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“自分の心をコントロールすること”はとても難しいことです。
さまざまなリラックス法を試してみても、すぐに不安やネガティブな気持ちが戻ってきてしまうことがありますね。
そう言った時には、食事に関して見直すことも1つの手です。
私たちの身体を作っているのは食事ですが、実は心にも影響を与えることには気が付いていますか。
今回は不安な気持ちになりやすい食べ物について考えてみましょう。
ヨガ的に考える3種類の食事
ヨガではあらゆるものをサットヴァ(純質)ラジャス(激質)タマス(暗質)の3種類に分類します。世界のあらゆるものは、この3つの性質からできています。
私たちの身体も、心も、3つの性質によって作られていて、どの特性が優勢になっているのかで状態が変化し続けています。
私たちが日常で関わる全てのものの性質が、私たちの心と身体に影響を与えています。
その中でも最も顕著なのは食べ物です。
食べたもののエネルギーがダイレクトに身体に吸収され、私たち自身の状態を変化させます。
最初に3つの性質についてみていきましょう。
幸福感を増やすサットヴァ(純質)な食事
サットヴァな食事は生命力や健康を増大し、美味しく幸福感に繋がる食事です。
ヨガの教典では良質な油、乳製品、砂糖などを勧められることが多いです。また、新鮮な果物やお野菜も良いですね。
しかし、何をどれだけ食べるべきかは人によって違います。自分自身の体が喜ぶ、美味しいと感じられる食事がサットヴァ性の食事です。
感情を揺さぶるラジャス(激質)な食事
刺激が強く、身体と心をアクティブにする食事はラジャス性です。
辛いもの、苦いもの、塩辛い、油気なく乾燥した、酸味の強い食べ物が含まれます。
具体的には、唐辛子や玉ねぎ、ニンニクなどの刺激性の食べ物が多いです。
また、カフェインを多く含むコーヒーもラジャス性です。
これらは痛みと憂い、病気をもたらすと考えられます。
怠慢になるタマス(暗質)な食事
新鮮でないもの、何度も加熱調理されたもの、悪臭のある食べ物はタマス性です。
よく言われるのが加工肉など、長期間保存するために添加物を沢山加えたもの、アルコール類、インスタント食品や、古くなった油で調理された揚げ物などです。
インドはベジタリアンが多いのですが、それは殺戮の痛みの記憶が残るタマス性の食べ物を自分の内側に取り入れたくないからだと考えられます。
不安を増大させるラジャス性の食べ物を避けてみる
さて、それでは不安な状態を招く食べ物とはどのようなものなのでしょうか。
不安とは、まだ来ていない未来に対する恐怖心です。
未来のことは誰にも分かりません。どれだけ貯金があっても、地位や名誉がある人であっても、数年先のことは分かりません。
私たちの心は、未来のことを考えると必ず不安になります。
では、未来への思考はヨガ哲学的にどのような特性かというと、ラジャス性(激質)が高まった時に現れます。
ラジャス性はあらゆる激しい感情の性質です。
手に入れたいものへの願望、欲望が叶わない事や、今ある何かを失う不安、今の自分に満足できない、それらは全てラジャス性です。
将来について焦っているとき、もっと頑張らないといけないと自分を鼓舞している時には、自然とラジャス性の食べ物を選択しがちになります。
具体的に考えてみましょう。
アクティブな性質の食べ物を見直す
忙しい時、何か難しいプロジェクトを行なっている時などには、刺激の強い食べ物を求めてしまいませんか。
味の濃いめの料理、スパイシーな料理、ピリッと辛い料理などがそれです。
忙しい時には「いつまでにこれをやり切らないといけない」といった緊張感が強くなります。そう言った時には、緊張状態を高めるような刺激性のものを求めがちです。
また、疲れて眠くなってきたら、コーヒーやエネルギードリンクのようなカフェインの多い飲み物を摂取する人も多いことでしょう。
これらは緊張感を高めて思考と身体をアクティブにしてくれるので、仕事で集中したい時などには便利です。
しかし、自然界での緊張感とは、常に敵に襲われるなどの危険から身を守るためのもので、長時間緊張感を続けていると強いストレスが溜まってしまいます。
