積み上げられたコインの上で瞑想する女性のコラージュ

幸福になるお金の使い方~ヨガ的なお金との付き合い方を考えてみよう~

ヨガを練習している人は、強欲は良くないと学ぶため、お金に対して後ろめたく感じてしまうこともあるかもしれません。

しかし実生活では、綺麗事を言っていられない場面もあります。

お金との関係を自分の中で整理しておく事も、今より心が自由になるためには必要なのかもしれません。

お金は人を幸せにしてくれる?お金は不幸を減らしてくれるもの


人には話しにくいですが、お金のことで不安があるという人はとても多いと思います。

お金が足りないことが苦しみを生むのであれば、イコールでお金があれば幸せになれると思う人は多いと思います。

しかし最新研究では、充分な所得は不幸を減らすものではあるけれど、幸福感を増やすものではないと言われています。

つまり、不幸を減らすことと、幸福を増すことはイコールではないということです。

不幸の原因を取り除いてくれるとはどういうことでしょうか。

例えば、歯が痛いことはとても大きな不幸です。常に不快感があり、美味しい食事を楽しむことができず、仕事や勉強での成果も上げることができません。

もしも医療費を捻出することができず歯の治療ができなければ、それは大きな悲劇です。どんどん虫歯は進行し、痛みが大きくなれば夜眠ることができません。

この時に、お金があれば不幸は取り除くことができます。そう言った意味で、お金は快適な人生を過ごすために必要なものということができるでしょう。

ここで多くの人は、お金があれば今の自分の不幸を取り除くことができ、お金があるほど今よりも幸福に生きることができるのだと勘違いしてしまいます。

その結果、お金を得ることが人生の優先順位の1番目となってしまい、大切な人との時間や、休息を削ってまでお金を稼ぐことに必死になってしまいます。

しかし数年前の研究で、年収が7万ドル以上の人は、収入が上がってもそれほど満足感が上がらないと分かっています。物価の上昇があるので、現在はもう少し高い数値かもしれませんし、住む場所によってはここまで必要ないかもしれません。この数字は、住む場所と食べるものと着るものが安定して手に入り安全に生活できる所得です。

つまり、安心して生きるための道具としてお金を手に入れることは有益ですが、それ以上に稼ごうとすることは幸福感には繋がらず、むしろお金の奴隷になってしまう危険性があります。

周囲の人と比べて、自分の方が収入が低いからと短絡的に嘆く必要はありません。

自分が生きていくために安全な住居と食事が手に入れば、それで充分だと感謝できるようになりたいですね。

お金よりも満足感を与えてくれるもの


お金は稼げば稼ぐほど「今よりもっと」という欲望を生みます。

では、いつになったら満足感を得ることができるのでしょうか。

満足感を得るためには、数字を追いかけるのではなく、自分の役割をしっかりと認識することが大切です。

ハーバード大学で幸福について研究するアーサー・C・ブルックス先生は、インド、ムンバイの有名なスラム街ダラヴィ地区を訪れました。

私たちが発展途上国のスラムと聞くと、可哀想な人たちをイメージすると思います。危険で汚く、貧しい人たちの巣窟だと思いませんか。

しかし実際にダラヴィを訪れたブルックス教授は、スラムを生きる人々の生き生きとした姿に驚かされます。

ムンバイのスラムでは、プラスチックのリサイクルが行われ、革製品、陶器製品の生産など、多種多様なビジネスが行われています。

そんな彼らは、社会的な立場は決して高くありませんが、自分たちの手でビジネスを生み出し、着実に仕事をしていると自信にあふれています。

人生の満足感を得るのに大切なことは、どれだけの金額を稼ぐかではありません。自分が行なっている仕事によって、どれだけ人の役に立っているのか、また、自分の手で何かを生み出したという実感です。

そこに必ずお金が必要なわけでもありません。主婦にとっては、自分が創意工夫して料理した食事で家族が幸せに生きること、農業をしていれば自分が育てた野菜が実ること、その実感を感じることが幸福感を得るために大切なのですね。

