みなさんはヨガのレッスンや、ご自身でおこなうヨガプラクティスの際、鏡は使っていますか?
鏡を使うことにより、自分のポーズをしっかり確認しながらヨガを行う事ができるという利点がある一方、実は鏡に頼りすぎることで反対に欠点になる部分もあります。
今回は、視覚に頼りすぎずに、ご自身の体を使いこなすために必要な力についてお話ししていきます。
五感の中でも刺激の強い「視覚」
わたし達の感覚器は5感と呼ばれ、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚の5つが存在します。
この中でも、視覚は認知機能の80%を占めるとも言われ、わたしたちは多くの情報を視覚に頼って生活しています。
目からの情報はとても刺激的です。視覚からの情報があるときは、他の機関からの情報を感じにくくしてしまうほど影響力が強い感覚です。
例えば、繊細な味を感じたい時、小さな音を聞き分けたい時、匂いの違いを感じたい時、わたし達は自然と目を閉じています。
これは、最大の情報源である、視覚の情報を一旦止めることにより、その他の機関からの情報により意識を向けやすくなります。
実は視覚に頼って動いている
身体を動かすときも、視覚の情報はとても大きく影響します。
例えば、鏡の前に立った状態で、目を閉じます。
次に、ご自身の感覚で、両腕が水平に伸ばせたと思う位置で腕を止め、目を開いてみましょう。
左右同じ高さで、床と水平に手を伸ばせているでしょうか?
ご自身の内側から感じる感覚と、実際の体の動きに、少なからずズレがある方も多いかと思います。
ただ、手を水平に伸ばすことですら、鏡なしではできないようでは、自分の意識だけで、身体を思い通りに動かすことは難しいはずです。
感覚に合わせて身体を動かす
大切なことは、ご自身の内側の感覚と、実際の体の動きを擦り合わせていくことです。
この練習には、ヨガが大変有効です。
普段の生活ではなかなかとらない格好もアーサナの中には多く含まれており、これらの内部感覚と、実際の動きを揃えていくことで、思った通りに身体を動かしやすくなります。
そのためには、ご自身の動きやアーサナを鏡で確認したり、動画に撮ったりして、確認してみることがおすすめです。
まずは両手をまっすぐ上げた状態を鏡で確認し、目を閉じます。
その感覚を体で感じておぼえます。
一度手を降ろしてから、再度目を閉じて、内側の感覚を頼りに、手を上げていきます。
鏡で確認できない、目線が上下に向くポーズ(ヴィラバドラアーサナ3、アンジャネーヤアーサアナ)や、頭が下になるポーズ(シルシシャーサナなど)は動画に撮って確認してみるのがいいでしょう。
思い通りに身体を動かそう!
簡単な動きでも、目を閉じると再現できないことに驚かれた方も多いのでは無いでしょうか?
「目は口ほどに物を言う」「百聞は一見にしかず」ということわざにもあるように、昔から人は多くの情報を視覚に頼りながら生きてきました。
視覚の情報が入りやすく、刺激的であることは当たり前なのです。
だからこそ、視覚以外からの情報で身体を動かせるようになるためには練習が必要です。
ヨガだけでなく、普段の姿勢や動作でも、ご自身の思い通りに身体を動かせるようになることで、不調の解消や動作改善が見込めるかもしれません。
是非、今のご自身の感覚と動きの違いを確認してみて下さい。
参考資料
- 中村尚人著『体感して学ぶ ヨガの生理学』株式会社BABジャパン、2017年