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ヨガを練習すると自分の体への意識が高くなるので、食事について考えることも多くなると思います。
世間には様々な食事法がありますが、ヨガの練習に適した食事はあるのでしょうか。
ハタヨガの教典から、ヨガに適した食事について考えてみましょう。
ハタヨガ教典に書かれた食事のコツ
ハタヨガは、アーサナ(ポーズ)やプラーナーヤーマ(調気法)といった身体を使った練習を沢山行うヨガです。
より上級の練習を行うためには、身体への負担もかかるため、食事や睡眠を整えることもとても大切です。
ヨガに適した食材
教典『ハタヨガ・プラディーピカ』の1章にはヨガにふさわしい食材が書かれています。
古代インドの気候と人種に適した食事なので、現代の私たちがそのまま全て採用するのは難しいかもしれませんが、参考になる部分もあります。
お勧めされている食材をご紹介します。
- 小麦
- こめ
- 大麦
- 早稲米(わせまい)
- 牛乳
- ギー(精製バター
- 砂糖
- 新鮮なバター
- 蜜
- 乾燥しょうが
- きゅうり
- 5つの野菜
- いんげん豆
- きれいな水
穀物の中でも、消化に時間に時間のかからないもの、乳製品、砂糖や蜜などの糖質がヨガには適しています。
また、インドでは豆類が貴重なタンパク質源ですが、やはり消化に負担のかからないムング豆などがヨガには適していると考えられています。
ここでいう5種類の野菜が正確に何を指しているのか分かりませんが、インドで行われる断食の時に食べることができる野菜は消化の火を高めると言われているので参照してみましょう。
ナヴラートリという9日間のお祭りでは、じゃがいも、さつまいも、里芋、じゃがいも、トマト、瓜科の野菜、にんじんを食べることができます。
やはり糖質の高い芋類が多く、すぐにエネルギーになるものが採用されています。
ヨガの練習は、腹部を刺激するものがとても多いです。
胃の中に未消化物が残っていたり、便秘の状態でヨガを行ったりすると逆効果になってしまう場合もあります。
激しいヨガの練習を行うときほど、消化しやすい食事を選ぶことが大切ですね。
ヨガで避けるべき食材
反対に避けるべきとされる食べ物についても言及されています。
- しょっぱいもの
- 熱いもの
- 野菜
- 刺激性のもの
- 菜もの
- ビンロージュ
- ごま
- ごま油
- マスタード
- 酒
- 魚
- 肉
- カード(凝固した牛乳)
- 水で薄めたバターミルク
- ニンニク
- 油で揚げたお菓子
- ナツメ
- 1度冷めたものを温め直した食事
- 油気がない乾燥した食事
刺激性の食べ物は、『バガヴァッド・ギーター』の中でラジャス(激質)の食べ物として書かれています。
辛いもの、塩辛いもの、熱いもの、酸っぱいものなどは、食べると心と身体がアクティブになります。
ヨガでは心と身体を穏やかにしたいので、これらの食べ物はあまり適していないと考えられています。
特にヨガの住み込み道場(アシュラム)では、玉ねぎ、ニンニク、唐辛子は禁止されている場所もあります。
食べ物は直接的に心に影響を与えるので、ヨガではとても厳格に考えられています。
ビンロージュは日本ではあまり聞きませんが、噛みタバコのように食べられている嗜好品です。精神を高揚させる効果があり、アルコール同様ヨガには適していないと考えられています。
肉製品や、油で揚げたお菓子などはタマス(暗質)の食べ物とされます。
油っぽい食べ物は、お米などに比べて倍くらい消化に時間がかかることが多いです。胃のなかで消化されずに残ってしまった未消化物はアーマと呼ばれ、体内で毒素を生み出すと考えられています。
ここで理解しないといけないのは、これらの食材は瞑想的なヨガの練習を行う場合に避けるべき食べ物であって、書かれている食材であっても、必ず身体に悪いという意味ではありません。
食べる量に気をつける
ハタヨガでは、食べる量についても言及されています。
胃の大きさの50%は食べ物、25%は水、残りの25%は空気で満たすべきと考えられています。
つまり、ヨガの修行では腹5分目なのですね。
食べるべき食材で、糖分が高い食べ物が多いのも、少量で元気を得ることができる食べ物が相応しいと考えられているからです。
消化にはとてもエネルギーが必要なため、そこに体力を使われてしまうことでヨガの練習の妨げになってしまうと考えられています。
仏教の開祖であるブッダも、キールという乳粥を食べた後に悟りを開いたと言われています。
キールは現在のインドでも祭事に好まれる食べ物で、お米、ミルク、砂糖を煮込んだ乳粥です。
消化できない時のクリヤ(浄化)
ヨガでは、何時間も消化できなかった未消化物を体内に残すべきでないと考えます。
そのため、吐くことによって胃を洗浄するテクニックがあります。
食べ物が胃の中にある時には、血液を消化に使わなくてはいけません。
しかし、2〜3時間経っても消化できずにそのままヨガの練習をすると、消化にエネルギーが使えずに胃もたれを起こしてしまいます。
消化しきれなかったものを吐き出すことによって防ぐのがヴャーグラ・ダウティです。
ヴャーグラ・ダウティという実践は、食後2〜3時間後に、水を飲んで吐き出します。
これは間違った方法で行うと不健康に繋がるため、必ずグル(師)と共に学ばなくてはいけない技術です。
ヨガで特に大事なギー(精製バター)
ヨガで最も大事にされている食材はギー(精製したバター)です。
特にプラーナーヤーマ(調気法)を行う場合の注意点で、牛乳とギーを摂ることが書かれています。
牛乳は熱を冷ます作用があります。プラーナーヤーマの練習では体内で熱を生み出して不純性を燃やしますが、熱くなりすぎた体を鎮静化してくれるのが牛乳です。
ギーは消化の力を助けるだけでなく、胃を守ることができます。
特に、ヨガのクリヤ(浄化法)という実践では、胃腸の洗浄を行う練習がいくつもあります。
胃腸が空っぽになった状態で急に食事を食べると、胃を傷つけてしまうことがあると考えられており、断食やクリヤの実践の後には必ず最初にギーをたっぷり使ったキチュリ(ムング豆を使ったお粥)を食べます。
プラーナーヤーマの練習は風の性質を起こすため、乾燥することに要注意です。
乾燥した食べ物を避けて、上質な油を摂取することが大切です。
経典を参照しながら自分に合った食事を選ぶ
ここまで、ハタヨガの教典に書かれた食事についてご紹介しました。
しかし大切なことは、盲目にならずに自分の身体を観察することです。
健康な食べ物は人によって違います。1人1人が違う身体とライフスタイルを持っているので、万人にとって最適な食事はありません。
特にヨガでは、ギー(精製バター)は誰にとっても良いと考えていますが、筆者のヨガ哲学の先生は、長年ギーを強制されて食べていたことで具合が悪くなり、検査した結果乳製品アレルギーが見つかりました。
現在ではビーガン食の人も増えているので、植物性の油を好む人も増えていますが、昔のインドではギーは誰にでも良いのだと考えられていました。
一方で、ヨガを始めたことでベジタリアンになり、大豆製品を多く食べるようになった人が、体調を崩して数年後にベジタリアンを止めるといった話も頻繁に聞きます。
大切なことは、自分自身の身体の声を聞くことです。
同じ人で合っても、年齢が変わると食の嗜好が変わることもありますし、住んでいる場所、季節によっても適切な食事は変わります。
何かに盲目になることなく、毎日の食事で自分観察を楽しみたいですね。