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ヨガと聞くとアーサナ(ポーズ)やプラーナーヤーマ(調気法)で呼吸をコントロールする練習が真っ先に思いつくと思います。
このように身体を使ったヨガはハタヨガと呼ばれる古典的なヨガから派生したと考えられています。
練習しているだけでも効果の高いヨガですが、源流であるハタヨガの理論を知っていると、さらにヨガが深まります。
今回は、ヨガの練習に活きるハタヨガの理論をご紹介します。
身体を使って学びを深めるハタヨガ
現代では本当に沢山のヨガの流派があります。
特にアーサナ(体位法)と呼ばれるヨガのポーズを行うものが主流になっていますが、このようなヨガはハタヨガという古典的なヨガを元にして派生したと考えられています。
ハタヨガは10世紀ごろに聖者ゴーラクシャナータによって体系化されたヨガの流派です。
ハタヨガ以前にもヨガはありましたが、『ヨガ・スートラ』で知られるラージャ・ヨガのように瞑想を中心としたヨガや、学問によって悟りを得るギャーナ・ヨガ、過酷な修行によって解脱を目指すタパス(苦行)など、現代の私たちが親しんでいるヨガとは少しイメージが違うものが多かったです。
ゴーラクシャナータによって体系化されたハタヨガは15世紀頃により普及して様々な教典が書かれました。
ハタヨガではアーサナ(体位法)・プラーナーヤーマ(調気法)・ムドラー(印)・ラージャヨガ(瞑想)の4段階の練習を行います。
特に様々なポーズを行うアーサナと、呼吸によって心をコントロールするプラーナーヤーマは、現代のヨガの中心的な練習になっています。
このハタヨガは、それまでにあったラージャ・ヨガやタントラ(密教)、ヴェーダンタ哲学など、いくつもの流派の知恵を織り交ぜながら独自のスタイルを作り上げています。
そのため、ハタヨガの目的とアプローチ方法、効果を理解するためには、古代から伝わってきた教えを知っているとより深く学べます。
ハタヨガはエネルギーのコントロール
現代のヨガでは解剖学的な知識も学んで身体と心の健康を考えることが多くなっていますが、古典的なハタヨガでは体内に流れるエネルギーの流れをより重要視していました。
私たちの身体の中を流れるエネルギーをヨガの言葉でプラーナ(気)と呼びます。
ハタヨガではエネルギーの流れが滞ると健康に悪い影響があると考えます。
そのため、エネルギーをコントロールすることと、エネルギーの流れる気道の清浄さが重要だと考えます。
プラーナ(気)の流れに意識を向ける
古典ヨガで重要視されるプラーナ(気)は目に見えないものですが、血液に例えるととても分かりやすいです。
血液が正しく流れるためには、血管が健康であることが大切です。
血液がドロドロであったり、コレステロールがたまって血管が詰まったりすると血液の流れをさえぎってしまいます。
血管を清浄に保つことが健康のためにとても大切であることと同様に、体内を流れるエネルギーが通る気道に汚れを溜めないことも重要です。
プラーナ(気)の流れる道(気道)をヨガの言葉でナーディと呼びます。
毛細血管が身体の隅々まで行き渡っているのと同様に、プラーナの流れるナーディも体内に72,000あると言われています。
ナーディは心と身体の両方の健康に影響を与えます。
ナーディに汚れが詰まると不健康になってしまいますが、ナーディに溜まる不純物はエネルギー的なもので物質ではありません。
特に心的な不純物はナーディに溜まりやすく、怒りや妬み、執着やトラウマなどのネガティブな感情がエネルギーの流れを妨げていることがあります。
ヨガの練習を行う時に、自分の内側を流れるエネルギーの流れにも意識を向けてみましょう。
プラーナは呼吸と一緒に入ってきます。吸う息で、プラーナが身体の隅々まで行き渡る様子を感じられるといいですね。
どこかで詰まりを感じる時には、ナーディ(気道)の汚れがあるかもしれません。
プラーナがスムーズに流れていない部分にアプローチするアーサナなどを行うことで、不純物を洗い流すことができます。
エネルギーの流れるナーディ(気道)によって心身に影響を与える
体内には72,000のナーディがありますが、ヨガで特に重要視されているのはイダー・ピンガラー・スシュムナーという3つのナーディです。
それぞれのナーディには特徴があり、どのナーディに気が流れるかによって心身の状態が変わります。
イダーはチャンドラ・ナーディ(月の気道)とも呼ばれます。
プラーナ(気)がイダーに入ってくると、体内が月のエネルギーに満ちてきます。リラックスしていて、感情的、女性的で静かな状態です。
イダーは左の鼻孔から胴体の底辺まで続いています。
ピンガラーはスーリヤ・ナーディ(太陽の気道)と呼ばれます。
プラーナ(気)がピンガラーの中を流れることで、太陽のエネルギーで満たされます。アクティブで理論的になり、男性的で温かい状態です。
ピンガラーは右の鼻孔から胴体の底辺まで流れています。
日常生活ではイダーとピンガラーが約90分おきに交互に活発になりますが、ヨガでは2つのナーディ(気道)のバランスをとることで、中央にあるスシュムナーの中にもプラーナ(気)を流します。
スシュムナーは通常眠っている気道ですが、イダーとピンガラーが完全に穢れない状態になり、体内に清浄なエネルギーが満ちることで少しずつ目覚めます。
スシュムナーの中にプラーナが流れるとスピリチュアルな潜在能力が発揮されます。
ハタヨガでは体内のチャクラにも意識を向ける
ハタヨガではチャクラと呼ばれる体内のエネルギーポイントにも意識を向けます。ハタヨガでは背骨沿いに7つあるチャクラを重要視します。
それぞれのチャクラには特徴があり、その部分にプラーナ(気)が活発に流れることによって、それぞれのチャクラの司る能力が発揮されます。
7つのチャクラはバランスよく全てを活性化することが大切です。どこか1つのチャクラだけが活性化されたりすると、性格や行動のバランスの悪さを招いてしまいます。
ヨガのアーサナ(体位法)では、実際に身体を動かしながら身体のどの部分に滞りがあるのかを感じることができます。
今の自分の状態を知って、弱くなっている部分を意識的に活性化することができます。
例えば、胸の位置にあるアナハタ・チャクラは慈悲のチャクラとしても知られ、社会性に大きく関わりのあるチャクラです。
このチャクラの働きが乱れると他人への束縛、情緒的な関係、霊的な経験への執着を生むことがあります。
チャクラの流れの滞りは姿勢にも表れます。
アナハタ・チャクラにプラーナをスムーズに流すためには、胸を大きく開いて呼吸をすることが効果的で、カポタ・アーサナ(ハトのポーズ)などが有効です。
7つのチャクラの特徴を理解することで、ヨガのアーサナの効果もより理解が深まります。
ハタヨガの理論を勉強して実践を深めよう
今回はハタヨガで重視されているプラーナ(気)を中心にご説明しました。
古典ハタヨガで伝えられてきた理論を学ぶと、ヨガの効果を今までと違った観念で知ることができますね。
ハタヨガでは目に見えないエネルギーについて学ぶので最初は理解しにくいと感じる方もいるかもしれません。
実際に練習の中で試して経験できすることで理解が深まり、面白さを見つけることができるでしょう。
学んで、体験して、その繰り返しでいつものヨガがもっと楽しくなると思います。