瞑想で免疫力が高まる?マインドフルネス瞑想で行う予防・未病

瞑想で免疫力が高まる?マインドフルネス瞑想で行う予防・未病

健康の維持・向上、心の安定、美容など、さまざまな目的でヨガをされている方がいらっしゃるかと思いますが、海外ではすでに医療の補助や代替ケアとしても注目されています。

文献検索サイトに「Yoga」と入力してみると、2023年7月末までで7,700件を超える報告がされていて、科学的な視点からもヨガの効果が確認されつつあります。

今回はマインドフルネス瞑想の免疫機能に対する効果について、2016年のシステマティックレビュー(すでに報告されている過去の個別の研究をとりまとめる手法)による研究を紹介します。

研究の背景:求められる予防・未病と注目されるマインドフルネス瞑想

マインドフル瞑想を実践する
マインドフル瞑想を実践する

マインドフルネスは、「今この一瞬一瞬の体験や出来事に、判断を下すことなく、目的を持って注意を向ける意識の状態とそのプロセス」と一般的に定義され、誰もが潜在的に持つ能力です。

マインドフルネス瞑想でマインドフルな状態を継続的に実践することによって、日常生活の中でも活かすことができるようになってきます。

心身の健康を目的として、様々なマインドフルネス瞑想プログラムが実践されており、最初にプログラムとして体系化されたのは1970年代と言われています(Mindfulness-Based Stress Reduction プログラム)。

現在では、アメリカの医療系スクールや大学のうち、80%近くもの施設においてマインドフルネス瞑想が治療、教育、研究プログラム等に取り入れられています。

これまでの研究結果から、マインドフルネス瞑想は、ストレス関連疾患、精神疾患、疾病症状に効果があることが分かって来ました。

薬や心理療法による治療、健康教育、行動変容などの、ストレスや病気の治療のための他の治療法と同程度の効果であるものの、あらゆる疾病に対して効果が見られるわけではないと言われます。

しかし、1人ひとりが健康に気を使い、病気に対する自己管理を行い、予防・未病が注目される昨今において、マインドフルネス瞑想の注目度はかなり高まっています。

過去の研究では心身の状態に対する個別の報告がほとんどでしたが、近年はより詳細な、生物学的指標を用いた評価も行われるようになってきました。

中でも、「免疫反応」や「炎症反応」については、その疾病に応じた何らかの病原起因によって引き起こされますが、精神的状態や身体の健康状態によっても影響を受ける場合があります。

この研究では、免疫システムに関係する生物学的指標に対するマインドフルネス瞑想の効果を検討することにしました。

研究の方法:文献サイトの報告レビュー

献検索サイトを用いて報告レビュー
献検索サイトを用いて報告レビュー

文献検索サイトを用いて2015年7月までに発表された関連する報告をレビューしました。

主な検索キーワードは以下のとおりです。

  • 免疫
  • 炎症
  • サイトカイン
  • 炎症性
  • 生物学的指標
  • 血液、唾液、尿
  • テロメア
  • 感染症

研究の結果:マインドフルネス瞑想が与える免疫への影響

一次検索をした結果約4,000を超える文献がヒットし、そこから今回の研究目的に合わせて最終的に20のランダム化比較試験による文献に絞り込みして内容を確認しました。

マインドフルネス瞑想プログラムは、全ての文献で毎週ごとに実施され、その実施期間は文献により6~10週でした。20の文献の参加者を合計すると1,602名となります。

免疫に関する効果

以下の5つの視点に焦点を当てて免疫に関する効果を検討しました。

炎症性タンパク質の循環と刺激

免疫細胞から生産される炎症性タンパク質は、免疫反応の際に細胞間の情報伝達を担う重要な役割を果たしますが、慢性的な上昇など異常が続くと、病気のリスクを高めることにつながります。

転写因子と遺伝子発現

転写因子は、免疫細胞の中で応答遺伝子を活性化し、タンパク生産や炎症反応を調整する機能があります。

免疫細胞の数

病原体が侵入すると、免疫細胞が活性化して増加し標的へと送られ、病原体から守る働きをし、組織の回復を促します。

慢性ストレスやうつは免疫細胞の増加や活動を抑えると言われています。

免疫細胞の老化

テロメアは、遺伝子構造を保護して安定させる機能があります。

テロメアが短いことは、細胞老化やアポトーシス(細胞死)の指標となり、加齢によって引き起こされる疾患や早死と関連します。

抗体反応

抗体は免疫グロブリンや免疫細胞から分泌され、病原体を見つけて攻撃したり、他の免疫機能を補助する役割があります。

免疫機能に対する共通効果

20の文献を確認し総括したところ、マインドフルネス瞑想の免疫機能に対して、以下の4つの共通する効果が確認されました。

  1. 転写因子NF-kBの減少によって、過剰な炎症反応を抑える
  2. C反応性タンパク質の減少によって、炎症や細胞破壊そのものが減少する
  3. T細胞の量の増加によって、免疫細胞を活性化し病原体を攻撃する機能が高まる
  4. テロメアを伸長させる酵素のテロメラーゼの増加によって、細胞の老化を抑える

今回の研究結果から、マインドフルネス瞑想によって免疫力が高まり、また細胞の老化を防ぐことにつながる可能性が示されました。

「ヨガや瞑想をしているとなんだか心や身体の調子がいい」ということが医療や科学の発展によって、その根拠がより詳しく明らかになってきました。