2.5人に1人が眠りに悩みをもつ時代。ぐっすり眠れていますか?
- 寝なきゃ、寝なきゃという思いと裏腹に目が冴えて、寝返りばかり…
- せっかく眠れても途中で起きてしまう
厚生労働省の調査によると、眠りに関して何らかの不眠症状を抱えている人の割合は30~40%、およそ2.5人に1人にものぼるとされている現代。
できることなら、すとんと眠りに落ち、朝までぐっすり眠りたいものですよね。
そこで注目したいのが、睡眠ホルモンともよばれる脳内物質・メラトニン。
つい私たちは悩みの解決を、食品やサプリなど「外から取り入れる」ものに向けてしまいがちですが、もっとも身近な自分自身の内側である脳内ホルモンに、質の良い睡眠に欠かせない秘訣があるそうなのです。
今回、東邦大学医学部名誉教授でセロトニンDojo代表、セロトニン研究第一人者・医学博士で脳生理学者の有田秀穂先生に、睡眠ホルモン・メラトニンの特徴・活性化の方法について、またメラトニンを語る上で欠かせない、セロトニンをはじめとする脳内ホルモンについてお話を伺いました。
誰しもに備わった天然の睡眠薬「メラトニン」
実は私たちの脳には、睡眠薬に相当するメラトニンという物質があります。メラトニンは夜暗くなると作られて、朝になって明るくなると出なくなるという仕組みです。夜の間に脳を睡眠状態にして身体を休めてくれるために分泌する物質がちゃんと備わっています。
そうなんですね!ではメラトニンがしっかりと分泌されれば、不眠も解消!ということなのでしょうか?
メラトニンがきちんと分泌されるように生活を整えれば、しっかり眠れると考えてもらってよいのですが、意外と色々な今の現代生活はメラトニンの合成分泌には好ましくない状況があるのです。
しっかり分泌されることが理想だけれども、なかなかそうはいかない、ということなんですね。
そうですね。ですから、メラトニンがどのように分泌されるのか?どうしたらたくさん分泌されるようになるのか?そこを理解した上で生活することはすごく重要なんです。
メラトニンはどのように作られる?材料は〇〇!
質の良い睡眠に欠かせない物質が、誰の体にもすでに備わっているなんて、より良い睡眠に向けてなにかできそうなことがあるような気がしてきますよね。
メラトニンがどのような物質で、どうしたらたくさん分泌されるようになるのか、くわしく有田秀穂先生に伺ってみましょう。
メラトニンとセロトニンの関係
睡眠ホルモン・メラトニンは夜作られるのですが、材料は実はセロトニンなんです。セロトニンは夜の間分泌しておらず、朝起きると分泌が始まり、一日セロトニンがきちんと分泌されていると元気に生活できます。このセロトニンが夜になるとメラトニンに変換されるのです。逆に言うと、明るい時間帯にはメラトニンは作られていないんです。この、メラトニンの材料がセロトニンということをまず理解してもらいたいです。
朝になると分泌がはじまり、すっきりはつらつと1日を過ごすのに欠かせないセロトニンが、変換されてメラトニンができるんですね!まるで、脳内ホルモンが時間で交代するように働いているみたいです…!
夜、暗くまるまでに、材料となるセロトニンがたくさん合成・分泌されている生活、すなわち昼間の生活がメラトニン合成にとっては重要です。例えば太陽を浴びることや、体を動かすこと、リズム運動もセロトニン活性につながります。暗くなってからウォーキングしたり、ジムに行っている人がけっこういますね。セロトニンがメラトニンにどんどん切り替わってくれますから、あの行動はよく眠るためと言えるでしょう。適度な運動というのは睡眠ホルモンを増やしてくれると考えてもらってよいと思います。
夜のウォーキングやジムは、気分転換・ストレス解消というイメージがありましたが、セロトニンを増やしメラトニンに変換することで、質の良い睡眠につながる行動だったのですね!
メラトニンとオキシトシンの関係
癒しホルモン・愛情ホルモンともよばれ、ストレスを鎮めてくれるという重要な役割をもつオキシトシン。以前の記事では1日の終わりにストレスをすっきりと洗い流すのにおすすめの、オキシトシンの増やし方について教えていただきました。(オキシトシンを活性化「夜のおすすめの過ごし方」セロトニン研究者/有田秀穂)
有田秀穂先生によると、このオキシトシンとメラトニンの合成・分泌に関係しているそう。
以前、1日の終わりにオキシトシンが分泌される生活をおすすめしました。オキシトシンはセロトニンの分泌を促してくれますから、グルーミング行動やおしゃべりをしてオキシトシンが分泌されると、脳の中のセロトニンがたくさん分泌されるようになると考えてもらってよいと思います。
メラトニンの材料がセロトニン、セロトニンの合成・分泌を促してくれるのがオキシトシン…脳内ホルモン同士がリレーのように関係しあっていて、とても興味深いです!
