海辺でアップドッグを行う女性のすがた

太陽礼拝で明るい1日を始めよう~スーリヤ神から受け取るエネルギー~

ヨガの練習の最初に太陽礼拝(スーリヤ・ナマスカーラ)を行う人は多いでしょう。

この太陽礼拝、身体全体を使えて本当にスッキリしますし、エネルギーが高まるのを感じることができますよね。

ところで、ヨガのアーサナの練習には運動だけの効果ではなく、哲学や思想、神話などが組み込まれていることがあります。

スーリヤ・ナマスカーラのスーリヤも元々はインドの太陽神の名前です。そんなお話を知っていると、ヨガの練習がもっと楽しくなるかもしれません。

エネルギーを与えてくれる太陽神スーリヤ

太陽を司る神様スーリヤを模した建築装飾
古代のインドでは、自然現象に対して固有の神様として名前を付けることがありました。

スーリヤ・ナマスカーラ(太陽礼拝)のスーリヤは、太陽を司る神様の名前です。
マントラの中ではサヴィトリ(刺激を与えるもの)という別名で呼ばれることもあります。

スーリヤは蓮の花をもち、7頭の白馬がひく馬車に乗って天空を駆け回ります。

現代では、ヴィシュヌ神と同一視されることもあり、額に U字が描かれていることも多いです。

ロマンティックなスーリヤと恋人の神話

スーリヤにはウシャスという恋人がいます。

ウシャスは暁(あかつき)を司る若くて美しい女神で、古代インドでは重要視されていました。

ウシャスは日の出前の時間の空を輝かせ、闇を払い、人々や動物を目覚めさせます。

スーリヤ神はいつもウシャスの後を追いかけます。

スーリヤが追い付いてウシャスを抱きしめると、ウシャスは消え去ってしまうのですが、翌朝には必ず決まった方角からウシャスは姿を現します。

そのため、毎日生まれ変わる女神として知られています。

ところで、ウシャスにはラートリーという姉がいますが、ラートリーは夜を司る女神です。

ウシャスとラートリーは一緒に祀られることが多く、暁(夜明け)と夜が対比としてセットで考えられていたのは興味深いです。

インドのプージャ(儀式)は太陽神のエネルギーを得るもの

インドの男性たちが火が灯る飾り物を掲げて歩く宗教儀式の様子
ヨガ発祥の国インドでは、お祭りのときや、人生の節目にプージャと呼ばれる宗教儀式を行います。

ほとんどのプージャでは、護摩(ホーマ)と呼ばれる、火を燃やす儀礼をおこないます。

これは日本に伝わる仏教にも伝承され、特に密教系の宗派で多く盛大に行われていますが、
護摩は古代インドのバラモン教時代から続き、現代のインドでも日常的に行われています。

