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幸せな人生って何だろう?どうしたら幸福な人生を送るのだろう?
これは誰もが考える課題です。
しかし、具体的に答えられる人がどれだけいるのでしょうか。
アメリカの心理学者マーティン・セリグマン(Martin E. P. Seligman)によって世界に広げられたポジティブ心理学では、幸福になる方法を様々な角度から追及しています。
実は、ヨガの考え方と近い部分も沢山あります。
今回はポジティブ心理学で使われる幸福の指針 PERMA についてご紹介します。
ポジティブ心理学の説く PERMA とは?
ポジティブ心理学は、アーユルヴェーダやヨガ的な考え方にも繋がる部分もある心理学です。
というのも、一般的な心理学や医学は、問題が起こった時にその治療法を考えるものです。
多くの人は病気になると病院に行きます。日常に障害をきたすほどの不眠や鬱になると精神科医に行きます。
しかし、病気にならないと何も対処をしません。
では、病院に行かない人が本当に幸福な人生を送れているのでしょうか。
実際に多くの人の日常を観察すると、病院に行くほどではないけど腰痛や肩こりに悩んでいたり、毎日嫌いな上司のいる職場に行くことをストレスに感じていたりします。
生きていくために、お金のために我慢して人生の多くの時間を仕事に費やす人生に不満を抱く人はどれだけ多いことでしょう。「我慢できるから」と、何も対処をしないまま、何十年も生き続けます。
それでは生きることがつらいですね。
「病気じゃないから心のケアは後回し」なまま歳をとるのではなくて、自分の幸福を考えることに時間をちゃんと使おうと考えるのがポジティブ心理学です。
その辺りは、アーユルヴェーダやヨガ的な考え方にも似ており、心と身体が壊れてしまってからの対処療法ではなく、心の予防医療的なアプローチや、毎日の日常を大切に丁寧に過ごす事と考えます。
幸福の条件 PERMA
ポジティブ心理学では、PERMA を満たすと幸福感を感じやすいと考えます。
PERMA とは以下の単語の頭文字を取った言葉です。
- Positive Emotion:ポジティブな感情。
- Engagement:エンゲージメント。没頭や突入できるもの。
- Relationship:豊かな人間関係。
- Meaning:人生の意義。目的。
- Accomplishment:達成感。
さらに追加で、Health(健康)の H を追加することもあります。
この5つは1つだけが飛びぬけていても意味がありません。
例えば仕事依存の人は、Accomplishment(達成)だけが飛びぬけて高いですが、仕事に全力を捧げた結果 Relationship(人間関係)がないがしろになり、実は精神的に苦しんでいる人がとても多いです。
人生はたった1つの要因では幸福になることができません。あらゆる幸福感のバランスが重要です。
それでは、1つずつ詳しく見ていきましょう。
ヨガとも比較しながら見ていきます。
Positive Emotion:ポジティブな感情
1つ目はポジティブな感情です。そもそもポジティブに考えることができないから悩んでいるという人も多いのではないでしょうか。
簡単な実践方法は、感謝の感情を意識することです。
ポジティブ心理学では、感謝を日記に書くことを勧めています。毎日5分で良いので、夜ベッドに行く前にテーブルに座り、その日感謝したことを3つ書き留めます。
1日の内で誰かに感謝することは必ずあるはずですが、私たちは与えられたことよりも足りないことに意識が行きがちなので、すぐに忘れてしまっています
ちゃんと毎晩感謝の気持ちを思い出し、そこに意識を向けることで心の働きの習慣を変えることができます。
例えば、食事を頂くときに手を合わせて「いただきます」の言葉を心を込めていくことも感謝の気持ちを意識するのに大切です。そんなちいさな心がけが、思考のパターンを変えてくれます。
これはバクティ・ヨガ(信愛のヨガ)に繋がります。与えて頂いたことに気が付いて感謝することは幸福感を高めます。
例えば太陽礼拝をおこなっている時に、体内に取り込む太陽のエネルギーを感じて感謝するという、意識を変えるだけで効果が全く違います。
クラスを受ける前のマントラで、その場所にいられること、自分の健康と先生に感謝することも大切です。
「私がヨガを行っている」と考えるのではなく、ヨガを練習する環境と教えを与えて頂ける幸福感を感じることができるといいですね。
