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身体の中にある5つのエネルギーポイントであるチャクラについて知ることは、ヨガの練習を深めるためにとても役立ちます。
しかし、チャクラは目に見えないエネルギーの集まりであるため、とても曖昧で、流派によって考え方が違うこともあり、
現在広まっている教えにも仏教系のタントラを基にしたものや、タントラから派生したハタヨガを土台にしたものなど、様々なものがあります。
今回ご紹介するのはその中でも、エネルギーを理論的に説明するスヴァラ・ヨガの教えをご紹介します。
シヴァ・スヴァローダヤとは
『シヴァ・スヴァローダヤ』は、シヴァ派の経典です。ヨガの最初のグル(師)と言われるシヴァ神と妻であるパールバティ女神との会話形式で書かれています。
シヴァ神は物質世界の発生についてパールバティ女神に説きます。
世界に存在する5つの要素
シヴァ神によると、世界は偉大な創造主が生み出したマーヤー(幻影)だそうです。
最初に創造主自身からアーカーシャ(空)が発生しました。アーカーシャは空間や虚空を意味します。
そしてアカーシャ(空)からヴァーユ(風)が発生します。次にヴァーユ(風)からテージャ(またはアグニ・火)が生まれ、テージャ(火)からアパス(水)、アパス(水)からプルッティヴィ(地)が生まれます。
アーカーシャ(空)、ヴァーユ(風)、テージャ(火)、アパス(水)、プルッティヴィ(地)の5つの要素が元になって、私たちが生きている世界の全てを作り出しています。
5つの要素を見ると、発生した順番からサットヴァ(純質)が高く、ラジャス(激質)が加わり、最後の地ではタマス(暗質)の特徴が高くなります。
それぞれの特徴を見てみましょう
アーカーシャ(空):限りなく軽い・限りなく微細・視界が明るい・広がる・無限の可能性
ヴァーユ(風):軽い・乾燥・動きのある・冷え・少し粗い
テージャ(火):熱い、痛み、軽い、活動
アパス(水):重たい、柔らかい、粘質、油っぽい、重たい
プルッティヴィ(地):重たい、透明でない、硬い、光を通さない
人間の身体の中にも5つの要素が存在
物質世界は全て5つの要素によって作られていますが、人間の身体の中にも5つの要素が存在します。
5つの要素は身体全体に行き渡っていますが、その中でも身体の背骨沿いにある5つのチャクラを中心に働きます。
1番重たい地の要素は身体の土台であるムーラダーラ・チャクラに存在し、1番軽いアーカーシャ(空)は喉元のヴィシュダ・チャクラに存在します。
ヴィシュダ・チャクラの上には眉間の高さにあるアージニャー・チャクラがありますが、アージニャーは物質的な要素ではなく知性であるブッディが宿り、頭頂のサハスラーラ・チャクラは宇宙意識であるブラフマン、もしくはシヴァ神が宿ります。
それぞれのチャクラと5つの要素の特徴
それでは、それぞれのチャクラと5つの要素が、どのような関係性があり特徴があるのかを見ていきましょう。
チャクラは最も本能的な人間の土台となるムーラダーラ・チャクラから順番に数えられます。
1:ムーラダーラ・チャクラとプルッティヴィ(地)
「地」の要素はムーラダーラ・チャクラの位置に存在し、肛門の位置近くにあるスシュムナーの入り口と関係しています。
「地」は黄色く四角です。また、「地」は香りに関係するので、嗅覚である鼻の機能を司ります。また、肛門(排泄機関)に関係します。
メンタル的には恐怖症などの原因となります。そういった問題は、ムーラダーラ・チャクラへの瞑想で解消されます。
「地」の要素への瞑想は、夜の1/4が終わった時刻に静かな場所に座り、四角く黄色いエネルギーを念想しながら Lam のマントラを唱えて行います。
2・スヴァディシュターナ・チャクラとアパス(水)
「水」の要素はスヴァディシュターナ・チャクラの位置に存在します。
スヴァディシュターナ・チャクラは生殖器官に関係します。「水」の要素の色は白で、形は半月です。味覚を司り行動器官は舌です。また、バランスが崩れると感情的な混乱を招きます。
「水」の要素への瞑想は、ムーラダーラ・チャクラと同様に座り、白い半月をイメージながらVam というマントラを唱えます。
この瞑想によって食欲と喉の渇きは緩和され、忍耐力が身に付きます。また、この瞑想によって水中で自由に動くことができるようになります。
3・マニプーラ・チャクラとテージャ(火)
「火」の要素はマニプーラ・チャクラの位置に存在します。
「火」の要素の色は赤色で、三角形です。視覚に関係します。この要素のバランスが崩れると、怒りやすくなり、身体が浮腫みます。
「火」の要素が整うと消化不良や胃の不調が緩和され、またクンダリーニ(潜在能力)の覚醒を助けます。
「火」の要素への瞑想は、Ram のマントラを唱え、三角形の形と赤く燃える火などの輝きを念想します。この要素を悟ることによって、火などの猛烈な熱さに耐えられるようになります。
4・アナーハタ・チャクラとヴァーユ(風)
「風」の要素はアナーハタ・チャクラの位置に存在します。
「風」の要素の色は緑で、六角形もしくは丸(まる)の形です。触覚に関係し、皮膚や手といった感覚器官を司ります。「風」の要素の不調は喘息などを引き起こします。
「風」の要素への瞑想は、Yam というマントラを唱え、丸い緑の光を念想します。この要素を悟ることによって、空中で自由に動き回ることが可能になります。
5・ヴィシュダ・チャクラとアーカーシャ(空)
「空」の要素はヴィシュダ・チャクラの位置に存在します。
青く、楕円形または形がないと考えられます。音の感覚と耳に関係し、行動器官は話すこと(舌)です。
「空」の要素への瞑想は、Ham というマントラを唱え、ヴィシュダ・チャクラの青色を念想します。
「空」の要素を悟ることによって、過去と未来を知ることができます。
5つの要素のまとめ
これらの要素への瞑想を6ヵ月間続けることによって、ヨガの実践者は悟りを得ることができます。
それぞれのチャクラと5つの要素の特徴を表にまとめました。
要素 | チャクラ | 形 | 感覚 | 味 | マントラ |
---|---|---|---|---|---|
地 | ムーラダーラ | 四角 | 嗅覚 | 甘い | Lam |
水 | スヴァディシュターナ | 半月 | 味覚 | 辛い | Vam |
火 | マニプーラ | 三角 | 視覚 | 苦い | Ram |
風 | アナーハタ | 六角か丸 | 触覚 | 酸っぱい | Yam |
空 | ヴィシュダ | 楕円 | 聴覚 | 刺激性 | Ham |
チャクラと5つの要素をヨガの練習に活かす
人は5つのチャクラが整った状態であることで、健康で平穏な人生を送ることができますが、身体や心に不調があると、その部分からバランスが崩れてしまいます。
生活のストレスや生活習慣、姿勢などの様々な要因によって、各チャクラに不調が現れて、心と身体の両方に疾患が現れてしまいます。
チャクラを深く知ることによって、今の自分にどのような不調があるのか気が付きやすくなります。
上手くエネルギーが回っていない部分を整えるためのアーサナや呼吸を心がけると、自分に必要なヨガが見えてきますね。
参照:Shiva Svarodaya With English Translation, Ram Kumar Rai著,Chowkhamba Sanskrit Series Office, 1980年