最近どんなことで泣きましたか?
感動するテレビを見た、はたまた玉ねぎを切っているときに涙が出たり、ヨガを実践しているみなさんの中には、ヨガや瞑想中に気づけば涙が流れていた…という経験をしたことのある方も多いかもしれません。
泣いたあとは頭がすっきりしたり、心はふんわりとし眠くなったり、泣き終えたらケロリとして逆にお腹が空いてきたり…
理屈や理由はまでわからないけれど、そんな体験は長年の経験から「あるある!」という方も多いはず。
そんな、知っているようで知らない涙。
今、そんな涙のもつ不思議な力、人間だけに備わったツールに、注目が集まっていることをご存じでしょうか?
今回は、ヨガジェネレーションでの講座も担当していただいており幸せホルモンとして有名なセロトニン研究の第一人者であり、その研究中に涙についての大発見をされた脳生理学者・医学博士の有田秀穂先生のお話を交えながら迫りたいと思います。
涙についてどれくらい知っていますか?
涙の種類は3種類!?その分類とは
有田秀穂先生がご出演されたNHKヒューマニエンスQ (クエスト)。涙をテーマにし、その不思議や魔法のような力に迫るこの番組はなんと過去4回も再放送されるほど!世の中での涙に対する注目度の高さが伺えます。
そもそも涙とは、どんな種類があるのか?番組の中では、涙が出る理由は3種類、そのそれぞれについてふれられていました。
①まばたきの度、目を潤してくれる基礎分泌の涙
②ゴミなどを流そうとする反射性分泌の涙
③人間しか流さない感情の涙。
この③にあたる感情の涙こそ、有田秀穂先生が研究を重ねてこられた涙なのです。
涙と脳の関係とは?
目から水が流れる涙。その様子からピンとこない方もいらっしゃるかと思いますが、最近の研究で「涙と脳」には大きな関係があることがわかっているそうなのです。
セロトニンの研究をしている最中、頭にいろいろな装置をつけた状態で被験者が突然泣き出したことがありました。なんと、泣くことが起こる数秒前から、脳のある場所がものすごく興奮していたのです
これが有田先生の涙の研究のはじまりだったそう。
有田先生に詳しくお話を伺いました。
泣いた後に、穏やかな気持ちになったりすっきりしたりするなと感じるのですが、それらも脳内のメカニズムによって解明されてきているのですか?
徐々に解明されてきていますね。特に脳のどこが反応するか、変化が起こるかというのはだんだん解明されてきています。
そうなんですね!
涙を流すと、自律神経的には交感神経の緊張がほぐれます。ストレスフルな身体の状態も、ひと泣きすると全部切り替わってしまいます。また、ネガティブな気分がすっきり爽快になり、副交感神経による癒しの状態ももたらされ、心理的にも影響します。
泣くことって、脳にも身体にとっても、大きな変化なのですね。
泣いたあとって お腹がすいたりねむくなったりするでしょう?あれは脳の変化なんです。泣く前とあとで、脳が変わっているんです。涙は、脳と身体を切り替えてくれる一つのトリガーと言えるでしょう。
涙と脳内ホルモンオキシトシンとの関係とは?
脳生理学者である有田先生にぜひお聞きしたいのが、愛情ホルモンともよばれるオキシトシンと涙の関係。
涙とオキシトシンが絡んでいるというのは最近の研究成果で明らかになってきました。
そうなんですね!
オキシトシンって元々はマッサージ等、身体への皮膚への心地よい触覚刺激によって活性することが分かっていました。
マッサージやおしゃべりでも活性化できると以前教えていただきました。
それらと、共感や身体の中に出てきたストレスが誘因となる「泣き」とはオキシトシン神経の回路・経路こそ異なりますが、最終的にはオキシトシン神経が働いてストレス解消につながることがわかってきています。
興味深いです!