Engagement:エンゲージメント
自分が興味関心を抱く対象について考えるのがエンゲージメントです。退屈さを感じることなく、人生を楽しむことができます。
好きで希望した職種に就いたとしても、あまりにも多忙であるとワクワクを忘れて単純作業になってしまいます。それでは人生を楽しむことができません。
エンゲージメントを高めるためには、自分の得意なことを理解するといいでしょう。
例えば、料理の得意な人は毎日工夫を凝らした料理を作って家族や友人にふるまうことで幸福を感じられるはずです。
しかし、「これは義務だから」と単純作業に感じた瞬間にネガティブさが生じてしまいます。
実は、エンゲージメント(没頭)出来ている状態は、ヨガのダーラナ(集中)の状態と類似しています。
多くの人が週末にわざわざ手の込んだ料理を作りたいと思うのは、思考を止めて料理に没頭できる状態が心地いいからです。
集中できていない状態だと、人の思考は常に新しい情報を探し、ネガティブな妄想を始めてしまいます。
1つのことに集中する、瞑想的な時間を持つことで、思考の働きを落ち着けることができます。
ワクワクしながら没頭できることを見つけられるといいですね。
Relationship:豊かな人間関係
幸福な人生だと感じることができるかの大きな条件は、信頼できる深い人間関係を抱くことができるかどうかです。
特に家族関係や、友人関係がとても重要です。
学生時代には親友がいたのに、大人になってからは深い人間関係を築くことができないと感じている人はとても多いです。もしくは、配偶者との関係が上手くいっていないという人はとても多いと思います。
特にワーカホリック(仕事中毒)な人ほどその傾向が顕著に出ます。他社よりも大きな成功をおさめ、責任の重い役職に就く人ほど、長時間の労働を行います。
その結果、時間、体力、思考の大半を仕事に費やすことになり、家に帰った時に配偶者としっかり向き合うことができません。
本来、人生で最も大切な人と向き合うことを犠牲にした結果、「成功者」と呼ばれる立場にいても孤独を感じる人がとても多いです。
1度上手くいかなくなった人間関係を修復することはとても困難で、大きな時間と労力が必要です。
しかし、人生で最も大切な人と向き合うことができなければ、本当に幸せな人生を見つけることができません。
ヨガでは、「慈悲喜捨」という教えで愛の感情を学びます。
Meaning:人生の意義、目的。
人生の意義を失うと「私は何のために生きているのだろう」と苦しんでしまいます。自分の生きる意義を与えられることは、幸福な人生の大きな条件の1つです。
ヨガ哲学では、私たち1人ずつに与えられた職務をダルマと呼びます。
ダルマは1人ずつ違います。ある人は母となって子育てを行うことがダルマでしょうし、ある人は看護師として病気の人を助けるダルマがあるでしょう。
自分が行うべきことを理解して、それによって充実感を得ることができれば、自分の人生に価値を感じることができます。
Accomplishment:達成
最期は達成感です。自分の天職(ダルマ)を知って働き、何かを達成することは大きな喜びです。
達成感は小さいことでも良いのです。
「毎朝起きたらベッドメーキングをする」といった日常の家事の1つでも、「ベッドが今日も綺麗になった」という達成感を感じることができます。
しかし、達成感には依存性があるため注意が必要だと考える学者も多いです。
仕事中毒は成功経験に依存し、常に同じようなパフォーマンスか、前回よりも高い成功を収めないといけないと思い込む強迫観念によって苦しみを生みます。
ヨガ哲学では、目標に向かって精いっぱい努力することは大切だけど、その結果に依存してはいけないことを説きます。
あなたに与えられたのは定められた義務のみである。行為の結果にはない。行為の結果を動機としてはいけない。(2章47節)
達成感も人生を楽しむために大切な要因ですが、そこに依存しないように気を付けましょう。
自分の人生の幸福とは何か考えてみましょう
今回は PERMA というポジティブ心理学の考え方を元に、ヨガ哲学と比較してみました。
現代社会はとても忙しく、自分の人生の喜びは何かと向き合う時間はなかなか確保できていない人が多いと思います。
しかし、わざわざ時間を使い、人生に向き合うことはとても大切です。
これができないと、ただ毎日繰り返しストレスを我慢しながら単調な人生を歩むことになってしまいます。