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ヨガは本当の自分に出会うための道であると言うことができます。
誰もが「自分らしく生きたい」「あるがままの自分を受け入れたい」と考えたことがあると思いますが、”自分らしい”とはどのような状態なのでしょうか?
自分らしさが分かっていないと、自分らしい人生を歩むことができないですね。
今回は、ヨガで見つける自分らしさがどのようなものなのかを考えてみましょう。
自分の知っている自分は思い込みかも
みなさんは、自分のことが好きでしょうか?
誰でも、自分の好きな部分もあれば、嫌いな部分もあると思います。仕事をしている時の自分は好きだけど、自宅にいる時の自分はだらしがなくて好きではないと考える人もいるかもしれません。
ところで、今考えてみた自分像は本当の自分なのでしょうか?
もしかしたら、今、生活している環境や社会的な立場によって作り出された仮面でしかなく、本当の自分は、自分にも見えていないのかもしれません。
例えば子供の時を思い出してみましょう。
親の前だと、ついついわがままを言ってしまうこともありますよね。学校ではちゃんと先生の言うことを聞いているし、友達にも優しくしているけれど、家の中では両親に怒られてばかりだし、兄弟とも喧嘩してばかりだとします。
母親に怒られた時にどう思うでしょうか?
「私だってちゃんとしているし、学校の友達よりもちゃんと先生の言うことを聞いている。本当は私はできる子なのに、お母さんは私のことを何も分かってくれない。」
本当はちゃんとできるのならば、怒られないようにすればいいのでしょう。しかし、どうも恥ずかしかったり意地を張ってしまって、ついついわがままを貫いてしまうこともありますよね。
家の中ではまだ甘えたいし、わがままも言いたい自分。外ではルールを守れるし、大人にはちゃんと敬語も使える自分。
どちらの自分も自分なのですが、どちらが本当の姿なのかと聞かれれば、どちらももの足りなさを感じます。
家にいる時はもっと両親に認められたいと思い、学校にいる時には良い子だと期待されすぎて本当はプレッシャーを感じていることを周囲に言えなかったりします。
私たちは、1度身に着けてしまった仮面を付け替えることを極端に怖がります。
その結果、周囲の環境や社会的な立場によって作られた自分像を「これが自分」だと思いこんで、脱げなくなってしまいます。
それなら、いっそ環境を変えた方が、本当の自分らしくなれることもあります。
地元ではすでに出来上がってしまった自分のイメージから抜け出せず、進学や就職のタイミングで別の都市に移住して、今までと全く違う自分になることもできます。
しかし、自分らしく生きるためにと、簡単に引っ越しをすることもできない人が大半でしょう。
だからこそ、ヨガで社会と自分を切り離す時間がとても大切です。
ヨガは社会的な自分を手放す時間
ヨガの時間は、外の世界と自分を切り離す時間です。
ヨガの時間がどうして心地いいのかを考えてみましょう。
ヨガの教室の中は、外の世界と完全に切り離されていて、安全で、守られています。
ヨガのクラスに行く直前には、会社で嫌なことがあったかもしれません。意識は常に外に向いていて、自分を守るために緊張を解くことができないかもしれません。
しかしヨガの時間は、外に向けた緊張を緩めることができます。自分自身の身体や心、感覚器官といった内側に意識を向けることができます。
それは、ヨガをする場所が安全な場所だからです。
ヨガを練習することによって初めて自分の心に気が付く
ヨガを始めると必ず穏やかな自分になれると思う人が多いと思いますが、逆に感情が高まってしまう人もいます。
それはどうしてでしょうか?
きっと今まで、周囲のことを気にしすぎて自分の感情に意識を向けることができなかった人が、意識を内側に向けることを学ぶことによって、急激に自分の感情に気が付いてしまうのかもしれません。
その結果、今まで平気だったことに心が囚われてしまうこともあります。
急に感情が沸き上がってきて、涙があふれてしまうこともありますし、今までよりも承認欲求が高まってしまったり、開放的な気分になって若々しい服装を好んだりする人もいるでしょう。
ヨガのイメージと対極に見える変化を体験する人もいるかもしれませんが、それは今まで社会に適応するために我慢してきた自分の心の現れです。
急に粗ぶってしまう感情に戸惑いを抱くこともありますが、それも自分の一部だと受け入れて、できるだけ俯瞰して見るようにしましょう。
ヨガを続けていくと、一時的に激しくなった感情も必ず落ち着きを取り戻します。
その時には、自分の心との対話を楽しめるようになっているでしょう。
最終的には思考も手放すヨガの練習
ヨガは、いくつかのステップを踏みながら本当の自分を探していくものです。
まず、ヨガの教室に来ることによって、会社や家族などの社会生活と自分を切り離します。そして、アーサナから徐々に自分に意識を向ける練習を行います。
最初は自分の身体に意識を集中させるところから始めます。自分を客観的に観察し、自分の身体の癖や、弱いところを知っていきます。
ヨガのアーサナによって身体の安定が得られると、さらに内側の思考にも意識が向くようになります。
アーサナを行っている時の心の働きを客観的に見られるようになると、自分の思考のパターンに気が付きます。
このアーサナをしているときには「上手くバランスが取れないのに、1秒でも長くホールドしたいと欲張っている」といった、心の中の動きが分かるようになってきます。
アーサナの時に感じる思考のパターンは、実は日常での心の働きとリンクしています。
何でもそつなくできる人と見られたくて大変な時でも踏ん張ってしまったり、ちょっとでも苦しいと早く解放される逃げ道を考えていたり、人によって様々な思考の癖が見えてきますね。
自分の思考のパターンが理解できるようになると、自分の人生での上手くいかない原因も見えてくるでしょう。
例えばいつも失敗を恐れてチャレンジができない人は、アーサナでは少しずつ恐怖心を手放して挑戦をして、小さな成功の経験を積むことができます。
今までできなかったことに挑戦して、できるようになったという体験が繰り返されると、ヨガ以外の時間でも挑戦ができるようになってきます。
今まで感じていた恐怖心を手放すことは簡単ではありません。しかし、少しずつでも自分の体験を通して学んだことは、確実に人生を変えてくれます。
心の癖さえ手放したときに見える本当の自分
「ヨガの練習を通して、自分の心を知って、その心のパターンを手放したら、自分らしさはなくなってしまうのでは?」と思った人もいるかもしれません。
しかし、本当の自分は思考の癖を手放したときに初めて現れてきます。
今まで「私はこういう人間だから」という枠を作っていた自分が弱まってくると、本当の自分は枠に当てはまらない自由があるのだと知ることができます。
自分に与えられた無制限の可能性に気が付くことができた時、初めて本当に生きたかった自分自身を知ることができるでしょう。
思考で考えた自分はいつも「こんなこと無理」と思い込み、間違った道を選んでしまいがちです。
自分の思考のパターンを知って、それを克服し、今まで出会うことのできなかった自分を体験できるといいですね。