ヨガ哲学では、自分自身に与えられた役割をダルマ(職務)と呼びます。

自分の仕事が価値のあるものだと知ることがとても大切です。

幸福になれるお金の使い方を身に付けよう

富は独占しようとするほど苦しくなります。

仕事をして得た富によって高級な物を購入すると、一時的な高揚感を得ることはできます。しかし、それは長く続く幸福ではありません。

贅沢は、1度覚えるとより大きな刺激を求めて、より大きな財が必要となります。

例えば、テレビのサイズを毎年大きくし続けても、一時的な快楽を得られるだけで人生の幸福感はそれほど変わりません。

その結果、すでに手にした物では満足できなくなり、幸福を感じられなくなってしまいます。

それでは、幸福を感じられるお金の使い方とはなんでしょうか。

最新の研究では、以下のことにお金を使うことは、いずれも確実に幸福度を高めると分かっています。

  1. 経験を積む
  2. 時間を買う
  3. 他人を助ける

少しでも余分な収入がある場合は、お金をこれら3つのことに使うのが最善です。

経験にお金を使うことはとてもいいことですね。

例えばヨガを学ぶことも、遠方の先生に会いに行きたければお金が必要です。

その旅費があれば高級なバッグを買うことができたかもしれませんが、物質よりも尊い満足感と経験を得ることができます。大切な人と、旅行に行くなどに使うのも幸福感が高いお金の使い方です。

自分のお金を使って慈善活動や価値ある活動を支援すると、脳内のドーパミン、セロトニン、オキシトシンが増加し、気分が高揚します。慈善活動への寄付は、より高い収入にも繋がると分かっています。

これは、『ヨガ・スートラ』の中でも、アステイヤ(不盗)として書かれています。

アステイヤの戎業に徹したならば、求めずして、あらゆる地方の珠玉が彼のところへ集まる。(ヨガ・スートラ2章37節)

他人から奪うのではなく、与える人になることが重要です。

出ていくことは「損」ではありません。有意義なこと、誰かと一緒に幸福になれることに使うことができれば、必ず富も循環します。

与える人になろう。~アステイヤ(不盗)で得られる大きな富~

『バガヴァッド・ギーター』では、布施について書かれています。

布施も、富に対する欲望や執着を手放すのに良い行いです。

「与えられるべきだと考えて、見返りが期待できぬ相手に、場所と時間と受者が適切な場合に与えられる布施は、純質的な布施だと伝えられる。(バガヴァッド・ギーター17章21節)」

この定義だと、お布施とは神社仏閣などの宗教施設に金品を贈ることだけではありません。インドでは、ヨガなどの修行者に対して、尊敬の意を表して食事や必要なものを差し出す文化があります。

また、貧しい人に、ただお金をあげれば良いというわけでもありません。

例えばフェアトレードの商品を購入することは、発展途上国の人たちが自分たちで生計を立てて生活する尊厳を守る事もできます。

「可哀想な人」と呼ばれてお金だけを贈られるより、自分自身で生み出したものによって所得を得る方が相手の幸福に繋がります。

お金である必要もありません。必要な人に知識を共有すること、大きな悩みがある人に自分の時間を使って話を聞いてあげること、私たちが提供できる物を周囲と共有することは、大きな幸福に繋がります。

自分らしいお金との関係性を築こう


お金の問題は、とても生々しく、目を背けたくなってしまうこともありますね。

特にヨガをしてスッキリしている時には、そんな現実的なこと見たくないと感じる人もいるかもしれません。

しかし、何のためにお金を稼ぐのか、そのお金でどのように生きたいのかが分かっていれば、お金を稼ぐことは決して後ろめたいことではありません。

また、自分の生活に必要なものが揃っていれば、収入が低くてもそれは恥じることではありません。

自分らしいお金との付き合い方が見つけられると良いですね。

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