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健康の維持・向上、心の安定、美容など、さまざまな目的でヨガをされている方がいらっしゃるかと思いますが、海外ではすでに医療の補助や代替ケアとしても注目されています。
文献検索サイトに「Yoga」と入力してみると、2023年3月末までで7,500件を超える報告がされていて、科学的な視点からもヨガの効果が確認されつつあります。
今回は3~5歳の未就学児へのヨガとマインドフルネスの効果について2021年のシステマティックレビュー(すでに報告されている過去の個別の研究をとりまとめる手法)による研究を紹介します。
研究の背景・目的:ヨガおよびマインドフルネスの未就学児に対する効果検証
アメリカにおいて、ヨガや瞑想・マインドフルネスを実践する人口はここ数十年で大きく増加しています。
アメリカで大人を対象にした調査の結果、2012年には10%ほどが主にポーズによるヨガをした経験があると回答していたところ、2017年には14%となり、5年間で4ポイントも増加しました。
瞑想についてもすでに健康法への代替アプローチとして取り入られており、2012年には4%の人口だったのが2017年には14%に増加しています。
アメリカで最もポピュラーな瞑想法は、1982年にマサチューセッツ大学メディカルセンターが紹介した「マインドフルネス瞑想」です。
現在、一般的なマインドフルネス瞑想の方法としては「今この瞬間に意識を向けること」とされています。
大人に対するヨガや瞑想を健康のために行う人口が増えているなかで、ヨガを行う子どもも2012年に3%だった人口が2017年には8%と増加しているとの報告もあります。
子どもを対象としたヨガや瞑想は、心身の発達段階にもあることから、スピリチュアル的な要素や宗教的または歴史的な部分には触れずに行われ、学校生活等における社会性を養うための配慮もなされたクラスが提供されている場合もあるようです。
幼少期の主に3~5歳の期間は、就学前に社会性や情動・自己制御の思考・行動・感情をコントロールする内的プロセスに関する能力を育むための大切な時期であるとされています。
さらに自己制御能力は、読み書き・算数・語彙力・クラスへの適応する能力等とも関連することや、ストレスマネジメントと同級生や先生との社交性に優れることなども分かってきました。
そこで今回の研究では、ヨガおよびマインドフルネスの未就学児に対する効果を検証するとともに、リスクとベネフィットを把握することを目的としました。
研究の方法:2020年4月までに発表された報告のレビュー
文献検索サイトを用いて2020年4月までに発表された関連する報告をレビューしました。
主な検索キーワードは以下のとおりです。
- ヨガ
- マインドフルネス
- 瞑想
- 子ども
- 未就学児
- チャイルドケア
- 学校
- 保育
一次検索をした結果約1,500の文献がヒットし、そこから今回の研究目的に合わせて最終的に16の文献に絞り込みして内容を確認しました。
研究の結果:子どもたちの「社会性・情動」に関する効果
16に絞り込んだうち、15件とほとんどが2015年以降に報告された文献で、子どもたちに対するヨガや瞑想の効果が近年注目を集められていることが見てとれます。
半分以上の11の文献はアメリカからの報告です。他の5つはシンガポール、韓国、チュニジア、カナダ、スペインからの報告でした。
個々の文献の対象は23人から325人までのものがあり、すべてを合わせると3,584人を含みます。
6の文献はヨガまたはマインドフルネスの資格を有するインストラクターが行ったもの、7の文献はクラス(教室)の先生が行ったものです。1クラスあたりの時間は10分~40分でした。
ヨガとマインドフルネスには子どもたちの「社会性・情動」に関する効果があると、13のほとんどの文献で挙げられています。
- 自己制御:自己の思考や行動、情動をコントロールできる
- 感情制御:悲しみや怒りなど何か感情が起こった時にコントロールできる
- 遂行機能:やりたいことや目標を設定し、それに向けた行動ができる(行動記憶/不要な行動の抑制/目標や行動を柔軟に変えることを含む)
- 注意容量:注意力・集中力を保つことができる
- クラスメイトとの向社会的行動
幼少期の早い段階からヨガやマインドフルネスが取り入れられている実績があり、すでにいくつも研究結果が報告されていることが分かりました。
ヨガやマインドフルネスを通じて自分の行動や気持ちを観察することによって、うまく感情をコントロールするなどのストレスマネジメントに繋がったり、目標達成ができるようになったり、またクラスメイトとの友好関係を築いたりなど、社会生活の中で大切な能力を早期に身に着けたり高めることに期待ができそうです。