見つめることは、あるがままの自分に気づきを戻すこと。ヨガを “生き方”、“在り方” そのものと捉えれば、そういった自分との向き合い方はマットの上に限定されず、自ずと日常に広がっていきます。
自分が今どんな呼吸をしているか。つまりは、自分が今どんな状態でいるか。普段の慌ただしい生活の中で、果たしてどれだけ気づくことができているのでしょうか。
生きることは「息る」こと。
知らぬ間に息を止めてしまっていたり、つい呼吸をないがしろにしてしまうことも珍しくないからこそ、一日のうちでたった一呼吸であったとしても、吸う息の始まりから終わりまで、吐く息の始まりから終わりまで、そしてその間に生じているほんの短い隙間まで細やかに感じてみる…。それだけで、こころやカラダの反応が自然と変わるのを実感できるはず。
わたしたちは息を吸うと自律神経のうちの交感神経が優位になり、息を吐くと副交感神経が優位になります。吸う息、吐く息、一日に2〜3万回くり返している呼吸は、自律神経のバランスを整える頼もしい味方でもあるのです。
生きることは「息る」こと。
丁寧な呼吸は丁寧な生き方に、伸びやかな呼吸は伸びやかな生き方につながっていくのだと思います。
“When you own your breath, nobody can steal your peace.”
~Author unknown「呼吸を味方にしていれば、あなたの平和を奪うものは何一つなくなります」
(作者不明/和訳: 川原朋子)