バクティヨガ2:日々の生活の中で献身の心を養う

バクティヨガ1:バクティヨガを実践しましょう 

言葉を超えて、愛がある。概念を超えて、愛がある。哲学を超えて、愛がある。批判を超えて、愛がある。夢を超えて、愛がある。愛は自己すら超越する。愛を崇拝する気持ちに全てのものがひざまづく。そして愛はあらゆるものを包み込み、更に広がって世界を満たすのだ

バクティヨガとは愛のヨガ

愛はアーサナの練習でつい忘れがちなもの。アーサナの練習といえば、脚の筋肉を引き上げたり、肩の力を抜いたり、背筋を伸ばして、お腹を引き入れて、といった指導を受けます。マインドを静め、呼吸を観察し、心を開くことを学ぶ練習でもあるけれど、ヨガのクラスで「愛」という言葉を耳にする事はどれくらいありますか?

クラスの始めにその日のテーマとして話に出たり、「自分への愛を忘れないで」といった導きの言葉として聞く事はあるかもしれないけれど、愛を定義するのは実際は難しいことです

夕暮れ時の海辺の砂浜で肩を寄せ合ってブランコに乗る男女
愛とは、私たちを繋げるもの

愛は言葉や思考さえも超越する、純粋な気持ちであり、心をいっぱいに満たしてくれるもの。恋に落ちたり、子供を作ったり、家族や友達といる時に感じるもの。美しい夕焼けを見たときや、自然の中で過ごす時、遊び、楽しんでいる際にも感じる愛。

愛は生けるもの全てを繋げる、と言われています。ということは、愛は単なる気持ちではなく、私たち全てのものをつなぎとめる接着剤みたいなものなのです。私たちを繋げるもの。愛とはヨガそのもの!

バクティヨガは「愛のこもった執着(愛着)、もしくは献身」と定義されることがあります。「愛のこもった執着」と聞くと、子に対する母親の姿が思い浮かびます。母親は自分の子供に絶対的な献身を尽くし、子供はその母親の愛に完全に守られ、包まれていると感じるのです。

私たちはそんな愛情と安心感を大人になってからも求めていて、バクティの実践は、愛への思慕を高める方法の一つであり、切望する気持ちそのものが、私たち自らの内なる神性に導いていってくれるのです。

赤ちゃんを抱きしめている女性の微笑み
子に対する母の献身は、愛そのもの

気持ちや感情の表現はバクティの中で大きな部位を占めています。自分の心で実際に感じなければ、愛とは何かを知る事はできません。愛に狂って、愛の海に溺れて初めて、真の幸福を見つけることができるのだと、いくつかのバクティヨガ教典は強く述べています。

私たちの内に奥深く存在し、また周りを取り巻いているこの愛というエネルギーに恋に落ちた時、自己変容を遂げ、内なる安らぎを見つけることができるのです。

自分に取り入れたいと思うすばらしい特質をもった人や、その特質を象徴するものに対して愛と献身の気持ちを表現するのもバクティが勧める実践の一つです。

愛を概念のまま愛するのは難しいでしょう。子供や恋人、周りを取り巻く自然など、実体のあるものに愛情を注ぐほうが簡単です。シャクティ(エネルギーまたは振動)がこの世界に命を吹き込んでいるという見方であり、花や貝殻、炎もまた、シャクティが物質化したものだというのです。

マントラを唱える人たち
マントラを唱える人たち

バジャン(一体になっての詠唱)やキルタン(コール&リスポンス)で神の名前を歌うのもバクティの一面です。ヒンズー教では、自我のあらゆる面と同じ数だけ神様がいます。バクティではこの神様の名前を用い、それぞれの神様にはビジャ・マントラという種の振動があると考えています。

ガネーシャ(障害を取り除く神)のマントラを唱えれば、ガネーシャそのもの、障害物を取り除くエネルギーと一体化します。バジャンやキルタンは愛と調和の雰囲気を作り出します。人と一緒になって歌うのは気持ちの良いものです。甘く素敵なメロディーに涙を流したり、喜びで心が満たされることもあるでしょう。

バジャンやキルタンで音を繰り返し唱えることで、トランス(恍惚)状態を引き起こし、「リラクゼーション反応」を刺激します。リラクゼーション反応は副交感神経系の反応であり、マインド内の思考を手放そうとする意図と同時に反復行為を行うことで引き起こされます。

自分のための祭壇を作ろう
自分のための祭壇を作ろう

バクティヨガについて学んだのはいいけれど、じゃあ実際どうやって実践したらいいの?と思っているかもしれません。 そんな人のために、毎日簡単にできる実践法を紹介します。私たちは愛で出来ていて、愛によって周りのもの全てと繋がっているのだと思い出させてくれるバクティヨガです。

  1. 毎朝起きてすぐ、祈りの形に手を合わせ、「ナマステ」と唱えます。自分がどんなに美しいかを感じ、愛し愛されることが出来ることに感謝の気持ちを抱きましょう。自分の人生に愛をもたらしてくれるあらゆる経験や人について顧みる時間を作ります。
  2. 1日を過ごす中で、美しいものに目をやる時間をとりましょう。道端に咲く花や木々、鳥、子供の顔やお寺、心に響くもの何でもいいのです。そうやって目に留まった美しさは自分自身の美しさの反映なのだと思い出しましょう。時間があるのであれば、何か美しいものを家に持ち帰ります。毎日目にすることができるよう、特別な場所に飾りましょう。
  3. 時間に余裕がある時に、自分のための祭壇を創りましょう。自分がどれだけ愛されているか、まわりに与える愛に満ちているかを思い出させてくれる場所です。例えば、小さなテーブルの上に大切な写真や、拾ってきた宝物、インドの神様の像などを置いて、花やロウソクで飾っても良いでしょう。自分の居場所にこうした特別な聖地を作ることで、愛のエネルギーが溢れていくのです。

バクティヨガの実践は簡単に出来るものです。ほんのちょっとの時間と、オープンで自発的なマインドと心が必要なだけ。バクティを毎日実践すれば、人生のあらゆる面に愛と調和が訪れるでしょう。

一輪の花
一輪の花

葉っぱ、一輪の花、果物、水、それが何であろうと、愛と献身の気持ちをもって捧げられたものならば全て受け入れよう
(引用)バガバッド・ギータより:クリシュナのアルジュナ王子に向けた言葉

レイチェル・ジンマン バクティヨガ
レイチェル・ジンマン

文:レイチェル・ジンマン

世界でも有数のパワースポットと呼ばれるオーストラリア・バイロンベイに拠点をおき、日本をはじめインド、バリ、ヨーロッパと世界中で活躍するヨギーニ。ヨガ歴20年以上指導歴18年のベテラン講師で、毎年バイロンベイにて日本人向けヨガインストラクター養成コースを開講、今年で9回目を迎える。彼女の実践するバクティヨガは「愛」のヨガ。ヤントラ(形)やマントラ(音)、ムドラ(印相)を用いてヨガに深みを与えることで、アーサナに偏りがちなヨガからホリスティックなヨガへと導いていく。近年ではヨガインストラクターとして更に成長していきたい方のための上級者向けリトリートをバリにて開催するなど、継続的な指導に力を注いでいる。