健康の維持・向上、心の安定、美容など、さまざまな目的でヨガをされている方が多いかと思いますが、海外ではすでに医療の補助や代替ケアとしても注目されています。
文献検索サイトに「Yoga」と入力してみると、2022年6月末までで約7,000件の報告がされていて、科学的な視点からもヨガの効果が確認されつつあります。
今回は「子どもたちのケア」とヨガの関連について、アメリカの学校教育現場へのヨガプログラム導入に関する2015年の調査の事例について紹介します。
研究の背景・目的:学校に導入さるヨガプログラムについて知る
ヨガのような心と身体を用いた練習は、幼少期や思春期の子どもたちにとっても、心と身体の両面の健康に対して良い効果があると、すでにいくつもの研究で報告されています。
アメリカにおいても学生の心身の健康や潜在能力を引き出すことを目的として、学校教育へヨガや瞑想の部分的な介入が実際に開始され期待がもたれています。
過去の研究結果においては、瞑想の練習によって脳の構造や機能の変化を促し、自己管理・自己制御、向社会的な行動、パフォーマンス向上を引き出すなど、子どものスキル向上にとって様々な可能性があることが言われてきました。
ヨガや瞑想の導入は、アメリカの公教育の質向上の視点からも、大切な役割を果たすことが考えられます。
すでに多くのアメリカの学校に導入されつつあるヨガプログラムについて、各校の状況を確認し比較検討すること目的としました。
研究の方法:「学校で行われるヨガ」をキーワードに
この調査は2013年1月から2014年4月の間に行われました。
「学校で行われるヨガ」をキーワードに、オンライン、電子メールや電話等による聞き取り、データベース検索などの方法によって調査を実施しました。
ヨガプログラム調査項目には以下の8つを含みます。
- 対象となる学年
- プログラムの内容や提供場所(教室か、広場や体育館か、若しくはその両方で行われるか)
- 地域・地区
- 公式トレーニングを受けたインストラクターの人数
- 学校のヨガプログラムのためのトレーニングを受ける前に必要な基本的なヨガ教師としての資格要件の有無
- 学校のヨガプログラムのために要求されるトレーニング時間数
- これまでにプログラムを導入してきた学校数
- これまでにプログラムを提供してきた期間、年数
研究の結果・結論:公教育の現場へのヨガ導入の広まりに期待
アメリカにおいて、36の団体が学校でのヨガプログラムを、その団体によって2~21年間(平均9年間)に渡り提供してきました。
すでに940校にヨガプログラムが導入されており、各団体が提供する学校でヨガを教えるためのトレーニングを受けたインストラクターは5,400名以上にのぼります。
大きな団体では導入始動に向けてクラス内容例も含めてカリキュラム化がされているところもあれば、小さな団体においてはマニュアル化がされておらず、各インストラクターがガイドラインに沿ってクラス内容を作成するような場合もあります。
また、子ども向けのプラグラムのほか、多くの場合で保護者や教師、学校スタッフ向けのヨガ指導も含まれていました。
75%(36のうち27)の団体で幼稚園など未就学児から12学年(日本の高校生)までの学年に対するヨガプログラムを提供しており、残りの25%の団体においては小・中学生と高校生を注視した内容でした。
いくつかの団体では年齢層ごとに分けたクラスマニュアルを提供しているところもありますが、ほとんどのマニュアルではインストラクターが教える子どもたちの学年レベルに合わせて適切に変更することができます。
授業と授業の合間の休み時間に教室で行われる「ショート・ヨガ・ブレーク」や、体育の時間や放課後を利用した30~45分間の一般的なヨガクラスが種類として挙げられました。
各団体間で提供するヨガのスタイル、要求されるトレーニングのレベル、対象学年などに違いはあるものの、大部分のプログラムでは、ヨガの基本である以下の4つの要素に共通して重きが置かれていることが分かりました。
- ヨガのポーズ
- 呼吸法
- リラクセーションの方法
- マインドフルネス・瞑想練習
ヨガプログラムの体験を通じて、個々の子どもたちの精神的身体的な健康、社会性情動的スキル、クラスでのふるまい、成績など、学校生活において必要不可欠なスキルが養われることにつながると考えられています。
今後も公教育の現場へのヨガ導入の広まりに期待がされます。
日本においても「キッズヨガ」は認識が広まりつつある段階かと思います。
子どもの心身の発達への効果はもちろんのこと、親子で一緒に行うヨガで、楽しい時間を共有するきっかけとなり、より絆が深まることにもつながりそうです。