年末年始には、1年を振り返り新年に向けて抱負を考える方も多いと思います。
自分自身の抱負、目標を聞かれてパッと答えられる人はどれくらいいるのでしょうか。
新年の時期になると慌てて抱負を決めようと思ってしまいがちですが、抱負はそんなに簡単に見つかるものではありませんね。
目標というのは、道を歩んでいくときの目的地です。
長い人生の時間の目的地をインスタントにお正月だからと決めてしまうことはできず、結局3日後には忘れてしまう人も多いと思います。
ヨガでは自分に対する決意、抱負をサンカルパと呼びます。
ヨガ的な抱負であるサンカルパについて考えてみましょう。
サンカルパは生き方の指針
毎日何のために頑張って仕事をして、生きているのだろうかと考えてしまうことはありませんか。
生活が忙しいと、目の前のタスクをこなすことに必死で、どこに向かっているのかわからなくなってしまいますね。
その状態だと、日々の選択の中でも、その場をやり過ごすことに精一杯で今の状況から変わることができません。
例えば、家族との関係をよくしたいと心の中で思っていても、生活に追われているとついつい小言を言ってしまいがちですし、無意識に相手を蔑むような言い方をしてしまっているかもしれません。
私たちの言葉はあまりに無意識で、強く決心しないと変えることができないものです。
サンカルパは、自分自身がどのように生きたいのかの指針です。
家族との関係を修復したい場合、待っていても相手から急に優しい言葉を投げてもらえるわけではありません。
自分自身から日々の言葉に気をつけなくてはいけませんね。
どのような言葉を選択するのか、といった瞬間的な判断を変えるためには、自分の心に常に指針を抱き続けていないといけません。
それは簡単なことではありません。だからサンカルパは毎日繰り返し唱え続けなくてはいけません。
自分の進む方法が分かっていれば選択を間違えることがありません。
今、自分の中に生まれた小さな悪意を発散してスッキリすることが自分の求める生き方なのか?
そんな自問自答が自然にできるようになると、いつの間にか自分の行動が変わっています。
すると、自分の周囲の流れも変わってきます。気がつくと、求めていた世界の中に生きていると気がつく時が来るでしょう。
どれくらいの時間がかかるのかは知ることができませんが、必ず変わってきます。
必要なことは、自分がどのように生きたいのかの決意をすることです。
自分だけのサンカルパを見つける
サンカルパは自分がどのように生きたいのかの決意です。
自分の人生を決めるのに、インスタントに宣言してはいけませんね。自分が本当に何を求めているのか、じっくり時間をとって向き合わなくてはいけません。
全人類に共通する最高のサンカルパは「アーナンダ(至高)」です。
これは疑いようがなく、誰もが共通して同じ目標に向かっています。
アーナンダとは汚されることのない、途絶えることのない幸福です。
「幸せになりたい」という願いを全ての人が抱いています。
本来であれば、誰もが「幸せになる」という同じサンカルパを唱えれば良いのですが、どうしてそれではうまくいかないのでしょうか。
それは、自分自身がどうなったら幸せなのかが分かっていないからです。
情報が多すぎることで見えなくなる目的地
自分の幸せ、サンカルパが分からなくなってしまう大きな要因の1つは、入ってくる情報の多さです。
現代社会では様々な価値観を認める多様性が重要視されていますが、自分自身が定まっていない人にとっては困惑を生んでしまいます。
また、同じ目標を掲げていても、どうしてそれを求めるのかという価値観が違う場合もあります。
例えば、みなさんヨガを練習するのは今よりも幸せな状態になるためだと思います。しかし、その向き合い方は違います。
「ヨガの道を進む」というのも1つのサンカルパですが、ヨガとの向き合い方には様々な正解があります。
- 少しでも多くの時間をヨガに費やしたい。生活の中心にヨガがあり、ヨガが最優先。
- 家族の用事でいけない日もあるけど、たまにヨガに行くと体がスッキリして気持ちいい。
- ヨガの先生になって指導がしたいから養成講座やワークショップに積極的に参加したい。