涙の生後発達とは。
母親から、わんわん泣いて生まれてくる私たち。大人になった今に至るまで、今度は時系列に涙を深堀りしてみましょう。
有田先生によると、これを涙の生後発達とよぶそう。
赤ん坊のうちは、お腹が空いた・おむつが汚れたなど、欲求があるごとに涙を流しますよね。
言葉がしゃべれない代わりに、泣いて伝えている、いわばコミュニケーションツールとしての泣きなのです。
言葉の代わり!わかりやすいです。
思春期になると、「そんなことで泣くな!」学習させられるようになります。泣かないのが美徳とされるのです。
「転んでも泣かなくてえらかったね」という言葉に聞き覚えがあります。泣かないことは、強さを表す代名詞となっていくのかもしれませんね。
大人になってから泣くのはこれらと基本的に質が違うのです。自分のストレスで泣かなくなります。例えば、足をぶつけて泣くのは子供ですよね。試合に負けて泣くのは思春期。大人になってから泣くのは自分のストレスではなく、共感して泣く。他の体験を自分の体験に照らして、共感して泣いているんです。
成長に従って、涙のありようも変わってくるのですね。(おもしろい…!)
ストレス解消と癒し。涙のもつ不思議な力
涙をこらえがちな現代人。こらえなくても良い涙とは?
思春期以降、泣くことを我慢することを学び、「泣かないこと=強い」という概念が根付きがちな私たち。同時に、その裏返しとなるというイメージも知らず知らずのうちに生み出し、時にネガティブに捉えられがちな「泣く」という現象。
自分の感情を治められていないという印象や、プライド、弱みを見せたくないという気持ちが邪魔をして、大人になるにつれて特に人前では「涙をこらえる」瞬間は多くなっているのではないでしょうか。
大人になってからの涙は、子どもや思春期のころのそれとは、全然質が違います。大人になってから足ぶつけて泣いたり、失敗して泣いたり、これらですぐ泣いてしまうことはあまりよくありません。しかし、なにか感動する場面に遭遇してうっときたり、どきどきして泣く、これを押さえる理由は全くないのです。共感の涙を抑える必要は、ないのです。
泣くことは弱いことじゃない。そう思えると、涙がポジティブな印象に塗り替えられていきます。
涙を止めないことがポイント。泣きそうになったら、そのまま脳の変化を味わって、涙を止めないことが大切です。
涙で脳が変わっている、とおっしゃっていましたもんね。必要以上に涙を我慢しがちな現代人にとって、大きな気づきとなりそうです。
涙は究極の安全弁。心を守ってくれる、人間だけにもたらされた涙の力とは
泣くことを私は積極的におすすめしています。泣くことによってストレスが解消されたり 心のデトックスになったりします。むしろ僕はそれを一種の究極の安全弁とも言っています。
安全弁…!とても心に響く言葉です。涙っていうと生理的には目を守っているっていうイメージがあるとは思うんですけれども、心がいっぱいいっぱいになった時には、心も守ってくれるような側面があるということですか?
そうですね まさに いわゆるパンパンになっちゃって爆発しそうっていう時に涙を出してしばらく泣いていると その後スーッとそのストレスが解消されるように脳ができてるっていうのはこれはやっぱりうれしいことで、ありがたいですよね。
はい。心がストレスをためこんでしまう前に、涙でリリースする。これを知っていることは、ストレス社会でも安全弁を機能させて自分の心身を守ることにつながりそうです!
どうしてもパンパンになって困ったときは、涙を積極活用すべきだと思いますし 恐らく脳はそういうふうなシステムにできているんだと思います。
なるほど!
涙を流すのは人間だけなのです。ということは人間だけに備わった一つのツールで癒しの道具 そういう風に考えて間違いないと思いますよ
たしかに、私の飼い猫も悲しそうな表情をすることはあっても、涙を流しているのは見たことがないです。人間だけに備わったツール、活かすほかない!と思えてきます。人間社会はストレスが多いと言われるけれど、それを解いてくれる涙のシステムもまた人間にだけ備わっているなんて、脳の世界は奥深いです…!
涙を生活に取り入れるコツ!
