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今、ヨガジェネレーションで最も注目されている資格講座「ヨガ指導者のためのピラティスインストラクター養成講座」。そして、2024年より、ヨガジェネレーションが運営しているヨガスタジオ「オハナスマイルヨガスタジオ」でもいよいよ「ピラティスレッスン」がスタートしました。
ヨガとピラティス。一見マットの上で行うエクササイズとしては、似ているようですが、その歴史や目的は全く異なっています。
今日は、このヨガとピラティスの歴史や目的、考え方や方法という視点からその違いをご説明しようと思います。
①発祥はインドとドイツ。歴史的背景の違い
所説ありますが、インド発祥のヨガの歴史は約4500年前に遡ると云われており、真偽のほどはよくわかっていません。
現代の日本では、ヨガ=アーサナ(ポーズ)の側面が強く、スタジオで行われているヨガのほとんどは、ポーズの実践を行います。しかし、本来ヨガとは哲学のことを指し、インドでは「体はアーユルヴェーダで、心はヨガで」と云われているほど。
心を整え、真理へ向かう探究方法としてヨガは実践されてきました。
その修行法の1つが瞑想。瞑想で長く座り続けられる心と体を作るため、アーサナ(ポーズ)が行われていたのです。
そのため、宗教的な側面が強いものでしたが、アメリカに渡り広まってからは、その思想は弱まり、エクササイズとしてのヨガが日本にも入ってきました。
それに対して、ピラティスの歴史はここ約100年ほど。ドイツ人の従軍看護師ジョセフ・ピラティスが、第一次世界大戦で傷を負った兵士のリハビリを目的に開発したエクササイズです。
祖国ドイツで実践したのちニューヨークという大都会に渡り、多くの上流階級の人々や著名人、ダンサーなどに広まりました。
彼は、人間の本来の健康と幸福を貪欲に研究し、その過程で様々な健康器具も考案、発明していきました。これが現代のマシンピラティスの原点です。
②サマーディを目指すヨガと人間の健康と幸福を目指すピラティス
歴史の方でも触れましたが、ヨガの真の目的は、悟り・解脱です。ヨガをしている方であれば「サマーディ」という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。瞑想を実践していき、自分の心が生み出したあらゆる制限や執着から解放された状態のことを言います。
このサマーディを目指し、やがて解脱する、悟りを開くことで涅槃の境地に至る。これがヨガの目的だとされています。
それに対して、ピラティスは人間本来の健康と幸福の獲得を目指します。人間の体と心の調和、バランスをとり、身体の筋肉や骨を意識的に動かすことで理解していくエクササイズです。
元々、リハビリを目的として生まれたため、怪我から回復するための筋力強化や姿勢の改善、身体のラインを整えたりなどを得意とされています。
③東洋哲学と西洋哲学。考え方の違い
また、ヨガはインド哲学がベースとなっているため、東洋的な考え方をします。それに対して、ピラティスは西洋的。これにはどういった違いがあるのでしょうか。
例えば、ヨガは精神性(スピリチュアル性)が高く、本来の自分(アートマン)と宇宙を支配する原理(ブラフマン)が同一である(梵我一如)の思想があります。つまり、本来の自分とは何なのかを探していく、つまり、究極の自分探しを行います。
全ての真理は自分の内側にある、というのがヨガの考え方です。
一方ピラティスは本来持っている人間の身体を良いものとし、生命力を高め、元気にすることで心も変化させる。ここで重要となってくるのが「理論」です。
例えば、良くない生活習慣からくる身体の歪みを治し、そして筋力を強化。さらに身体と心を自分の意思でコントロールし発達させる能力をつけます。
ここには正確な理論が存在します。
理論という絶対的な根拠があるのがピラティスとも云えるでしょう。
④結果に執着しないヨガと効率的に効果を出すピラティス
また、ヨガの教えは「結果に執着しないで行動すること」を教えてくれています。例えば、ヨガの有名な経典のひとつ、バガヴァッドギータ―には、
あなたの職務は行為そのものにある。決してその結果にはない。行為の結果を動機としてはいけない。また無為に執着してもいけない。
バガヴァッド・ギーター2章47節
とあります。ヨガの練習を行う時に「こうなりたい」と未来の結果ばかりを期待するのではなく「今」に意識を向けるのがヨガ。ヨガの練習そのものを楽しむこと。期待した未来が自分の描いた未来と違ったものであったとしても、その未来が実は、想像を超えるような素晴らしいものかもしれないのです。
しかし、それに対してピラティスではより効率的に結果を出すための工夫があります。ピラティスのエクササイズや呼吸方法はインナーマッスルを刺激し、とくに胴体部分の体幹を鍛える効果が期待されます。
課題に対して、効率的に結果を出すというのが、ピラティス。未来に期待をせずにひたすら修練するというのがヨガということですね。
⑤目に見えない世界と目に見えるものの世界の違い
さらに、ヨガはバンダやチャクラ、プラーナやクンダリーニなど科学的、医学的には説明が出来ない、エネルギーや気、波動があるとされています。専門的なヨガスタジオに行くと、瞑想やマントラ、ムドラといった方法もレッスンで使われています。
一方ピラティスは、体を動かすことが中心となっており、エネルギーワークのようなものはありません。医学的、科学的に親和性の高い骨や筋肉にフォーカスするため、分かりやすく医学的に説明がしやすいエクササイズです。
良い悪いはない。どちらも知ることで世界が広がる
いかがでしたか?ヨガとピラティス。考え方も方法も全く違います。今回、ピラティスのお話を聞かせて頂いたのは、オハナスマイルヨガスタジオで特別レッスンに入って頂いている「さいとうかおり先生」。ピラティスの指導歴10年以上という、かおり先生はRYT500を取得し、セルフプラクティスとしてはアシュタンガヨガを実践されている先生です。
そんな、かおり先生は、こんな風におっしゃっていました。
私はピラティスを10年ほど実践した後にヨガを始めました。ピラティスは主に筋肉、骨にフォーカスし動かすことにより、心と身体を変えていく方法です。今このエクササイズでは、この筋肉とこの骨を意識して動かしてください。といった感じで、決まりに沿って丁寧に動かします。
後に私は、ヨガの世界観を勉強し、実践することで、ヨガの軸である目に見えないエネルギーや気、またインドの深い哲学からくる教えにとても驚いたのと同時に、目には見えないけれど確かにあること、多くの学びがあることを実感し、とても感動しました。
ヨガは深い精神的な落ち着きや理解をもたらし、ピラティスは身体を活性化させ活き活きとさせる。どちらも素晴らしい効果があると感じます。
考え方も方法も違いますが、両方を知っておくことで、考え方の幅は広がり、世界や人生が広がっていきます。これがヨガもピラティスも両方やった方がいいと考える理由です。
ヨガとピラティス。歴史や考え方は違えど、人の幸せを願う心は同じ。また、両方知ったからこそ見える世界が必ずあります。
まずはピラティスってどんなものなのか知りたいと思った方は、ぜひオハナスマイルヨガスタジオへ。さいとうかおり先生のレッスンを受けてみて下さいね。
参考資料
- スワミ・サッチダーナンダ著 伊藤久子訳 『インテグラ―ル・ヨガ パタンジャリのヨガスートラ』(株式会社めるくまーる、1989年)
- 上村勝彦著 『バガヴァット・ギータ―』(岩波文庫、2015年)
- ジョゼフ・H・ピラティス著『コントロロジーピラティスメソッドの原点』(万平舎、2009年)