本来の身体のサイクルでは、緊張感と弛緩を繰り返してバランスを取っていますが、不安感を高める緊張状態をカフェインによって維持し続けるのはよくありませんね。
ヨガ的に見た肉食について
ヨガを練習してから、自然とベジタリアンになる方はとても多いです。ヨガの生まれたインドはベジタリアンの多い国です。
ヨガの世界では、鶏肉や豚肉などを食べる時には、自分自身にネガティブな感情を取り込んでしまうと考えます。
お肉をいただくためには、その前に殺戮が行われています。消費者である私たちは、スーパーマーケットで綺麗に処理されたお肉を購入するので気がつきませんが、お肉の中には動物が殺された時の恐怖心や苦痛が残っているのだと考えます。
痛みや苦しみ、恐怖感を、食事を通して自分の内側に取り込むことになると考えられています。
宗教的な規則というよりは、自分自身の快適さに意識を向けた結果、ベジタリアン食を選ぶ人もとても多いです。
口にするものを選んで実験してみる
ヨガ哲学で学ぶ不安になる食べ物を書いてみましたが、これらは文字で学んでも全く意味がりません。
感情がアグレッシブになりすぎている、夜になるとさまざまな不安に胸が苦しくなるといった悩みがある人は、実際にラジャス性の食べ物を制限して自分の体で実験してみましょう。
食べるものの習慣を変える時、最初の2週間はとても難しいです。
例えば、コーヒーを断とうと決心して実践した結果、最初の1週間はとても苦しい思いをする人も多いです。
1日に何杯もコーヒーを飲んでいた人であれば、突然コーヒーを断つと急激に眠くなったり、体が重たく感じたり、思考が働かないといった離脱症状が出て、仕事に支障をきたしてしまう場合もあります。
筆者の経験では、とても強い頭痛と吐き気が必ず起こります。
そのため通常は、1日1杯だけに減らすなど緩やかに習慣を変えていきます。
しかし、今まで口にしていたものが、心と身体にどのような影響を与えていたのかを理解するために、あえて急に断つ実験をしてみても良いでしょう。
注意点は、最初の2週間くらいで安易に結論を出さないことです。
習慣を変えるのには必ず時間がかかります。例えば毎日お肉や魚を食べていた人が突然ベジタリアンになったら、最初はエネルギー不足を感じ、うまくタンパク質が摂取できなくて一時的に栄養のバランスの偏りを感じることもあります。
塩分の多い食事をしていた人が急激に減塩をしたら、最初は立ちくらみを感じてしまうこともあります。
インドでは年に2度季節の変わり目にナブラートリというお祭りがあり、9日間決められた食事を食べます。塩分を含む食事は夜のみで、朝と昼は果物やナッツ、乳製品を摂取します。
通常時より摂取するカロリーが減り、塩分も急激に減るので貧血のような症状が起きることもありますが、9日間が終わると体がデトックスされて快適になります。
一生何かを断つ決心はできないという人も多いでしょうが、精神的にストレスが大きくなってきた時に、2週間限定といった形でデトックスを行うもの効果がありますね。
自分自身の心と食事の関係を見直そう
今回の記事では具体的な食材についても書きましたが、どんな食生活が合うのかは人によって全く違います。
例えば「アーユルヴェーダの教科書に書いてあるからこれを食べるべき」と思っても、人によってはアレルギー反応を起こすこともあります。
また、インドのヨガやアーユルヴェーダでは新鮮でないものは良くないと考えますが、日本の風土と日本人の身体には味噌などの発酵食品があっています。
世界中に様々な食事法がありますが、万人に当てはまる正解はありません。
大切なことは、自分自身にとって何が快適かを探すことです。
食べたものと感情は直接的に繋がっています。
例えば筆者は、どれだけ腹が立っている時でも、甘いものを食べれば一瞬で機嫌が戻ります。緊張している時にはシナモンの入ったチャイを飲むと穏やかになります。
嗅覚や味覚で感情が変わることもあれば、カフェインのように体内に取り込まれてから影響を受けるものもあります。
じっくりと自分観察を楽しんでみてください。
食事を変えただけで、驚くくらい心に変化を感じられることがあります。