実は100以上も!泣きのツボ
涙のポジティブな側面がみえてきたところで、気になるのは生活への取り入れ方。
どのようなきっかけで泣きを取り入れればよいのでしょうか。
もともと、共感というのは自分の中にある記憶です。他の体験を自分の体験に照らして、共感して泣きにつながるわけです。
共感は体験・記憶から生まれる…興味深いです。
どういう人生経験をし、どういった生活をしてきたか?人によって全部異なります。ペットもので泣く人もいれば家族もので泣く人もいれば恋愛もの、戦争もの、スポコンもの…その数からすると、泣きの誘因(トリガー)は、100種類以上、もっとあってもおかしくないと考えてもいいと思います。
積極的に涙を生活に取り入れる上では、自分が気づいていないトリガーに気づくことも大切になりそうですね。
現代人におすすめ!夜に取り入れたいポジティブな涙の時間
今世の中 デジタル社会なので、特に頭が疲れやすいです。
わかります…!ストレスがあまりに強いと、眠れなくなることもありますもんね。
身体が疲れて泣くということはあんまりないのですが、頭が疲れてしまうとどうしても眠れなくなって 最終的にはメンタルが疲れてしまう。そうなる前に涙を流して少しずつ解消していくっていのはすごく重要ですし、現代人には必要な生活習慣かもしれないですね。
はい!ちなみに、泣くのにおすすめのタイミングはありますか?
脳の中にたまってしまったストレスを解消するという点ではやはり一日の終わり、特に週末の夜がおすすめです。
後にやらなければならないことがない状態で、ちょっとアルコールでも入れてね(笑) ゆっくりお風呂にでも入って…リラックスした状態でそういう泣きの場面 そういう共感の場面にいると いい感じでストレス解消になってそのあとゆっくり眠れたりとかね。
なるほど!お酒もありとは!(笑)とにかくゆったりリラックスがポイントなのですね。
意外と涙を流すとその効果って続きますから。週末1回はきれいにデトックスしてストレスを洗い流す。すると、その効果は意外と長い時間、持続するということは多くの人によって言われていますよ。
有田先生、貴重なお話をありがとうございました!
有田秀穂先生による新講座!「涙とオキシトシンワークショップ」いよいよ開催!
今回、涙について貴重なお話を教えてくださった有田先生。
ヨガジェネレーションでは、この涙をテーマにしたワークショップが新講座「ストレス解消の新手法!癒しの涙で心身をデトックス!”涙とオキシトシン”ワークショップ」として開催決定!2023年6月24日(土)の夜に初開催を迎えます。
この記事ではご紹介しきれなかった具体的な涙のメカニズム(脳内での回路やオキシトシン神経との関係)を詳しく知ることができます。「泣くことで、脳が変わる」その詳細に迫る大変興味深い内容です!
更に、後半は参加者の方それぞれの「泣きの体験」をシェアする時間も。その体験に対し、「脳の中でどんな回路やシステムが働いたのか」有田先生が一人ずつに対し解説をくださるので、ケースを追うごとに脳への理解が深まるはず。
この講座では、その場で泣くことを目的としているわけではないので、人前で泣くことに抵抗がある方でも安心してご参加いただけます!むしろ、この講座の後、週末の夜に一人で泣きの時間を取り入れる前段階として、活用いただけることを願って、ヨガジェネレーションではめずらしい夜の講座開催です!
ヨガや瞑想のときに流れる涙も脳科学で説明がつくそう。
泣くと目が腫れてしまうのが心配…!そんな涙に関する少しの不安にも、目が腫れないおすすめの方法もあるそうですよ。
ストレスで心が疲れてしまう前に。人間にだけ備わった涙の不思議な力を活かし、より快適な毎日をつくっていくために、まず知っているようで知らない涙の不思議を紐解くことからはじめてみてはいかがでしょうか。
涙に関する大発見をされた、脳科学の世界的権威・有田秀穂先生からのたしかな学びは、心身をストレスから守り、すっきりとデトックスし、洗い流されたまっさらな状態で新しい毎日を迎え入れるすこやかさにつながるはずです。
ぜひ、涙について深め、ポジティブに取り入れる機会として、チェックしてみてくださいね。
今回の記事の元となった動画をご紹介!
・ヨガジェネレーションYouTube動画はこちら
・インスタライブアーカイブ動画はこちら
(冒頭の1~2分が音声トラブルのため無音となっております。恐れ入りますが2分過ぎからご覧ください)