いずれにしても、夜の間に脳内でたくさんのセロトニンが増えると、それらが睡眠ホルモンに変わってくれるという意識・認識はとても重要です。それから、メラトニンは、暗い時しか合成分泌されないんです。朝になると合成分泌が止まります。そして日が沈んで暗くなると、人間の脳の中ではセロトニンからメラトニンを作り
だして、そして床に入って目をつぶるとメラトニンが出て身体を休め脳を休めるという働きをしてると考えてもらうといいです。
メラトニンの特徴がわかってきました!そしてメラトニンの合成・分泌をより促すために、セロトニンやオキシトシンへの理解も欠かせないのですね。
メラトニンを破壊!注意したい生活習慣とは。
有田先生によると、せっかく作られたメラトニンを破壊してしまうことにつながる、注意が必要な生活習慣があるそうです。
積極的に作るだけではなく、できたものを減らさないようにすることも大切…というのはイメージがわきますが、具体的にどういうことなのか、詳しく伺ってみました。
せっかく作られたメラトニンを破壊したり、合成・分泌を抑えてしまうという点で注意が必要なのが、ブルーライトを発するデジタル機械です。スマホもパソコンもブルーライトを出すということが研究でわかっています。例えばベッドに入ってからもスマホをいじっている人もいますけれども、その行動はメラトニンを壊してしまいますし、それによって眠れなくなっている部分もある程度あるかもしれないですね。
ついつい私も、寝る前にベッドでスマホを見てしまうことがあります…反省。
デジタル時代ですから、昼間はスマホ・パソコンは不可欠ですよね。ただ、使い方を身に付けていかないと、不眠を引き起こしたり、場合によってはちょっとメンタルにも影響が出てしまう可能性があります。デジタル社会に住んでいる現代人は「寝る前の2時間はデジタルデトックス」これが大切だと思います。
スマホやパソコンといったデジタル機器は今の世の中に必要不可欠、でも寝る前の2時間だけはやめてみる。2時間でよければ、できそうな気がしてきました!質の高い眠りやメンタルのためにも、デジタル機器との良い距離感が大切なのですね。
デジタルデトックスは、別の言い方をすると、昔からやっていたアナログ生活なんです。ちょっと軽く運動したりですね、マッサージをしたりお肌の手入れをしたり…過ごし方はいくらでもあると思うんです。この寝る前の2時間は、良い睡眠のためにとっても大切ですよ。
なるほど…!今でこそ、時間を問わずインターネットができたり動画が見られたりする便利な世の中ですが、暗くなることで自然と一日が終わりを告げていたようなアナログ時代にもやっていたことが、脳内ホルモン的にも良い睡眠をもたらしてくれる過ごし方なんですね。
メラトニンは美容にも関係!奥深い脳内ホルモンの世界
メラトニンはアンチエイジングの切り札でもあります。私たちの身体に60兆ある細胞がエネルギーを作りだすときに、煙に相当する不要なものである活性酸素が知られています。身体が激しく活動すれば活性酸素が身体の中ではどうしても出てしまうのですが、蓄積すると老化が進み、アルツハイマーの認知症・痴呆やパーキンソン病といった成人病を誘発するということもわかっています。メラトニンはこの活性酸素をすす払いしてくれるような役割を持っています。
メラトニンにはそのような側面もあるとは!美しく健康に生きる上で、質の高い睡眠をとることは本当に大切なのですね。
今回の記事の元となった、ヨガジェネレーションYouTube動画はこちら
有田先生からより深く脳内ホルモンを学べる講座、開催中!
35年以上にわたり、幸せホルモンセロトニンをはじめ脳内ホルモンを研究しつづけてこられた有田秀穂先生に、今回も貴重なお話を伺いました。
人生の3分の1は睡眠、とよく表現されますが、それだけ質の良い睡眠をたっぷりとることが私たちがすこやかに生きる上で欠かせないと感じました。
サプリや薬など自分の外に解決を見出そうとするのではなく、今この瞬間も分泌されている脳内ホルモンを理解し活かすことで、不眠に関する悩みが少し軽くなるかもしれません。
ヨガジェネレーションでは有田秀穂先生による「脳内ホルモン基礎講座」や「涙とオキシトシンワークショップ」といった脳内ホルモンをより理解しヨガや生活に活かせる講座を開催中です。
講座では、今日ご紹介した内容よりもさらにぐっと奥深い内容が学べます。
知れば知るほど深い脳内ホルモンの世界。
睡眠をはじめ、一日一日を心地良く過ごすために欠かせない脳内ホルモン。この先ずっと活かせる、一生ものの学びとなるはずです。
脳内ホルモンに関心がわいてきたら、ぜひセロトニン研究の第一人者・有田秀穂先生から学びを深めてみてくださいね。
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