緑が茂る森の中で眉間に手を当てて目を閉じる女性

眉間の奥の神秘的な空間チダカーシャへの瞑想で深い自分に出会う

チダカーシャという言葉を聞いたことはありますか。

ヨガニードラなどで登場することが多いヨガ用語ですが、これは内側の空間を意味しています。

私たちが瞑想をしている時にも、自分の内側の空っぽな空間を感じることがあるかもしれません。その空間がチダカーシャです。

内側の空間・スペースに気が付くことで、心の中のゆとりが生まれて、物事を俯瞰する能力が高まります。

その結果、本当の自分に気が付けるかもしれません。

内側のスペース「チダカーシャ」とは

水辺に座って月に向かって瞑想する女性のシルエット

ヨガでは、内なる小さな空間に宇宙全体を保持していると考えます。

その空間のことをチダカーシャと呼びます。

チダカーシャは、チット(心)とアーカーシャ(空間)という言葉の組み合わせです。

ここで出てくるチットは、『ヨガ・スートラ』に出てくるチッタとは違うものです。

チッタは「ブッディ(覚)アハンカーラ(自我)マナス(至高)」の3つを表しますが、チットは意識体を意味します。

世界を包み込む3種類の空間

インドのヴェーダンタ哲学では、3つのタイプの「空間」があると説きます。

物質的な空間

1つ目は物質的な空間で、「地」「水」「火」「風」という4つの要素によってできている空間です。

この空間は、「距離」によって測ることができます。

この物質的な空間は、独自のカタチを保持しません。物質世界を包み込み、その空間の中に様々な物質を配置することができます。

この空っぽに見える空間ですが、実は内側に微細なエネルギーが充満していて、粒子や元素によって構成されています。

それをヨガの言葉ではプラーナ(生命エネルギー)と呼びます。

プラーナが空間に充満することによって、肉体をもった私たちも生かされています。

精神的な空間

2つ目の空間は、個人と宇宙との両方の精神、心を含むものです。

精神的な空間には形がありません。それは、あらゆる物質やエネルギーを保持しています。

私たちは、物事を正しく理解するためにスペースが必要です。精神的な空間によって物事を観察し、理解しようとします。

純粋な意識の空間

心の空間も超えたものが3つ目の空間チダカーシャです。

チダカーシャは、純粋な意識の空間です。

2番目の空間と違い、思考も存在しません。とても純粋で、「空(シューニャ)」とも表現されます。

この空間はアートマン(個我)そのものであり、形が変化することもありません。

この空間は自身で光り輝いています。また、AUM(オーム)の音の振動が生じています。

ウパニシャットの説く5つの空間

人にとっての空間は3種類だとされますが、『ウパニシャット』※1ではさらに5つの空間があると説きます。

  1. アーカーシャ( akasha):客観的に見える無限の空
  2. プラカーシャ( parakasha):内側に広がる暗闇
  3. マハカーシャ( mahakasha):内外で見られる燃えるような光
  4. タットワカーシャ( tattwakasha):空間に囚われた内なる自己の本質
  5. スーリヤカーシャ( suryakasha):10万の輝きを放つ自己の純粋な姿

1つ目のアーカーシャはいわゆる5元素(地・水・火・風・空)の中の空です。

私たちがイメージする空間そのものです。

しかし、目に見えている空間だけでなく、さらに内側には深い空間が広がっています。

瞑想を行い内側の静けさに意識を向けていくと、これらが徐々に体感できるようになります。

1番上に書いたアーカーシャから、徐々に最後のスーリヤカーシャに向けて意識の段階が変わっていきます。

  • ※1 Yoga Chudamani Upanishad :ハタヨガの技法について書かれた教典

自分自身を空間として捉える

光の粒子が降り注ぐ中で瞑想する女性

通常私たちは自分自身を空間の中に存在する物質として認識しています。

もしくは、精神的なアイデア、概念、信念、意見、感情、記憶をアイデンティティとして自分を認識します。

思考や感情も物質という対象に結び付けられています。

身体も思考も社会の中で制限されているものですが、内側にあるチダカーシャは何も影響を受けない解放された自分自身です。

内側の自分は誰かに制御、制限されず、支配されず、閉じ込められないものです。また、距離だけでなく時間による束縛もないので生死にも囚われません。

空間である私たちは、全てに浸透するもので、破壊も分割もできず、あらゆる制限がありません。

物質と自分を切り離して空間として捉える

ヨガでは、物質的な自分と本質的な自分の意識を切り離していきます。

物質から身体から意識が解放されると、無限の空間としての自分を経験することができます。

全てを含んで、全てに浸透している空間としての私は、「見るもの」として、あらゆる世界を傍観しています。

最初は、自分の内側にある小さなスペースに意識を向けていきます。

スペースへの意識が高まり、物質や思考との束縛が弱まるにつれて、空間が距離に囚われずに無限に広がるのを感じることができます。

チダカーシャ瞑想によって空間を感じる

目を閉じて瞑想する女性の顔

内側のスペースを感じるのにはチダカーシャ瞑想が効果的です。

チダカーシャは、眉間にあるアージニャー・チャクラの裏側にある空間です。

眉間とまぶたの奥にある静かな空間に意識を向けて静かに座るのがチダカーシャ瞑想です。

チダカーシャを行っていると、潜在意識に記憶された古い印象「サンスカーラ」によって、様々なビジョンを見ることがあります。

しかし、それらのイメージに囚われないように、ただ傍観して、消えていくのを待ちます。

最初は空間の中に現れるものに意識が囚われるかもしれませんが、少しずつ、空間そのものを感じられるようになると、様々な雑念に惑わされなくなります。

チダカーシャ瞑想の効果

チダカーシャ瞑想を行うことで、自分の内と外という感覚がより鮮明になります。

物質的な自分、精神的な自分、そしてその内側にある自分の本質に気が付きやすくなります。

内側の自分は、最初はまぶたの奥の小さなスペースに存在しますが、そのスペースが広がっていく過程で、思考や物質世界全てを含んでいる、限りのない空間になります。

それにより、下記のような効果を感じられるかもしれません。

  • 固定概念に囚われることがなくなり、自分の思考や行動に縛りがなくなります。
  • 恐怖心や不安感に囚われた一方的な概念が弱まります。
  • 自身の意思で選択をできるようになります。
  • どんな時でも安心できる心のスペースを保持できます。
  • 視野がクリアになることで、直感力が高まります。

チダカーシャを意識して瞑想してみよう

チダカーシャを意識した瞑想はまだ体験したことがない人も多いと思いますが、インドの古典的なハタヨがでは頻繁に使われる技法です。

ヨガニードラの中で、チダカーシャに様々なビジョンを思い浮かべる方法もポピュラーです。

特定の思考にとらわれず、空間として全体を捉えるチダカーシャ瞑想を日常的に行うと、世界の見え方も変わってくると思います。

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