『ヨガは体が柔らかい人がするもの』
『私は身体が硬いからヨガには向いていない』
こんな言葉を耳にすることがあります。
しかし、結論から言うと、身体が硬い人にこそ、ヨガをお勧めします。
身体が固いとは何か?
そもそも、身体が硬いとはどういう状況なのでしょうか。
身体の柔軟性を評価する場合に、1つの指標となるのが、関節の可動域です。
関節は骨格筋の収縮により動いています。
この骨格筋はゴムのように伸び縮みしますが、長期間使わず、長さが変わらないと、劣化し硬くなってしまします。
これが関節の可動域を狭め、身体の硬さにつながっていきます。
さらに、私たちの筋肉には、突然の強い伸びに対して、損傷を防ぐために、それ以上筋肉が伸びないようにロックする筋紡錘という仕組みがあります。
このロックは生態防御機能として生まれつき備わっているものなので、とても強い力を発揮します。
劣化し硬くなった筋肉は、少しの伸びで、損傷の危険を感じ、筋紡錘が働くことがあります。
そのため、硬くなった筋肉に急に強い刺激を与えることは、思わぬ怪我につながる場合があります。
身体は日々生まれ変わる
しかし、安心してください。私たちは血の通った生物です。
生きている限り、絶えず細胞が生まれ変わっています。古い輪ゴムのように、劣化してしまったら終わりではありません。
硬くなってしまった筋肉も、少しずつ刺激を与えていくことによって、生まれた時に持つ、本来の柔軟性に近づけることができます。
アーサナで身体を活性化させる
それぞれが持つ本来の柔軟性に戻していくために有効なのがヨガです。
私たちの身体は意識を向けた部分は活性化し、意識しない部分は退化していきます。
ヨガは、ポーズ(アーサナ)をとりながら、全身に意識を向けていくため、身体の活性化に効果的です。
プラーナで筋肉のロックをはずす
ヨガが柔軟性向上に有効なもう1つの理由は、「呼吸」です。
ヨガで呼吸は「プラーナ」といいエネルギーの流れを意味します。
動かしたい場所に意識を向けながら、呼吸により体にエネルギーを循環させていきます。これが、筋肉のロックをかけずに刺激を与えていくことに役立ちます。
今まで使っていない筋肉を伸ばそうとする際、初めは少しの伸びで痛みを感じることがあるかもしれません。
そんな場合にも「呼吸ができる範囲で」少しずつ伸ばしていくことで、身体にとって損傷につながるほど強い伸びはないことを知らせながら、ゆっくりと硬くなった筋肉に刺激を与えていくことができます。
ヨガを続けて柔軟な身体に戻そう!
筋肉が硬いままでは、関節が思ったように動かせないことで、痛みが生じたり、怪我につながったりすることもあります。
身体の柔軟性を向上させることは、新たな挑戦ではなく、本来の状態に戻っていくことです。
そして、その過程が全身の活性化につながり、身体能力の向上につながっていきます。
ヨガは続けることで柔軟に伸び縮みする筋肉に戻していくことが期待できます。
是非「呼吸ができる範囲」で少しずつ、伸びを感じてみてください。
参考資料
- サイエンス・オブ・ヨガ
著者 アン・スワンソン
監修者 高尾美穂
翻訳 プレシ南日子 小川浩一 瀧下哉代
世波貴子 薮盛子 石黒千秋 浦谷計子
出版社 株式会社 西東社
2019年11月25日発行 - 体感して学ぶ ヨガの生理学
著者 中村尚人
監修者 新倉直樹
出版社 株式会社BABジャパン
2017年7月10日発行 - カラー図解 人体の正常構造と機能
【全10巻縮刷版】
総編集 坂井健雄・河原克雅
発行者 梅澤敏彦
発行所 日本医事新報社
印刷 ラン印刷社
2012年1月11日改訂第2版発行