- 毎日自分のペースで、自宅でヨガを楽しみたい。あまり干渉されるのが好きではないので、ワークショップなどに誘われても憂鬱。
- ヨガのコミュニティの中にいるのが楽しい。毎週同じ曜日にクラスに通い、常連さんとカフェに行ったりするのが楽しい。
- 毎週決まった曜日にヨガに行くけど、練習だけしてサッと帰りたい。ヨガは自分の時間なので、練習にだけ集中したい。
どのようにヨガに向き合うのかは、それぞれの人生のライフスタイル次第なので正解はありません。
しかし、自分と違う価値観を持った人の情報が入ってくると、自分の求めるものが分からなくなってしまうこともあるでしょう。
すると、「どちらが良いのか」「正解か不正解か」といったジャッジが始まります。
「ヨガを志すなら、すべての時間をヨガに捧げるのが1番良いに決まっている。」
「社会人として仕事もきっちりとこなしながら、ヨガにも通って健康を維持しているのが素晴らしい。」
「1番大切な家族と向き合うことが1番大切だから、ヨガにいけない日があっても仕方ない。」
「ヨガで素敵な人たちと喜びをシャアできるのが素晴らしい。」
どれも正解です。
しかし、人の価値観を受け取った時に「それができていない自分は駄目なのだ」と思ってしまったり、「自分の方が正しいに違いない」と反発してしまったりしては苦しみが生まれます。
どうして反発が生まれてしまうのでしょうか。
それは、自分自身にとっての快適な場所が分かっていないからです。
大切なことは、より多くの情報を得ることではありません。自分の内側にしかない、自分らしい答えを見つけることです。
サンカルパは自問自答で見つける
サンカルパを考える上で大切なのは、1番大切な目標は「幸せになること」だという軸を忘れないことです。
それを踏まえた上で、今自分の心の中にある願望や目標が本当にサンカルパとして適切なのかを考えてみましょう。
「難しいアーサナができるようになりたい」と願っている人であれば、どうしてそれを願っているのかを自問自答することが大切です。
最終的な「幸せになりたいから」という目的は同じでも、通る道は今まで自分の人生で生み出してきた思考によって様々です。
ある人は、「努力して成果を上げたら自分に自信が持てるから」だと考えるでしょう。
つまり、その人は「自信を持って生きたい」というのが本質的な願いです。
別の人は「難しいことができれば人から評価され、馬鹿にされないから。」だとします。
その人にとっては「自分を否定されたくない」というのが本心かもしれません。
このように、何が本当の願いかが分かってくると、最初の目標も変わってくることがあります。
「否定されたくない」が本心の場合、そのまま難しいポーズができるようになっても、他者と比較し続けたら幸福は訪れません。
それであれば、「難しいポーズができない自分も、他の人も、受け入れられる自分になる」という目標の方が適切かもしれないです。
「この目標が叶った時、本当に自分は今よりも幸福になれるのか」と自問自答し続けることはとても大切です。もちろん、間違った目標を作ってしまうこともあります。
間違っていたなと気が付ければ、受け入れて手放し、新しい目標を考えることも大切です。
その積み重ねで、自分の本当の幸福が何かが見えてきます。
サンカルパを忘れずに生活する
間違ったサンカルパを決めてしまうことは問題ではありません。
毎日サンカルパを唱えて、心に留めていれば、それが間違いであっても気がつくことができます。
問題なのは、3日坊主でサンカルパを忘れてしまうことです。
サンカルパを毎日唱えるのは、自分の生き方の方角を確認する作業です。
自分が幸せになるために、どの方角を向いて歩けが良いのか、コンパスや地図を確認しないと、目的地にはなかなか到達することがありません。
逆に、行き先が分かっていれば、必ずそこに到達することができます。
徒歩で行くのか、電車に乗るのか、ヒッチハイクするのかと、様々な行き方があれば、到達までの時間も違いますが、少しずつ目的地に近づいていく工程は楽しいものです。
皆さんも、自分自身の心の声に向き合って、毎日サンカルパを唱える習慣を身につけましょう。