虹がかかる空を背景に水平線に立ち上がるヤントラの図

神秘的な図形ヤントラと体内のチャクラ

アーサナ(ポーズ)やプラーナーヤーマ(調気法)、ムドラー(印)などを実践するハタヨガは、現代行われているヨガの源流ということができます。

ハタヨガを理解することによって、自分の練習しているヨガの目的や技法、効果などを深く知ることができます。

そんなハタヨガは、実はタントラと呼ばれる密教のテクニックを取り入れたヨガである事をご存じでしたか?

今回はタントラの教えの1つであるヤントラについてご紹介します。

ヤントラってなんだろう?

宇宙に浮かび上がるヤントラの図
「ヤントラ」

これは聞きなれない言葉かもしれません。

ヤントラはハタヨガと関係の深いタントラで使われる神秘的な幾何学的図形です。

それぞれの図形には特定のエネルギーがあり、神様を表しているヤントラも多くあります。

ヤントラには「助け」や「道具」という意味があり、瞑想を行う時にヤントラの図形に意識を集中させることで深い瞑想に到達しやすくなります。

ヤントラは個々の人間と宇宙が出会う「場」である接点上に、交差点定めた図形です。

インドでは厄除けや願望成就のためのヤントラが一般家庭でも使われています。

例えば、家のドアに赤い染料で卍(まんじ)を書いてあることを頻繁に目にしますが、卍はインドではスヴァスティカと呼ばれる吉祥図形です。

ヤントラはチベット密教(タントラ)で頻繁に使われます。

多くのヤントラはお寺を図で示していて、四方に門がある四角の中に祀られている神様や仏様を表す図形が書かれています。

ヤントラを使うことによって、お寺を建設しなくても神様や仏様を祀ることができます。

そのため、インドのヒンドゥー教の儀式でもヤントラを書いて使用することが多いです。

ヨガでも使われているヤントラ

ヨガを練習しているだけの私たちは「そんな魔術みたいなもの見たこともない」と思ってしまうかもしれません。

ところが、神聖なエネルギーをもつヤントラの技法はヨガにも生かされています。

例えば、体内にある7つのチャクラにはそれぞれ図形があるとご存じの方も多いと思います。これは、ヤントラを体内に持ってきたものです。

それぞれのチャクラのエネルギーをもったヤントラを念想することで、そのチャクラを活性化することができます。

また、ヨガでは自分自身の身体でヤントラの形を作っていることもありますね。

例えばトリコーナ・アーサナ(三角形のポーズ)では身体を使って三角の図形を作っていますが、三角は昔からとてもエネルギーの高い図形だと考えられています。

また、スヴァスティカ・アーサナ(卍のポーズ)やパドマ・アーサナ(蓮華座)もヤントラで使われる図形が登場しますね。

それぞれの幾何学的図形がもつエネルギー

黒い背景に浮かび上がるヤントラの図
通常ヤントラはいくつかの図形を組み合わせて作ります。

ヤントラの中に書かれる図形のもつエネルギーをご紹介します。

  • :ビンドゥ、至高の意識
  • :空間
  • 四角:地球
  • 上向きの三角形:男性的なエネルギー、火
  • 下向きの三角形:女性的なエネルギー、水
  • 六芒星:2つの三角形を組み合わせた星型図形。均衡、バランス
  • 八芒星:2 つの正方形を組み合わせた星型図形。維持、静的および動的の間のバランス
  • 右まんじ:創造、時計回りの動き
  • 左まんじ:解体、逆時計回りの動き
  • スヴァスティカ(右まんじに4つの点):聖恩オームとガネーシャ神の象徴

さらに、タントラでは数にも意味があると考えられます。蓮の花びらの数などを考えると、そのヤントラの特徴を捉えられて面白いです。

  • 1: 絶対的な。行為。
  • 2: 二元性、引用、男性と女性
  • 3: 2+1。完全な。
  • 4: 土。地球。
  • 5: 人。
  • 6: 物質的。
  • 7: 対象を支配する人。
  • 8: 終わりのない。
  • 9: スピリチュアリティ。
  • 0: 神的な。輪。

体内のヤントラ、チャクラの図形

体内のチャクラを示すイラスト
人の体内には7つのチャクラがあります。

それぞれのチャクラには、蓮の花の形をしたヤントラがあり、花びらの枚数や中に書かれた図形に特徴があります。蓮の花は、神様が座る座として頻繁に登場します。

身体の下の方にあるチャクラのエネルギーは花弁の数が少なく、上方にいくほど花弁の数が多くなります。

ムーラダーラ・チャクラ

胴体の底辺にあるムーラダーラ・チャクラは4枚の花弁の蓮の花で描かれます。

蓮の中には四角があり、さらにその中に下向きの三角形が書かれています。

全ての土台である四角い地球のエネルギーと、ムーラダーラの位置に宿るシャクティ女神(クンダリニー)を下向きの三角形で表しているのでしょう。

三角形の中にはシヴァ神の象徴であるリンガが書かれることもあり、リンガの周りに眠るクンダリニー(蛇)が書かれます。

スヴァディシュターナ・チャクラ

ムーラダーラの上に位置するスヴァディシュターナ・チャクラは、人間の個性を生み出す場所です。

6枚の花弁の蓮の中に白い三日月の形があります。

このチャクラは水のエネルギーを持っています。

マニプーラ・チャクラ

お腹に位置にあるマニプーラ・チャクラは、10枚の花弁の蓮の花です。

旭日の様に赤い下向きの三角形が描かれ、このチャクラは火の要素に関係しています。

アナーハナ・チャクラ

心臓の位置にあるアナーハタ・チャクラは、金色の12枚の花弁をもった蓮の花です。

くすんだ色の上向きと下向きの三角形が合わさって六芒星を作っています。

その中にはさらに金色の逆三角形があります。

このチャクラは風の要素と関係しています。

ヴィシュダ・チャクラ

喉の後ろの位置にあるヴィシュダ・チャクラは、16のくすんだ紫色の花弁を持ったチャクラです。

逆三角形の中に白い円が書かれています。このチャクラはエーテル(空)と関係しています。

アージニャー・チャクラ

眉間にあるアージニャー・チャクラは、瞑想によって到達できる様々な精神状態を支配しています。

2つの花弁を持った白い蓮の花です。中心には白い逆三角形が書かれています。

このチャクラの位置では初めて2元性が現われます。

クンダリニーのエネルギーがアージニャーに到達すると、人は自身を放棄して、2元性の種子を燃やしてしまいます。

それによって、物質(プラクリティ)との結合は終わり、本来の純粋な自我に気が付くことができます。

サハスラーラ・チャクラ

サハスラーラは頭頂にあり、1,000の花弁を持った蓮の花です。

1,000の花弁にはサンスクリット語の全てのアルファベットが書かれており、全ての可能性を保持しています。

全ての色を含み、全ての感覚を含み、どこまでも広がっていきます。
サハスラーラが開花すると、下方の全ての蓮の花は閉じて眠りに入ります。

図形の持っているエネルギーを意識してみましょう

ヤントラは古代から密教タントラの一部として取り扱われてきたものです。

実際にヤントラのエネルギーを使用するには、先生に師事して学ぶのが良いでしょう。

ヤントラ的なものの見方を意識していると、あらゆる形には違ったエネルギーを持っていることに気が付きます。

色にもエネルギーがあります。

自分たちの身近なものの形のエネルギーを観察してみるのも面白そうですね。

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