決められたマントラを唱えながら、火の中にギー(精製バター)や香物、お米などを捧げていきます。

実はこの護摩(ホーマ)は、太陽神を招く儀式でした。

太陽神スーリヤは天界に輝く存在ですが、そのスーリヤが与えてくれるエネルギーを地上に持ってきたものがアグニ(火)です。

太陽を直接お呼びすることはできませんが、自宅やお寺で護摩法要を行うことによって、太陽のエネルギーを自分たちの身近に導くことができます。

日常にあふれる太陽エネルギー

インドでは、私たちが必要とする生命エネルギーは全て太陽が与えてくれるものだと信じられています。

実際に、私たちが毎日食べている植物は、太陽の光によって光合成をおこない、エネルギーを生み出していますね。

地上の熱も、太陽が照らしてくれることによって与えられています。

太陽のエネルギーは地上の世界のあまねく場所に満ちています。

日常の生活に意識を向けてみましょう。

世界を輝かせてくれる全ての光はスーリヤが与えてくれます。光によって私たちは正しい知識を得ることができます。

食事を調理するための火(アグニ)も太陽そのものです。暖かい食事を食べる時にも感謝が湧いてきますね。

夜灯したキャンドルの光によって心が満たされるときもしかり。

自分自身の体温を感じる時にも、それは太陽が与えてくれたものです。

太陽の熱によって海の水は蒸発して、雲となり、雨や雪となって地面を潤します。

潤った地面から植物が芽吹き、新緑が輝きます。植物も、太陽のエネルギーを受け取るために一生懸命上方に育ちます。

そうして育った植物から野菜や果物を頂きます。植物も人も動物も、太陽のエネルギーに満ちていきます。

太陽は、日中に空で輝くだけのものではなく、私たちの全てを与えてくれているのですね。

だからこそ、あらゆる幸福を願って行われるプージャ(儀礼)には必ず火が使われます。太陽は豊穣を導いてくれるものであり、闇を取り除いてくれるものです。

体内の太陽エネルギーであるアグニ(消化の火)

この太陽のエネルギーであるアグニは、体内にもあります。それは消化のエネルギーです。

体内のアグニ(火)は、マニプーラ・チャクラのある腹部に存在します。

ヨガのアーサナでは、体内のアグニの力を強めるための沢山のアプローチが行われています。

前屈や体をひねるようなアーサナでは、腹部のエネルギーの滞りが無くなって炎が燃えやすくなります。

カパーラバーティやアグニサラ、ナウリといった腹部を大きく動かすヨガも一気に炎を強めます。

また、ウッジャーイ呼吸(勝利の呼吸)なども、体内の熱を生み出すのに有効です。

アーユルヴェーダでは、朝1番に白湯を飲むなど、朝食前にアグニ(消化の火)を呼び起こす習慣を勧めています。

体内のアグニは健康にとって最も重要なものです。

生きる活力を与えてくれるだけではありません。アグニの力が弱まると、食べたものを完全に消化しきることができず、体内に未消化物として残ったものは毒素となって不調の原因となります。

最近元気がない人、不調を感じている人は、ヨガやアーユルヴェーダでアグニを活発に整えるアプローチをするといいでしょう。

太陽礼拝で明るい1日を始める

太陽礼拝は出来れば夜明け前の早朝か、難しければ午前中の朝食前に行うといいでしょう。

早起きは大変だと感じるかもしれませんが、その日1日をスッキリとエネルギッシュに始めることができます。

太陽礼拝をおこなう時には、エネルギーを与えてくれる太陽への感謝と、そのエネルギーが自分の内側に満ちていくのを感じて行うようにしましょう。

スートラ・ナマスカーラのナマスカーラは、インドの挨拶である「ナマステー」と同じです。相手のことを尊敬して、挨拶をします。

インドでは、ちょっと改まった時に「こんにちは」を「ナマスカール」と言います。挨拶には常に相手への尊敬の意が込められているのですね。

太陽礼拝の最初に手を高く上げる時には、しっかりと地面に足を付け、太陽に向かって高く伸びていき、その中間の地上階にも満ちていくエネルギーを感じましょう。

そして、深く頭を下げてお辞儀をして、地面にひれ伏します。

尊敬する対象に対して自分を低くする行為は、エゴ(自我)を弱めるバクティ・ヨガ(信愛のヨガ)にも通じます。

太陽礼拝を繰り返し行うことにより、自分の内側に流れるエネルギーが高まっていくことを感じられますね。

「自分が身体を動かしたから代謝が高まった」というエゴではなく、太陽のエネルギーを頂いて一体になれた喜びを感じられるようになると、感謝と幸福が高まってきます。

毎日行う太陽礼拝なので丁寧に

太陽に向かって両腕を上げて手を合わせる女性の後ろ姿
ヨガを実践している人にとって、太陽礼拝は毎日行う練習です。

最初の準備運動だと思っていると、もったいないですね。

毎日繰り返して行うことだからこそ、丁寧に、意識を高めながら練習すると、受け取れる効果も感じやすくなってきます。

ちょっとした意識の変化が、ヨガをもっと楽しくしてくれるコツです。

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